日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S16. 地盤構造・地盤震動

[S16P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S16P-05] ローコスト地震計を用いた常時微動探査

*林田 拓己1、井上 公1 (1. 建築研究所 国際地震工学センター)

常時微動探査は、微動測定地点直下の地盤構造および地盤の卓越周波数を推定するための手法として長年にわたり利活用されている。近年では、測定機器の小型化・簡素化が進んでおり、効率的な測定が可能になっている。微動探査は掘削や人工震源等を不要とするため、他の探査法と比べて経済的に有利な手法とされている一方、開発途上国のように機材購入に多額のコストがかけられない状況下では、微動探査は未だにハードルが高い。また、故障時の修理時に多額の費用を要することも、導入が進んでいない一因となっている。このような障壁を取り除くことが、途上国におけるハザードマップの精度向上において急務となる。
近年、地震観測分野において、低コストでの地震観測技術が急速に普及している(Anthony et al., 2018; Paul et al., 2023; Löberich and Long, 2024)。常時微動測定の用途でのシステム開発も進められており(Kafadar, 2021; Arosio et al., 2023)、センサーにジオフォンを用いることで、常時微動や遠地地震の測定が可能(鈴木・他, 2019)であることが確認されている。最近では微動探査のISO規格(津野・他, 2023)も制定されているため、規格を満たす機材を選定し、微動探査(単点、アレイ)に活用することで、必要最小限の地盤構造・地盤震動に関する情報の推定が可能になることが期待される。本研究ではまず、世界的に普及している地震計RaspberryShakeを用いて、野外での微動計測を行った。RSでは微小地震・遠地地震観測の用途で4.5Hzのジオフォンが使用されているが、アナログ回路により周期特性を2秒程度まで伸ばした上で24bitのデジタイザに信号を入力している。建築研究所内で実施したハドルテストでは、0.4–20Hzの範囲で高いコヒーレンスを有することを確認した。
本研究では、浅部地震波速度構造が既知である茨城県内の強震観測点(建築研究所、防災科学技術研究所K-NET/KiK-net観測点)においてRaspberryShakeによる半径1m〜15mの円形アレイ(中心点および円周上3点)を展開し、常時微動計測を行った。比較のため、長周期地震計(CMG-40T)、サーボ型加速度計(McSEIS-MT NEO)、微動探査用ジオフォン(McSEIS-AT)による計測も同時に行ない、有用性を確認した。このような低コスト機材による測定の普及により、開発途上国におけるハザードマップの分解能向上やマイクロゾーニングの地方都市への展開なども期待される。本発表では、これらの測定における探査結果及び課題について報告するとともに、著者らが構想する微動探査に特化した低コスト微動測定システムについても紹介する予定である。

謝辞:本研究の一部はJSPS科研費JP23K03514の助成を受けたものです。