日本地球惑星科学連合2021年大会

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[O-01] 地球・惑星科学トップセミナー

2021年5月30日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、座長:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)

11:30 〜 12:15

[O01-02] 「はやぶさ2」地球帰還!–リュウグウの石に聞いてみたいこと

★招待講演

*橘 省吾1,2 (1.東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

キーワード:はやぶさ2、小惑星、太陽系、サンプルリターン

太陽系はどのように誕生し,地球をはじめとする惑星がつくられたのか.どのようにして,地球は海に覆われ,生命を育むようになったのか.そんな疑問に答える鍵を求める旅が,探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウサンプルリターン探査です.小さな天体だからこそ,長期間にわたる大規模な地質活動がなく,太陽系の始まりの記憶を残していると期待されています.探査ターゲットとなった小惑星リュウグウはC型小惑星に分類され,炭素質コンドライトとよばれる隕石との関連が議論されてきました.炭素質コンドライトは含水鉱物(構造中に水を含む)や有機物を含有し,太古の地球に海や生命の材料をもたらした可能性もあると考えられています.「はやぶさ2」は太陽系のはじまりや,地球への海と生命の材料の供給の謎に迫るため,小惑星リュウグウをめざしました.

2014年12月に打ち上げられた「はやぶさ2」は,2018年6月にリュウグウに到着し,17ヶ月にわたる近傍探査をおこないました.コマを二つ合わせたような形,岩だらけで反射率の低い表面,含水鉱物の存在など様々な発見をし,2019年4月には人工クレーター形成実験にも成功しました.2019年2月,7月の二度の着地では,サンプル採取装置の駆動にも成功しました.2019年11月にリュウグウを離れた「はやぶさ2」は,2020年12月6日,地球に帰還し,再突入カプセルを豪州ウーメラに無事着地させました.

再突入カプセルから取り出されたサンプルコンテナは豪州で内部のガスが採取された後,12月8日に宇宙科学研究所キュレーション施設に無事輸送されました.その後,コンテナ開封準備作業を経て,12月14日にコンテナはキュレーション施設内の専用クリーンチャンバーの中で開封されました.コンテナに収納されていたサンプルキャッチャ(試料格納室)は12月15日に開けられ,第一回目の着地で採取されたと思われる黒色の粒子が多数確認されました.その後,第二回目の着地で採取されたと考えられる粒子も確認され,その中には1 cm程度の大きさの粒子も含まれていました.これらの粒子の詳細分析は本年夏に開始されます.

講演では「はやぶさ2」地球帰還からサンプル分析まで,太陽系科学の視点でお話ししたいと思います.