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[3H09] 原子力安全をめぐる参加型・多層的ガバナンスとその課題
キーワード:ガバナンス、自由度、組織間関係
高信頼性組織論や組織事故論では,技術システムやそれを扱う組織の複雑さが増すと,組織内部の各部局の自己組織化が進み,現場においてとりうる行動の自由度が増大する,という見方を概ねとっている。組織内部においてローカルな自由度が確保されることで日々の変動に対応することが可能となる一方,ローカルな対応どうしの生み出す予期せぬ相互作用が事故への道筋を作り出すと説明されてきた。近年は,この視点を組織内のみならず,組織間関係にも当てはめようとする動きが見られる。しかし,我が国における原子力技術のガバナンスの来歴を踏まえると,関与するアクターが増えることで,とりうる自由度はむしろ狭まる可能性が仮説的に浮かび上がる。本発表では,視点の多様性をもたらすことが期待される複数アクターの参加や多層的なガバナンスが,却って視点の固定化をもたらすという逆説的な事態を,仮に「ガバナンスの罠」と呼び,批判的な検討を加える。