[S07P-03] Bayesian inferences of upper mantle discontinuities using azimuth-dependent receiver functions and multi-mode surface waves
リソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)やリソスフェア内不連続面(MLD)等,上部マントル内部の地震波速度不連続面は,大陸や海洋リソスフェアの成長や移動の過程を理解する上で貴重な手がかりとなる.近年,表面波の位相速度分散曲線(SWD)と実体波レシーバ関数(RF)を同時に用いたベイズ推定による速度構造解析が広く行われている (e.g., Calo et al., 2016, EPSL; Taira & Yoshizawa, 2020, GJI).RFを用いたインバージョン解析では,一般に観測点直下の水平成層構造を仮定する.しかし,大陸縁辺部や沈み込み帯等,観測点直下の周辺において,急激な速度構造の横方向変化が生じる地域では,遠地実体波の入射方位によって入射波から変換波への変換位置が変わるため,RFが顕著な方位依存性を示す.本研究では,このようなRFの方位依存性を活用し,SWDとの同時インバージョンを行い,観測点周辺域の上部マントルS波速度構造と不連続面の高精度推定を試みる.特に,高精度なマルチモード表面波の位相速度分布が得られている豪州大陸の観測点を中心に応用を行う.
インバージョンの手法には,可変次元階層ベイズ推定法を用いる.この手法では,層構造モデルのパラメータ数(層数)や各データの誤差などの超パラメータも未知変数として扱うため,モデルの層数や異種データ間の重みが適切に調整される.1次元速度構造の復元に用いるモデルパラメータは,境界面の深さと,SV波およびSH波速度の摂動とし,表面波トモグラフィーから得られる観測点下の速度モデルを基準とする.速度摂動の事前分布にはガウス分布を用い,それ以外の事前分布には一様分布を用いる.
この手法を豪州東部の定常観測点に適用した結果,RFの入射方向に応じて,観測点下の速度構造に,特に顕著な不連続面深度の変化が見られた.特に,豪州東部ではLABに相当するP-to-S変換点が,観測点の東部から西部に向け,深くなる様子が確認できた.これは既存の表面波トモグラフィーから推定されるリソスフェアの厚さの変化とも調和的である.また豪州南部の観測点では,深さ70kmと100km付近でSV波速度の低下が観測され,LABが段階的に変化する可能性も示唆される.本手法をより稠密な広帯域観測網に応用していくことで,不連続面の詳細な空間マッピングが可能となることが期待できる.
インバージョンの手法には,可変次元階層ベイズ推定法を用いる.この手法では,層構造モデルのパラメータ数(層数)や各データの誤差などの超パラメータも未知変数として扱うため,モデルの層数や異種データ間の重みが適切に調整される.1次元速度構造の復元に用いるモデルパラメータは,境界面の深さと,SV波およびSH波速度の摂動とし,表面波トモグラフィーから得られる観測点下の速度モデルを基準とする.速度摂動の事前分布にはガウス分布を用い,それ以外の事前分布には一様分布を用いる.
この手法を豪州東部の定常観測点に適用した結果,RFの入射方向に応じて,観測点下の速度構造に,特に顕著な不連続面深度の変化が見られた.特に,豪州東部ではLABに相当するP-to-S変換点が,観測点の東部から西部に向け,深くなる様子が確認できた.これは既存の表面波トモグラフィーから推定されるリソスフェアの厚さの変化とも調和的である.また豪州南部の観測点では,深さ70kmと100km付近でSV波速度の低下が観測され,LABが段階的に変化する可能性も示唆される.本手法をより稠密な広帯域観測網に応用していくことで,不連続面の詳細な空間マッピングが可能となることが期待できる.