The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sept. 17th)

Regular session » S12. Rock experiment, rock mechanics, and crustal stress

[S12P] PM-P

Wed. Nov 1, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P13 (F203) (Hall Annex)

[S12P-04] Effects of effective pressure on fault reactivation due to fluid injection

*Garam Kim1, Manami Kitamura2, Michiyo Sawai1 (1. Chiba university, 2. GSJ, AIST)

地熱開発やガス・オイルの抽出などにおける地下への流体の注入は、しばしば誘発地震を伴うことが知られている(例えば、Ellsworth, 2013; Grigoli et al., 2018)。断層の挙動を考える上で重要なパラメータの一つに有効圧があるが、地下への注水により既存断層へ流体が流れ込むと、間隙水圧が上昇し有効圧が低下することで断層すべり運動が促進されると考えられる。つまり、注水による有効圧の変化と断層すべり運動の関係を明らかにすることは、注水誘発地震の理解につながることが期待される。そこで本研究では、多様な有効圧条件下で室内注水実験を実施し、有効圧の変化に伴い断層すべり運動がどのように変化するのかを検証している。  
実験試料には、軸方向から30°に傾斜した模擬断層面を入れた円柱形の稲田花崗岩試料を使用した。試料は300℃で熱処理したものと、熱処理をしていないインタクト試料を用いて熱クラックの有無による断層運動の違いも検討した。実験は、産業技術総合研究所の油圧式三軸圧縮装置を使用し、封圧は約33.6 MPa、下流側の間隙水圧は約2.0 MPa一定で、注水速度0.05 mL/minで上流側から間隙水圧を約2.0 MPaから30.0 MPaまで段階的に上昇させた。本研究では、応力一定制御で実施している。試料の側面には26個のPZT(1 MHz)端子を貼り付けて弾性波測定も実施している。パルス波を入力波とし、透過法を用いて実験中の試料内の弾性波速度を求めた。  
まだ予察的研究段階であるが、300℃で熱処理した試料では、有効圧が24.6 MPaから17.6 MPa、13.0 MPa、7.0 MPaへと低下するに伴い、注水による応力降下量は3.3 MPaから2.7 MPa、2.3 MPa、1.4 MPaへと減少した。インタクト試料でも同様に、有効圧が17.5 MPaから10.5 MPa、4.8 MPaと減少するに伴い、注水由来の応力降下量は2.9 MPaから2.2 MPa、0.9 MPaと減少傾向を示した一方、有効圧が24.8 MPaの時は応力降下が起こらなかった。これらの結果は、注水時の応力降下量は、低有効圧条件下で減少することを示唆している。また、注水開始から応力降下までの時間は、インタクト試料の方より300℃で熱処理した試料の方が短く、これは熱処理による熱亀裂の影響を反映していると考えられる。本実験は応力一定制御の実験のため、注水由来のすべりに引き続き、固着すべりの発生が認められ、両試料において、高有効圧条件下(24.6 MPa、17.6 MPa)では急激なすべり(1~2秒あたり約~0.024 mmの変位量)が支配的となるのに対し、低有効圧条件下(約10.6 MPa)ではゆっくりとしたすべり(6~19秒あたり約0.003~0.007 mmの変位量)となることが明らかとなった。つまり、有効圧が注水時の応力降下量だけでなく、それに引き続くすべり挙動に対しても影響を及ぼす可能性が示唆された。  
弾性波速度については、断層面を通過する経路の場合、PZT経路が上流注水側に近いほど低い値を示し、かつ有効圧が低くなるほど弾性波速度が低下することが認められた。また、300℃で熱処理した試料においては、注水側から遠い経路の弾性波速度の反応が近い経路での反応に比べてわずかに遅れるような結果を示しており、現在解析を進めているところである。講演では弾性波速度に関する詳しい結果も合わせて報告したい。