日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

S15P

2019年9月16日(月) 17:15 〜 18:45 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:15 〜 18:45

[S15P-11] 1985年メキシコ地震の強震動生成域の推定

*小林 広明1、元木 健太郎1、加藤 研一1、渡部 哲巳2、石川 直哉2、川合 佳穂2 (1. 小堀鐸二研究所、2. 中部電力)

1985年9月19日に発生したメキシコ地震(Mw 8.0, GCMT)は,プレート境界地震であるが,震源が陸域に近いことから,震源域直上で加速度記録が得られている.本地震については,友澤・他(2018)がスペクトルインバージョン解析により断層面全体に対する短周期レベルや応力降下を推定している.しかし,観測記録には波群が2つ確認できることや,既往の波形インバージョン解析からも,少なくとも2つの大すべり域が推定されていることから,本地震の震源特性を探るためには,面的な広がりを考慮したより詳細な検討が必要だと考えられる.そこで,本研究では,経験的グリーン関数法に基づき,震源近傍の強震観測記録からインバージョン解析により複数のSMGAを推定した.また,推定されたSMGAの位置をMendoza and Hartzell (1989)(以下,M&H, 1989とする.)の震源インバージョン解析によるすべり分布に基づく特性化震源モデルと比較し,短周期と長周期の励起位置の関係を検討した.さらに,推定結果のSMGAから求めた短周期レベルを既往研究と比較・検討した.
 観測記録はCOSMOS(Consortium of Organizations for Strong-Motion Observation Systems)から取得した.解析に使用した強震波形は震源域直上の4点(CALE, VILE, UNIO. AZIH)の水平成分とした.要素地震は2つ選定し,それぞれを用いて解析を行い,観測をよりよく説明できるほうを最終的に用いる要素地震とした.前述のとおり,観測記録に2つの波群がみられることから,SMGAの数は2とした.SMGAの推定は,ハイブリットヒューリスティック法(山中,2007)を用いた逆解析手法(元木・他, 2019)を用いた.SMGAの探索範囲はM&H (1989)の断層面と同一面上とし,解析周波数帯は0.2-10.0Hzとし,誤差関数の計算には加速度エンベロープとフーリエ振幅を用いた.
 2つのSMGAは,震源付近と震源の南東側にそれぞれ概ね安定して求まり,観測波形とその擬似速度応答スペクトルは良好に再現できた.SMGA位置とM&H (1989)のすべり分布から求めたアスペリティ位置を比較したところ,短周期と長周期の励起位置は少しずれているものの,完全に別ではないことが示唆された.SMGAの面積は既往研究のM0-SSMGAの関係(Miyake et al., 2003)と比べてやや大きく,短周期レベルは既往研究のM0-A関係(壇・他,2001)と比べてやや小さく求まった.震源付近,震源の南東側のSMGAの応力降下量の値はそれぞれ3.0MPa, 1.5MPaと求まった.これらの値は東北地方太平洋沖地震のSMGA(例えば,佐藤,2012)と比べると一桁小さい.一方で,SMGA解析ではないものの波形解析に基づく既往のメキシコ地震の研究(例えば、Mendez and Anderson, 1991)で示された応力降下量の値とはおおむね整合する結果となった。