日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] ミクロスケール気象の稠密観測・数値モデリングの新展開

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 301A (3F)

コンビーナ:伊藤 純至(東京大学大気海洋研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)、古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、東 邦昭(京都大学生存圏研究所・メトロウェザー株式会社)、座長:伊藤 純至(東京大学)、荒木 健太郎(気象研究所)

14:00 〜 14:15

[AAS06-02] ドローン艦隊によるメソスケール定点気象観測アーキテクチャ

*矢口 勇一1板羽 昌之4中野 修三3山岸 和彦2五百部 達也5 (1.会津大学、2.株式会社eロボティクス福島、3.株式会社東日本計算センター、4.株式会社日本環境調査研究所、5.五百部商事有限会社)

キーワード:ドローン艦隊、同時定点観測、メソスケール気象観測

高高度における気象観測をメソスケールで行うためには、ある程度の密度を確保した広い空間に気象センサーを配し、定点観測させる必要がある。Dopplar SODAR等を用いた方法では、計測できる高度に制限があり(Yoshiki ITO, 2009)、ラジオゾンデを用いる方法では2000m~10000m程度までの風向風力を測定可能だが特定のポイントに直接置くことが出来ず、時系列的には点の情報しか得ることができない。また、航空機を用いた観測では、温度や湿度を得ることができるが、航空機の移動速度や航空機自身が引き起こす気流の乱れより風向風力を正しく得ることは難しい。衛星のセンサーからの計測もあるが、空間解像度は1.5km程度であり、綿密な計測は行えない(Ryosuke NIWA, 2009)。

本研究では、これらの問題を直接的な計測で解決するために、無人航空機の一種であるマルチコプターを複数台同時に用いて計測する技術を提案する。具体的には、1台当たり30分程度ホバリング可能な耐風速20m/sとなる6葉のマルチコプターを製造し、ここに超音波を利用したポータブルな気象観測装置を取り付ける。この気象観測装置は、超音波を用いて2軸の風力を計算することで、風向及び風力を計算する。加えて、気象観測装置に気温、湿度及び気圧計を搭載し、ラジオゾンデと同等かそれより頻度の高い計測をドローンに搭載しているペイロードコンピューターに保存する。この気象観測装置は、事前に計測したドローンの気流の乱れに影響しない高さまでマストで上げられて計測する。また、ペイロードコンピューターに蓄積されたデータは1秒に1回程度の頻度で整理され、LoRa変調方式による920MHz帯小型省電力無線局より地上に伝送され、リアルタイムに表示することを可能とした。このデータを、インターネットを通して複数拠点同時に集約することで、メソスケールで定点での気象測定を行うことができる。なお、マルチコプターは重量25kgまでは航空法の軽飛行機の範疇から外れるため、現時点では航空法で規定されている高度までは容易に飛ばすことができる。しかしながら、本研究で目指す高度は1000m ~ 2000mの雲の出来る高さでの隊列飛行を行うことから、事前に国土交通省や航空管制との折衝が必要となる。

実際の実証として、単機のドローンを500m, 1000m, 1500m, 2000mの高度にそれぞれ上昇させて、リアルタイムの計測を行うことができるかを検証した。2018年12月20,21,22日に、朝6:30~7:00の間に行った実験では、地上における風速は3~5m/s程度であったが、1500mの高度では13m/sに上昇することを確認した。また、それらの情報はリアルタイムに地上に伝送され、直接目視することが可能であることを確認した。また、同等のシステムを搭載した別のドローンを用いて、高度100mまでの空間中に27台のドローンを30m間隔で3 x 3 x 3のメッシュ型に飛翔させ、定点に留まる検証を行い、成功している。これらのものを組み合わせて用いることで、広い地域での定点の観測が可能となった。