日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08] PM-1

2023年11月1日(水) 13:30 〜 14:30 A会場 (F205+206)

座長:吉田 圭佑(東北大学)

14:15 〜 14:30

[S08-29] 2020年末ごろから継続する能登半島北東部の群発地震活動中に発生した 2023年 MJMA 6.5 珠洲市の地震

*吉田 圭佑1 (1. 東北大学大学院 理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)

2023年5月5日、石川県能登半島の北東端部において、MJMA 6.5の地震が発生した。この地域では、2020年末頃から地震活動度が急激に増加しており、2022年 6月 19日にも MJMA 5.4の地震が発生したことから、その動向に注目が集まっていた。特筆すべきことに、この群発地震活動時には、複数のクラスターの複雑な断層ネットワークを経由した震源域の浅部側への移動がみられていた (Yoshida et al., 2023, JGR)。

本講演では、本震の震源過程の推定と微小地震 (2003-2023/7)の震源再決定を行った結果について紹介する。本震の震源過程は防災科学技術研究所 F-net強震地震波形記録を用いて推定し、微小地震の震源は気象庁および NIED Hi-netの観測波形の相互相関により求めた到達時刻差データを用いて再決定した.
得られた結果は、MJMA 6.5本震の破壊が、それ以前から継続していた群発地震の面構造のうちの一つの北部・浅部端付近で開始し、更に浅部側で主すべりを起こしたことを示した。余震の多くは本震断層に対応すると考えられる南東傾斜の面構造に集中しており、本震以前に地震が発生していた深さよりも (z > 10 km)も更に浅部側で発生した (z 5-10 km)。

得られた結果は、2023年 5月5日の MJMA 6.5の地震が、地殻深部から断層帯を通って上昇してきた流体と、それに誘発された非地震性すべりや微小地震による応力変化により引き起こされた可能性を想起させる。流体起因で発生する地震は群発地震活動になりやすく、大地震には至りにくいという考えもあるものの、今回の観測は、流体起因の群発地震活動の中で M>6の被害地震を発生させ得ることを示している.本震震源は、2022年6月に MJMA 5.4地震を発生させた断層帯中の地震活動の浅部端付近に位置するように見える。その断層帯では、本震以前から震源の migrationが見られていたが (Yoshida et al., 2023)、直前には migrationに明瞭な異常は見られなかった (ただし、本震一日以内に震源 1 km以内の距離でM1-2.3の小地震が 6つ発生した).この周辺域では、1993年にもMJMA 6.6の地震が発生している。しかしながら、その震源域は陸上の観測点から離れているため、震源深さの推定精度が悪く、現在の地震活動との 3次元的な位置関係ははっきりしていない。本震後の地震活動の多くは、同じ面構造の浅部延長 (北部側)で発生している。本震破壊により、断層の更なる浅部に流体が供給されるようになった可能性も考えられる。