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[S17-03] 非線形インバージョン法による1946年昭和南海地震及び1944年昭和東南海地震の断層モデルの推定
本研究では,非線形長波式を解き,津波痕跡高データに対して断層モデルのすべり量をレーベンバーグ・マーカート法により逐次的に修正する非線形インバージョン法を新たに開発した.この手法を1946年昭和南海地震と1944年昭和東南海地震に適用して,津波痕跡高を説明する波源断層モデルの推定した.
提案手法の仕組みは次の通りである.大型計算機で非線形長波式による津波の伝番・遡上を含めた数値計算を繰り返し行い,イタレーションごとに断層パラメータのすべり量を元に計算した理論値と観測値の残差から,レーベンバーグ・マーカート法ですべり量の修正量を求めることで,断層パラメータのすべり量を逐次修正する.
安中ほか(2003)で提案された1946年昭和南海地震及び1944年昭和東南海地震の断層モデルに基づいて,8枚の小断層に分割した断層モデルを作成した.津波計算は非線形長波式を用い,18秒,6秒,2秒の格子間隔を持つ地形データで3層ネスティングを組み,計算時間を3時間,時間幅を0.1秒とした.海底斜面の水平変位による津波励起とKajiuraフィルターを考慮した.断層モデルのすべり量の初期値として,安中ほか(2003)の断層モデルのすべり量を使用した.津波痕跡高は東北大学津波痕跡データベースのうち,昭和南海地震に関しては信頼度A,昭和東南海地震に関しては信頼度A,B,Cのデータを使用した.昭和南海地震に関しては,是永ほか(2013)による津波痕跡高の選定方法を参考に津波痕跡高を選別した.昭和東南海地震に関しては,是永ほか(2013)による津波痕跡高の選定方法に加えて,新たに10m以上の高さとなった痕跡高を除いた.この基準で選別した結果,昭和南海地震の津波痕跡高のデータ数は122,昭和東南海地震の津波痕跡高のデータ数は99となった.
昭和南海地震の解析結果は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.08-1.37,82.6であったことに対して,本研究の 8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.99-1.26,43.8であり,残差二乗和が47%向上した.新たな断層モデルでは既存のモデルと比べて四国沖から紀伊水道沖にかけて大きなすべりが見られ,最大すべり量は7.16mとなった.新しい断層モデルの地震モーメントは6×10^21 (N・m)であり,Baba et al. (2005)のモデルの3.5×10^21 (N・m)を上回り,安中ほか(2003)のモデルの7×10^21 (N・m)より小さい値となった.
昭和東南海地震の解析結果は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.35-1.51,360.1であったことに対して,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.79-1.38,113.7であり,残差二乗和が68%向上した.新たな断層モデルでは既存のモデルと比べて,紀伊半島から志摩半島にかけて断層のすべりが見られることが共通している.紀伊半島東部から志摩半島にかけてのアスペリティの最大すべりは7.56mであった.新しい断層モデルの地震モーメントは3×10^21 (N・m)で,Baba et al. (2006)のモデルの2×10^21 (N・m)を上回り,安中ほか(2003)のモデルの4×10^21 (N・m)より小さい値となった.
さらに,是永ほか(2013)津波痕跡高の選定基準を適用しないで昭和南海地震に関しては信頼度がA,昭和東南海地震に関しては信頼度がA,B,Cのすべての津波痕跡高データを使って解析した.この場合.昭和南海地震は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.05-1.54,133.6であり,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.94-1.33,90.6であった.昭和南海地震の新しい断層モデルは津波痕跡高を良好に再現した.昭和東南海地震は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.31-1.69,1215.7であり,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.94-1.58,497.9であった.どの断層モデルにおいても,三重県熊野市新鹿町で観測された10mを超える5点の津波痕跡高(10.48m,11.47m,12.21m,15.21m,19.58m)を再現することができなかった.これは今井ほか(2022,地震学会)で指摘されたように,新鹿町の局所的に高い津波痕跡高は断層運動のみでは説明することは難しく,海底地すべりの影響を考慮する必要があると考えられる.
提案手法の仕組みは次の通りである.大型計算機で非線形長波式による津波の伝番・遡上を含めた数値計算を繰り返し行い,イタレーションごとに断層パラメータのすべり量を元に計算した理論値と観測値の残差から,レーベンバーグ・マーカート法ですべり量の修正量を求めることで,断層パラメータのすべり量を逐次修正する.
安中ほか(2003)で提案された1946年昭和南海地震及び1944年昭和東南海地震の断層モデルに基づいて,8枚の小断層に分割した断層モデルを作成した.津波計算は非線形長波式を用い,18秒,6秒,2秒の格子間隔を持つ地形データで3層ネスティングを組み,計算時間を3時間,時間幅を0.1秒とした.海底斜面の水平変位による津波励起とKajiuraフィルターを考慮した.断層モデルのすべり量の初期値として,安中ほか(2003)の断層モデルのすべり量を使用した.津波痕跡高は東北大学津波痕跡データベースのうち,昭和南海地震に関しては信頼度A,昭和東南海地震に関しては信頼度A,B,Cのデータを使用した.昭和南海地震に関しては,是永ほか(2013)による津波痕跡高の選定方法を参考に津波痕跡高を選別した.昭和東南海地震に関しては,是永ほか(2013)による津波痕跡高の選定方法に加えて,新たに10m以上の高さとなった痕跡高を除いた.この基準で選別した結果,昭和南海地震の津波痕跡高のデータ数は122,昭和東南海地震の津波痕跡高のデータ数は99となった.
昭和南海地震の解析結果は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.08-1.37,82.6であったことに対して,本研究の 8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.99-1.26,43.8であり,残差二乗和が47%向上した.新たな断層モデルでは既存のモデルと比べて四国沖から紀伊水道沖にかけて大きなすべりが見られ,最大すべり量は7.16mとなった.新しい断層モデルの地震モーメントは6×10^21 (N・m)であり,Baba et al. (2005)のモデルの3.5×10^21 (N・m)を上回り,安中ほか(2003)のモデルの7×10^21 (N・m)より小さい値となった.
昭和東南海地震の解析結果は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.35-1.51,360.1であったことに対して,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.79-1.38,113.7であり,残差二乗和が68%向上した.新たな断層モデルでは既存のモデルと比べて,紀伊半島から志摩半島にかけて断層のすべりが見られることが共通している.紀伊半島東部から志摩半島にかけてのアスペリティの最大すべりは7.56mであった.新しい断層モデルの地震モーメントは3×10^21 (N・m)で,Baba et al. (2006)のモデルの2×10^21 (N・m)を上回り,安中ほか(2003)のモデルの4×10^21 (N・m)より小さい値となった.
さらに,是永ほか(2013)津波痕跡高の選定基準を適用しないで昭和南海地震に関しては信頼度がA,昭和東南海地震に関しては信頼度がA,B,Cのすべての津波痕跡高データを使って解析した.この場合.昭和南海地震は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.05-1.54,133.6であり,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.94-1.33,90.6であった.昭和南海地震の新しい断層モデルは津波痕跡高を良好に再現した.昭和東南海地震は,安中ほか(2003)モデルの計算値と痕跡高に対するK-κ,RSS(㎡)は1.31-1.69,1215.7であり,本研究の8枚の小断層モデルのK-κ,RSS(㎡)は0.94-1.58,497.9であった.どの断層モデルにおいても,三重県熊野市新鹿町で観測された10mを超える5点の津波痕跡高(10.48m,11.47m,12.21m,15.21m,19.58m)を再現することができなかった.これは今井ほか(2022,地震学会)で指摘されたように,新鹿町の局所的に高い津波痕跡高は断層運動のみでは説明することは難しく,海底地すべりの影響を考慮する必要があると考えられる.