[S16P-03] 中央構造線三野断層における重力および微動探査に基づく地盤構造推定
中央構造線断層系の三野断層とその周辺において,断層近傍における地下構造を把握するために重力探査および微動探査を実施した.三野断層は長さ13.5kmで,横ずれ断層と推定されており,断層に沿って破砕帯が広く,多量の断層粘土の分布が確認されている.重力探査(高柳・他,2024)および微動探査(野口・他,2024)により実施されたデータを用いて,三野断層の地盤構造を推定した.まず,重力探査で得られた重力異常の特徴としては,三野断層の北側で断層に沿って高異常領域が帯状に分布しており,断層運動に伴う地盤構造の変化を捉えていると考えられる.そこで表層2.00mg/cm^3,基盤層2.33g/cm^3の均質2層モデルにより2次元及び3次元の密度構造解析を行った.その結果,断層北側で褶曲,もしくは段差差があることが示唆された.微動探査で得られたH/Vや位相速度分散曲線,そこから推定されたS波速度構造からは,断層破砕帯が露頭している箇所を境にH/Vの形状や位相速度の分散傾向の変化がみられ,それに伴い地盤構造も変化することがわかった.さらに,これらの結果をもとに,断層周辺に破砕帯,段差構造や地質の違いがあることを想定した断層の地盤構造モデルを作成し,多層モデル解析を行った.地盤構造モデルは重力異常に変化がある部分に,①破砕帯がある,②基盤に落ち込みがあり,基盤層よりも軽い地質が存在する,③基盤の落ち込みと破砕帯が同時に存在する,④基盤が落ち込み,段差構造になっているモデルを検討した.破砕帯の密度は1.60~1.80g/cm^3,基盤層より軽い地質の密度は2.00g/cm^3としている.今後は重力および微動観測を追加し,より詳細な地盤構造モデルを評価する予定である.