日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM22_30PO1] 地形

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学・地圏科学研究センター)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

18:15 〜 19:30

[HGM22-P04] 雲仙水無川導流堤の堤外地における微地形変化の定量的評価

*小倉 拓郎1青木 賢人2 (1.金沢大学人文学類、2.金沢大学地域創造学類)

キーワード:地形プロセス, ガリー侵食, 土石流, GIS, 雲仙普賢岳

研究の全体像・結果
 本研究では、1990年に平成噴火が起こった雲仙普賢岳を源流にもつ水無川について、新たに地形改変を施して建設された導流堤の堤外地における侵食力の転換や微地形変化を定量的に評価した。本対象地域は人工的に整地されて侵食基準面がリセットされているため従来の地形発達史では議論できない定量的な評価で議論することができる。
 研究の結果、堤外地の地形は、堤外地内の遊砂地が整備された1998年以降約7年間は地形を変化させるほどの大規模な土石流は発生しておらず、細かな流路網を形成し側刻が進んだが、2005年には流水の減少に伴い地形が安定し、堤外地内の土砂が安定した。2005~2008年の短期間に集中して発生した土石流によって表面の植生を流出し、側刻から下刻に転じ、以降流路が固定化され、2011年以降急速な植生の回復が進行し、堤外地内の地形がより安定性を増したことが分かった。

対象地概要
 水無川では平成噴火後20数年経過した現在でも時間雨量20~30mm程度の小雨量でも土石流の発生が見られる。火山災害の被害を最小限に抑えるために、水無川では島原湾に向かって導流堤を建設するなど、現在も砂防事業が継続されている。

調査手法と結果
 ・GISによる裸地面積率の算出
 1998年を侵食基準面とした堤外地の裸地面積率は経年することに減少し、2003年の91.62[%]から2005年の50.32[%]へと急激に面積が小さくなっている。2008年には58.66[%]と増加し、以降微増・微減を繰り返している。

 ・GISによる流路延長比の算出
 2008年以降の同一の流路について流路延長比を算出した。計算の結果、2008年が1.11、2011年及び2013年が1.10となり、流路の固定化が定量的に評価できた。

 ・侵食断面測量と現地観察
 測量データからガリー幅は8.27[m]であり、雲仙復興事務所(2011)で報告されている上流域でのガリー侵食と幅の規模がほぼ等しい。原面からの年平均侵食速度(v)を算出するとv=4.66[cm/year]となった。また、この地域での最大侵食深から最大下刻速度(Mv)を算出すると、Mv=20.6[cm/year]となった。これより下方侵食よりも側方侵食のほうが規模が大きく、下刻に転じたのは近年であることが分かる。


 文献
国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所.2011.「雲仙2011 砂防事業の概要」.