[S22P-01] 稠密地震観測に基づく2024年能登半島地震の余震分布
1. 背景
2024年1月1日にMj7.6能登半島地震が発生した.その余震域は能登半島北部の全域に加え海域を含む東北東―西南西方向に150 km以上に及んでいる.大規模地震の余震分布を正確にとらえることはその断層の幾何形状を理解する上で重要である.一方で定常地震観測のみでは,観測点分布が疎な領域で発生する微小地震の検知は難しい.本研究では臨時地震観測を実施し,微小地震を含む能登半島地震の余震分布の詳細な把握を目的とする.
2. データ
2024年4月22日から7月2日にかけて臨時地震観測を実施した.観測に用いた速度型地震センサー(KVS-300)は固有周期2 Hz,データロガー (EDR-X7000) はサンプリング周波数250 Hzである.観測点配置は,観測開始までの気象庁一元化震源を参考に,余震域の直上に約5 km間隔でノイズレベル軽減を期待し可能な限り大きな道路を避け30台設置した.地震計回収後に地震観測記録を確認した結果,観測点により一定程度背景のノイズレベルにばらつきはあるが,全観測点において連続観測できていた.臨時地震観測記録に加え,能登半島に設置されている定常地震観測記録も解析に使用した.
3. 手法
はじめに,機械学習 (Phase Net; Zhu & Beroza, 2019)を用いP・S波の検測を行い,得られた検測値に対しイベント同定手法(REAL; Zhang et al., 2019)を適用した.その後,震源決定手法 (Hypomh; Hirata & Matsu’ura, 1987)により初期震源を決め,相対震源決定手法 (HypoDD; Waldhauser & Ellsworth, 2000)により震源を再決定した.HypoDDでは機械学習により取得した検測値に加え,波形相関を用いたデータも含め合計4886335個の走時差データを利用した.震源決定の際,速度構造はJMA2001 (Ueno et al., 2002)を用いた.
4. 結果・考察
最終的に,46874個の震源が再決定された.この検出数は観測期間中における気象庁一元化震源の約4倍である.震源の深さは約3-12 kmで,震央は10-20 kmの幅で珠洲市から海士岬に至る能登半島北部全域に分布していた.震央分布は一律に直線状ではなく,西方では輪島市袖ヶ浜あたりで屈曲し半島の海岸線に沿っていた.東方の珠洲岬延長部の海域にも震源は位置するが,観測網の範囲外で震源決定精度は低下する.再決定された震源は,主に40-50度で南東に傾斜する1枚の面形状を呈していたが,珠洲市ではほぼ平行する二枚の断層面が確認された.また,走向が屈曲し北北東―南南西に震源が分布する37.3度以南では深さ10km以浅に震源が集中しているが,単純な一枚断層ではなく,複雑な震源分布を示した.観測期間中の6月3日に珠洲市南西部でM6の地震が発生し,その余震分布はおおよそ一枚の断層面を呈していた.6月3日以前この領域では地震活動は低かったことから,6月3日以降,観測期間中において同一断層面上で余震が続いていると考えられる.
謝辞
気象庁一元化震源,防災科学技術研究所・気象庁・東京大学の各観測点の地震波形記録を使用させて頂きました.記して感謝いたします.
2024年1月1日にMj7.6能登半島地震が発生した.その余震域は能登半島北部の全域に加え海域を含む東北東―西南西方向に150 km以上に及んでいる.大規模地震の余震分布を正確にとらえることはその断層の幾何形状を理解する上で重要である.一方で定常地震観測のみでは,観測点分布が疎な領域で発生する微小地震の検知は難しい.本研究では臨時地震観測を実施し,微小地震を含む能登半島地震の余震分布の詳細な把握を目的とする.
2. データ
2024年4月22日から7月2日にかけて臨時地震観測を実施した.観測に用いた速度型地震センサー(KVS-300)は固有周期2 Hz,データロガー (EDR-X7000) はサンプリング周波数250 Hzである.観測点配置は,観測開始までの気象庁一元化震源を参考に,余震域の直上に約5 km間隔でノイズレベル軽減を期待し可能な限り大きな道路を避け30台設置した.地震計回収後に地震観測記録を確認した結果,観測点により一定程度背景のノイズレベルにばらつきはあるが,全観測点において連続観測できていた.臨時地震観測記録に加え,能登半島に設置されている定常地震観測記録も解析に使用した.
3. 手法
はじめに,機械学習 (Phase Net; Zhu & Beroza, 2019)を用いP・S波の検測を行い,得られた検測値に対しイベント同定手法(REAL; Zhang et al., 2019)を適用した.その後,震源決定手法 (Hypomh; Hirata & Matsu’ura, 1987)により初期震源を決め,相対震源決定手法 (HypoDD; Waldhauser & Ellsworth, 2000)により震源を再決定した.HypoDDでは機械学習により取得した検測値に加え,波形相関を用いたデータも含め合計4886335個の走時差データを利用した.震源決定の際,速度構造はJMA2001 (Ueno et al., 2002)を用いた.
4. 結果・考察
最終的に,46874個の震源が再決定された.この検出数は観測期間中における気象庁一元化震源の約4倍である.震源の深さは約3-12 kmで,震央は10-20 kmの幅で珠洲市から海士岬に至る能登半島北部全域に分布していた.震央分布は一律に直線状ではなく,西方では輪島市袖ヶ浜あたりで屈曲し半島の海岸線に沿っていた.東方の珠洲岬延長部の海域にも震源は位置するが,観測網の範囲外で震源決定精度は低下する.再決定された震源は,主に40-50度で南東に傾斜する1枚の面形状を呈していたが,珠洲市ではほぼ平行する二枚の断層面が確認された.また,走向が屈曲し北北東―南南西に震源が分布する37.3度以南では深さ10km以浅に震源が集中しているが,単純な一枚断層ではなく,複雑な震源分布を示した.観測期間中の6月3日に珠洲市南西部でM6の地震が発生し,その余震分布はおおよそ一枚の断層面を呈していた.6月3日以前この領域では地震活動は低かったことから,6月3日以降,観測期間中において同一断層面上で余震が続いていると考えられる.
謝辞
気象庁一元化震源,防災科学技術研究所・気象庁・東京大学の各観測点の地震波形記録を使用させて頂きました.記して感謝いたします.