日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

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[O-03] 変化する気候下での強風・豪雨災害にどう取り組むか

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.02 (Zoom会場02)

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、和田 章(東京工業大学)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、座長:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

09:15 〜 09:30

[O03-02] 近年の風水害の特徴と防災気象情報の現状

★招待講演

*髙橋 賢一1 (1.気象庁)

キーワード:防災気象情報、災害に結びつくような気象現象

日本では、毎年、6月下旬から7月中旬にかけての梅雨前線の活動や台風の接近・上陸等により、各地で大雨や暴風等によって風水害が発生しています。近年は、1時間に50ミリ以上の降雨を記録する回数が増加傾向にあるなど災害をもたらす気象現象に変化が見られるとともに、都市域に広がる地下空間における浸水で被害が生じる事例等、社会の変化に伴う災害の様相の変化で、新たな課題も多く突きつけられています。
気象庁は、大雨や暴風などによって発生する災害の防止・軽減のため、気象等の特別警報・警報・注意報及び気象情報等(以下「防災気象情報」)を発表しています。災害に結びつくような激しい現象が予想されるときには、まず数日前から気象情報を発表し、その後の危険度の高まりに応じて防災気象情報を段階的に発表することで、市町村、都道府県、国の機関等の防災関係機関の活動や住民の安全確保行動の判断を支援しています。これらの内容や発表タイミングについては、平常時から防災関係機関との間で意見交換を行い、効果的な防災活動の支援となるよう努めています。
「平成30年7月豪雨」において、気象庁では、防災気象情報の段階的な発表、市町村への支援、さらには記者会見を通じて早い段階から厳重な警戒の呼びかけを行いました。しかしこれらの情報発表や警戒の呼びかけや、市町村からの避難勧告等による避難の呼びかけが、必ずしも住民の避難行動につながらず、平成最大の人的被害を伴う豪雨災害となりました。これを踏まえ、平成30年度に気象庁では学識者に加え、報道関係者、自治体関係者、関係省庁による「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を開催し、主に以下の4点の課題への対応策について、「防災気象情報の伝え方の改善策と推進すべき取組」(報告書)としてとりまとめました。
課題1 気象庁(気象台)や河川・砂防部局等が伝えたい危機感等が、住民等に十分に感じてもらえていない
課題2 防災気象情報を活用しようとしても、使いにくい
課題3 気象庁の発表情報の他にも防災情報が数多くあり、それぞれの関連が分かりにくい
課題4 特別警報の情報の意味が住民等に十分理解されていない
気象庁はこの報告を踏まえて、「危機感を効果的に伝えていく取組」「防災気象情報を使いやすくする取組」「防災情報を分かりやすくシンプルに伝えていく取組」「大雨特別警報への理解促進等の取組」を令和元年度において進めましたが、令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風等により再び甚大な被害が発生しました。このことを踏まえて、平成30年度にとりまとめた改善策の取組についてのフォローアップや、令和元年の災害を踏まえたさらなる改善策について中長期的な視点も踏まえ検討することを目的に、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を令和元年度も引き続き開催し検討を進め、改めて以下の推進すべき取組について取りまとめられました。
○大雨特別警報解除後の洪水への注意喚起
○過去事例の引用
○特別警報の改善
○「危険度分布」の改善 など
気象庁はこれら2カ年の検討会報告を踏まえて、令和2年度において取組を更に進めましたが、令和2年度においても令和2年7月豪雨などによって再び甚大な被害が発生しました。この中で線状降水帯に関する情報提供や記者会見などで用いた「特別警報級の台風」「特別警報を発表する可能性は小さくなった」という表現への受け止め、特別警報の種類によって住民の取るべき行動が異なる事への問題などの課題が新たに示されているところです。このことを踏まえて気象庁では線状降水帯に関する情報提供を推進することや、起こりうる災害に関する解説の強化、社会的に大きな影響があった現象に関する検証の推進、防災気象情報全体の体系整理の検討などの取組を進めて行く予定です。
気象庁では、これらの取組を関係機関と連携して実施し、防災気象情報の伝え方の改善に引き続き努めていきます。