The Annual Meeting of the Japan Society of Cookery Science, 2022

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[3] 信越化学工業株式会社 合成技術研究所

信越化学工業株式会社 合成技術研究所


信越化学工業株式会社は、食品添加物としてセルロース誘導体であるメチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を提供しています。
MCとHPMCの粘性のある水溶液は加熱すると流動性がなく、粘性や付着性がない白濁したプリンのようなゲル状になり、冷却すると再び元に戻る、温度官能性熱可逆ゲルと呼ばれるユニークな特性を持っています。

食品産業において、加工工程では、増粘性機能を利用し、クリームコロッケ等の具材やポテトスナックに粘性や粘結性を与えて成形性を改良し、更に加熱ゲル機能を利用し、オーブン、フライ調理工程中では、パンク、形崩れを防ぎ、水分の蒸発、離水を抑制します。喫食時の温度帯においては、加熱ゲルが緩み硬さを感じさせない食感としての機能を発現します。
一方、MC及びHPMCは界面活性機能をも有しており、同一分子内に疎水基/親水基の両官能基を持つ構造であるため、低い表面張力値を示します。よって、この界面活性機能及び高分子効果を利用し、ホイップクリーム等の食品中における気泡及び乳化の安定化に寄与しています。
各種食品への応用例は、下記動画リンクからご覧ください。

MC及びHPMCはアレルギー対応食品(~グルテン、卵白代替材料として)にも利用が進んでおり、小麦粉パンでは、捏ねることでゴム状の粘弾性を発現するグルテンが気泡を抱え込み骨格形成するため膨化しています。一方で、グルテンに敏感に反応し体調への影響を受ける人々がおり、グルテン摂取を控える食事療法も支持されています。その為、グルテンの様な成分を含まない米粉パンにおいては、この骨格形性にMC及びHPMCによる生地の増粘及び発酵焼成時のゲル化を伴う粘弾性機能を利用して膨化させることができます。使用する品番や添加量を選択することで膨化度合いを調整し、重めや軽めの食感のコントロールが可能です。卵にも敏感に反応し体調への影響を受ける人々がおり、卵の持つ気泡、乳化、熱凝固と同じ機能を有しているMC及びHPMCは優れた代替材料と成り得えます。適用例として、メレンゲ菓子、スポンジケーキ、お好み焼き等が挙げられます。
麺類においては、十割蕎麦、米粉うどん、米粉パスタ等の非小麦粉原料による麺類へは、増粘機能によるつなぎ材、加熱時のゲル化機能によるふやけ防止剤として利用可能です。保水機能が高く乾燥によるひび割れを抑制することから冷凍耐性を付与し、湯がき時の麺切れが低減されます。加えて、つなぎ材として自然な食感が得られます。

代替肉中でのメチルセルロース(MC)の機能と役割についても紹介いたします。
以下に、植物肉中でのメチルセルロースの機能と役割を簡潔に整理して示します。
(A)結着性:植物性たん白素材同士を結着、成形し易くし、焼成時にも熱ゲル化機能により形が崩れを防ぐ。
(B)歯ごたえ:加熱するとゲル化し、肉様の弾力と固さを付与する。
(C)その他:焼成時歩留まり向上、油分離抑制、耐熱保形性付与など、同時に他の効果も発現する。
MCを添加した場合とMC無添加におけるヴィーガンハンバーグでの使用例を下記動画リンクよりご覧ください。
MCを添加した場合では、成形性が良好であるため、しっかりとした形状が保持され、弾力のある食感を与えるのに対して、MCが無添加の場合には、使用素材がしっかりと結着されていない故に、形状が崩れており、柔らかい食感となります。つまり、MCの添加の有無により、製品には上述の差が現れており、従来のハンバーグ、パテと比較すると、MCは卵白の代替の役割も担っていることになります。

以上、様々な応用例について、ご興味を抱かれましたら、なぜこのような特性を発現するのかについては、以下に説明いたします。
メチルセルロース(以下MCと略す)は、下図に示すようにセルロースの水酸基(OH)の一部をメチル基に置換しメトキシ基にエーテル置換したものであり、ヒドロキシプロピルセルロース(以下HPMCと略す)は、メトキシ基置換だけでなく、ヒドロキシプロポキシ基もエーテル置換したものです。信越化学工業(株)は、このMCとHPMCの日本国内唯一の生産メーカーであり、メトローズRの商品名で販売されております。
ゲル化のメカニズムに関しては、MC/HPMCは構造的にメトキシ置換度が最大3ですが、市販されているMC/HPMCの場合、置換度が3となっている部分(トリメチルシーケンス)は分子内に不均一に存在している為、水溶液が加熱されるとこのトリメチルシーケンス部位が疎水和することで水分子を取り込んだ構造のゲルを形成し、冷却すると疎水和が解除され溶液に戻るという考えに基づいた理論的な説明がなされています。
各品種のメトローズについて、粘度グレードが示す2wt%水溶液の20℃での代表粘度を下表に記載しています。溶解温度以下で溶解されたメトローズは熱ゲル化温度までは温度を上げれば粘度が低くなり、通常の増粘剤同様に濃度を上げれば高い粘度となり、高い粘結力を示し、非ニュートン流動性となり、各種用途で増粘剤として機能します。
MC及びHPMCは、国内ではユニークな機能と共に新しい添加剤として認知され、様々なアプリケーションへの利用が広がりつつあります。近年の国内食品市場のニーズに対応する材料として、今後も課題解決及び新しい応用分野への研究開発にご利用いただければ幸いです。

◆連絡先
信越化学工業株式会社
合成技術研究所 
研究部 開発室

担当:新延信吾
E-mail:niinobe@shinetsu.jp
Webpage:https://www.metolose.jp/food/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCtINthGAxyR8NW1FhHcqzWw/videos