日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S12. 岩石実験・岩石力学・地殻応力

[S12] PM-2

2023年11月1日(水) 16:00 〜 16:30 C会場 (F202)

座長:矢部 康男(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

16:16 〜 16:31

[S12-02] 大阪平野下基盤における原位置地殻応力(7)-防災科研大阪観測井におけるコア変形法測定-

*小村 健太朗1 (1. 防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門)

日本列島の原位置の絶対応力に関するデータ,特に深さ500mを越える深部データは,陸域においても,数少ない状況にあるなか,掘削で採取された既存の岩石コアを用いた地殻応力測定法を適用し,信頼性の高い地殻応力データをはばひろく取得することを目指してきた.本発表では,防災科学技術研究所の,大阪平野にある深層地殻活動観測井における一連の原位置地殻応力測定の結果を報告する.本測定では,Funato and Ito (2017, IJRMMS)で設計され,防災科研に整備された装置でコア形状を計測し,コア変形法(DCDA法, Diametrical Core Deformation Analysis法)を適用して応力値を推定した.コア変形法では,地下深部から採取された岩石コアが,応力解放により弾性変形(膨張)することから,その変形量を計測し,岩石の弾性定数と掛け合わせて応力値を推定する.先行研究により,1000mを超えるような深部岩石コアでは,採取後の弾性変形が大きく,コア変形法の適用できることが示されている.
これまで,大阪平野における深層観測井の2つの例を報告してきたが,今回,新たに,大阪府の防災科研大阪観測井(北緯34°42'57.3",東経135°31'11.6",掘削深度1012.5m)を対象にした.深度615mまでは第四紀の大阪層群となる堆積岩(粘土,シルト,砂礫)がおおい,その下に中生代領家帯となる基盤岩(花崗閃緑岩から閃緑岩)が分布している.そこで,深度1110.15-.30mで採取された岩石コアを用いた.採取後,15年以上経過したものではあるが,外周にそって直径がサインカーブ状に変化し,岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることが示された.岩石コアの弾性定数は,直接岩石試験による測定データがないため,同じ掘削井で実施されたPS検層による地盤のP波速度(5.5km/s),S波速度(3.0km/s)と,孔内密度検層による密度(2.7g/cm3)を用いて計算される弾性定数を適用することを試みることにした.
本測定例では,岩石コアの採取深度が500mを越える深部であったことから,コア変形法により有意な応力値が得られ,今後の議論に活用できるものと期待される.しかし,一方で,コア採取から時間が経過しており,経年の影響も慎重に検討する必要があるだろう.