日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI27] データ駆動地球惑星科学

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、座長:堀 高峰伊藤 伸一(東京大学地震研究所)

16:30 〜 16:45

[MGI27-11] 次世代型レシーバ関数の開発:Reversible-jump MCMC法を用いたグリーン関数の直接的な推定

*悪原 岳1Michael Bostock2Alexandre Plourde2 (1.東京大学地震研究所、2.Department of Earth, Ocean and Atmospheric Sciences, The University of British Columbia)

キーワード:地震波形解析、レシーバ関数、ブラインドデコンボリューション、リバーシブルジャンプマルコフ連鎖モンテカルロ法、パラレルテンパリング法

地球の内部構造を推定するために,地震学ではレシーバ関数解析と呼ばれる地震波解析手法がよく用いられる.レシーバ関数とは遠地地震水平動記録を上下動記録でデコンボリューションしたものを指し,上下動記録が入射波形をよく近似している条件のもとでは,グリーン関数(地下構造のインパルス応答)の水平動成分とよく一致する.

しかしながら,従来のレシーバ関数には (1)グリーン関数の上下動成分を推定できない,(2)上下動による入射波の近似が成り立たないような,強い多重反射波の影響下では,グリーン関数が正しく求まらない,(3)ノイズが大きいデータでは,デコンボリューションは計算が不安定になる,といった欠点がある.問題点(1)が解決できれば,従来のレシーバ関数では成し得なかったP波速度構造の拘束が可能となり,問題点(2)が解決できれば,例えば海底や堆積盆地のような,多重反射波の影響が大きい地域に設置された地震計のデータから,正しく地下構造の情報を引き出せるようになる.また,問題点(3)を解決することで,スタックによるS/N比の改善が見込めないような,短期間の観測データでも精度よく地下構造を推定できることが見込まれる.

本研究では,Reversible-jump MCMC法を用いたグリーン関数の新たな推定方法を開発した.具体的には,グリーン関数がデルタ関数列であらわされると仮定し,そのパルス数,振幅,タイミングを最適化する.また,アルゴリズムの効率を上げるために,並列計算手法(Parallel Tempering) を採用した.新手法は先に挙げた3つの問題点を克服できるほか,(I)単独の観測点のデータだけで実行可能,(II)誤差の推定が可能,といった長所を持ち,データの質・量があまり期待できない臨時観測の解析に役立つことが期待される.本発表では,新しい手法の有用性を数値実験によって示すほか,実データへの適用例も紹介する.