日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P11会場 (F203) (アネックスホール)

[S08P-15] 日本の地殻内地震における断層破壊伝播方向の特性

*柴田 律也1、麻生 尚文1,2 (1. 東京工業大学理学院地球惑星科学系、2. 東京理科大学先進工学部物理工学科)

地震は、断層に沿って剪断破壊が伝播し、解放したエネルギーを地震波として放出する物理現象である。断層破壊の時空間発展、すなわち震源過程には様々なバリエーションがあり、シンプルな近似モデルとしてはハスケルモデル (Haskell, 1964)や円形クラックモデル (Sato & Hirasawa, 1973)が挙げられる一方、現実の断層破壊ではより複雑な震源過程、あるいは破壊フロントが観測される場合がある。特に、断層アスペクト比が比較的小さいMw7以下の地震において、複雑な破壊フロントが観測されることがある (例えば1995年兵庫県南部地震; Ide & Takeo, 1997, 1998年飛騨山群発地震; Ide, 2001)。
剪断破壊は破壊力学におけるクラックの進展に相当し、滑り方向に平行に破壊が伝播するモードIIの破壊と、垂直に伝播するモードIIIの破壊に分類される (Scholtz, 2019)。クラックの成長は、エネルギー解放率が破壊表面エネルギーを上回る時破壊が進展するというグリフィスの破壊規準 (Griffith, 1921)に従うことから、断層破壊はエネルギー収支によってコントロールされていることが示唆される。また、そのエネルギー収支は破壊モードによって異なるため、破壊モードは破壊伝播を決定づける一つのパラメタであると言える。
破壊モードは断層破壊固有の特徴量として調べられることが多いが (例えば Chounet et al., 2018)、時空間の各点において定義することも可能である。特に、複雑な破壊フロントを持つような地震においては、複数の破壊モードが混在していると考えられるため、時空間の各点における破壊モードを推定する必要がある。この観点で、滑りインバージョン結果は、時空間的な滑り量、滑り方向の分布を内包しているため有用である。
本研究では、断層破壊の特徴を破壊モードの観点から調べるために、滑りインバージョン結果を用いて、時空間的な破壊モード分布を推定した。具体的には、日本の地殻内で発生した複数のマグニチュード6クラスの地震の震源過程を波形インバージョン(Shibata et al., 2022)により推定した。このインバージョン結果については、ブートストラップ法を用いた解析や、速度構造が異なる場合に結果が受ける影響を調べることにより、ロバスト性を確認している。続いて、得られた震源過程から断層破壊伝播方向を抽出する手法を開発し、破壊伝播方向と滑り方向を各小断層、1秒ごとに推定することで破壊モードの時空間分布を得た。結果として、断層破壊全体における破壊モードは地震ごとに異なる分布を取り、全ての地震に共通するような顕著な特徴は見られなかった。一方で、断層破壊初期過程に着目すると、断層破壊はDip方向よりもStrike方向への伝播成分が大きいようであることがわかった。