日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S16. 地盤構造・地盤震動

[S16] AM-1

2022年10月25日(火) 09:30 〜 11:00 D会場 (5階(520研修室))

座長:松島 信一(京都大学防災研究所)、浅野 公之(京都大学防災研究所)

10:30 〜 10:45

[S16-05] 常時微動アレイ観測に基づく表層地盤速度モデルを用いた 2018 年大阪府北部の地震における工学的基盤上の地震動の推定

*後藤 彰太1、浅野 晃太1、後藤 浩之2、澤田 純男2 (1. 京都大学大学院工学研究科、2. 京都大学防災研究所)

2018 年大阪府北部の地震における高槻市と茨木市の建物被害は局所的に被害の大きい地域があるが,既存の地盤増幅率の分布と対応しないことが浅野らにより示されている1).一方で,茨木市の一部を対象とした調査によると,常時微動の卓越周期と被害分布に対応が見られることが指摘されている2).そこで本研究は震源域の地震観測点(図1)において常時微動アレイ観測を行い,表層地盤の影響と工学的基盤へ入射する地震動の影響とを分離することを試みる.
図1に示す TKT2 を除く 8 か所で常時微動アレイ観測を行った.TKT2 については既往研究によるデータ3)を用いた.なお,地震観測点でない IBR4 で観測を行った理由は後述する.アレイ半径を 2m,5m,10m(ただし,TKT0 は 2mと 5m,IBR4は 10mと 2m)とし,正三角形の頂点と外接円の中心に加速度計を置き,3 成分の観測を 30 分ずつ行った.得られたデータに空間自己相関法を用いて求めた位相速度分散曲線を満たすような地盤の速度構造を推定する.工学的基盤を S 波速度 350m/s と仮定し,その深部に 500m/s の層も仮定する.H/V スペクトルや近傍のボーリングデータを参照し得られた速度構造を初期値として遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を行った.図 2 に各個体の速度構造(黒線),最適モデル(赤線),工学的基盤までの深さ(青矢印)を示す.IBR0 と IBR1 で他と比べて深い工学的基盤が認められたため,この中間位置において追加で常時微動アレイ観測を行った (IBR4).この結果,IBR4 では IBR0 や IBR1 に比べて浅く,この差がどの程度有意であるかは引き続き検討が必要である.
表層地盤の速度構造を用いて,観測された地震動から工学的基盤上の地震動を推定する.解析にはDYNEQ4)を用い,動的変形特性は H-D モデルを用いた.推定された工学的基盤波(NS 成分)と NS,EW 成分の最大速度を図 3 に示す.白川は万博や中穂積,東中条,玉島よりも震源に近いが,工学的基盤上の速度波形の振幅はこれらの震源から遠い場所よりも小さい.K-NET 高槻や竹ノ内についても同じことが言える.この理由については破壊の前方指向性により南西方向に伝わる波の振幅が大きくなった可能性等が考えられるが,より詳細な検討が必要である.

参考文献
1) 浅野晃太,後藤浩之,奥村与志弘,澤田純男:2018 年大阪府北部の地震における高槻市・茨木市 の建物被害分布と高槻市の被害要因に関する地理学的考察, 土木学会論文集 A1(構造・地震工学 77 巻, 4 号, p. I_638-I_648, 2021
2) 森伸一郎,小林巧:2018 年大阪府北部の地震における茨木市内の震度と地盤卓 越振動数の関係, 土木学会論文集 A1(構造・地震工学)77 巻 4 号 p.I 490-I 502, 2020
3) Goto:Bayesian posterior mean velocity modeling as alternative to resolution guaranteed imaging,Proc.of the 6th IASPEI/IAEE International Symposium:Effect of Surface Geology on Seismic Motion,2021
4) 吉田望:DYNEQ A computer program for DYNamic response analysis of level ground by EQuivalent linear method, Version 4.00, 2020,関東学院大学