The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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児童生徒支援において学校内外のチーム力をどう生かすか

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 406 (4階)

[JF07] 児童生徒支援において学校内外のチーム力をどう生かすか

角田豊1, 中山俊昭2, 石川勝規3, 塩見守4, 照本寿和5, 塚田良子6 (1.京都連合教職大学院, 2.三田学校臨床心理研究会, 3.宝塚市立安倉小学校, 4.兵庫県立清水が丘学園, 5.姫路市立大津小学校, 6.元三田市立学園小学校)

Keywords:チーム支援, 児童生徒支援, 生徒指導

企画趣旨

角田 豊・中山俊昭
問題行動への対処だけでなく,子どもを「育む」という広義の生徒指導(教育相談・特別支援の観点を含む)には,集団指導と個別指導・支援の両面が必要である。教師とは,元来集団と個人の両方に関わる仕事であるが,担任一人が全てを担うのには限界があり,今日の学校現場では「チーム」による児童生徒支援が求められている。これは,学校が有機的に子どもたちに関わろうとする発想であり,集団と個人への関わりを,今一度「学校組織」として再認識する意味合いを持つと思われる。
「チーム」とは,特定の生徒指導上の課題や学力上の困難について,関わりのある教職員や関係者が集まり,理解と対応を協議しつつ指導・支援を行う機動的な小集団といえる。チームが機能するには,メンバー間に目的意識が共有され,相互援助的なまとまりをもった「関係性」が形成される必要がある。現実的に考えれば,地域性や児童生徒数といった学校の置かれた状況があり,さらには学校文化や教師の意識も,チーム形成に寄与する要因だろう。昨今では「同僚性」や学校内外の「連携」が謳われているが,実際にはチームづくりにおいて不可欠なポイントや,その前提となる要因があるのかもしれない。
この自主シンポジウムでは,4人の話題提供者から,①個としての教師とチーム対応について,教師の燃え尽き症候群(バーンアウト)の観点から問題提起を行い,次に②教師や学校とのコンサルテーション経験を踏まえ,学校外部の視点から,学校に期待したい連携やチームのあり方について提案を行う。その後,学校現場の現状について,中学校の生徒指導経験もある小学校管理職の立場から,③大規模校におけるチーム対応と,④小規模校におけるチーム対応について紹介する。以上の話題提供を踏まえた上で,児童生徒支援のためのチームモデルの構築に向けて考察を深めていきたい。

共感性と同僚性がバーンアウトに及ぼす影響
~チーム支援を考えるために~ 石川勝規
教師のメンタルヘルスを守るためにも,バーンアウトに影響を及ぼす要因を検討することは意義深いと考える。本研究では,小学校教師に焦点を当て,個人特性である共感性の水準と職場の人間関係が教師のバーンアウトに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。A県内15校の公立小学校の教師合計226名に調査票を配布し,193名から回答を得た(男性84名,女性109名,回収率85.4%)。その結果,共感性が高いと情緒的に消耗をし,低いと達成感の後退は高まることが示された。また,同僚性が高いと達成感の後退は低いことが分かった。さらに,共感性・同僚性ともに高い人は,達成感は感じつつも,消耗感が高まり,バーンアウト傾向を示すことが明らかとなった。同僚性が低いと個人的達成感を得にくいということは,他者への働きかけが少ないと周りから認められにくい状況が作られるということであろう。バーンアウトに陥らないためにも,職場の同僚とのかかわりを積極的に求める方がメンタルヘルスを維持する上で重要であるといえよう。
人との結びつきを求める同僚性の高さは,ソーシャルサポートを得る可能性があり,困難時には相談できる職場の同僚がいることがバーンアウトへの抑止力になりうることが示唆された。「共感性」と「同僚性」はバーンアウトにおいて重要な影響因であることが示された。これらのバランスが対人援助職としての職務特性として求められ,これらのバランスを欠いたときバーンアウトへのリスクを高めているものと考えられる。

学校へのアウトリーチによる連携から見えてきたもの
塩見 守
情緒障害児短期治療施設「清水が丘学園」は,子どものメンタルケアの専門施設として,入所治療や外来相談等で,多くの不登校児童や被虐待児の支援を行ってきた。こうした清水が丘学園のノウハウを提供することを目的に,平成24年から2年間に渡り,年間を通して心理治療士が中学校の不登校委員会に出席してコンサルテーションをおこなうなどの取り組みをおこなった。こうした取り組みの中から,学校現場の現状として,①まちまちな子どもの問題への対応の体制作り,②見立て(事例検討)の不十分さ,③保健室対応や別室対応の体制づくりの問題,④担当者が不明確な保護者支援,⑤関係機関との連携が行われていないケース,等の課題が見られた。
子どもへの対応として,発達障害や虐待,保護者の課題などの背景を理解した関わりが必要である。そのためには,家族背景やこれまでの育ちの情報を教員間で共有することがより重要になる。そのためには,①管理職の主導で対策委員会を立ち上げること,②専門家を対策委員会のメンバーに加え,個々のケースに応じた早期の対応方法を検討すること,③保健室対応,別室対応の充実と,担当教諭等へのスーパービジョンを行うこと,④継続した保護者支援の担当者を決め,支援チームを作ること,⑤連携が必要な関係機関を知り,具体的な連携方法を見つけること等の必要性が感じられた。
学校として,保護者から情報を収集する上での限界や,業務繁多な状況の中でどのようにコンサルテーションの時間を工面するかなど現実的な課題もあるが,こうした連携は教員以外の違った視点から子どもを理解し,これまでの関わりを整理する機会となると考える。

大規模校におけるチーム対応
照本寿和
学校現場は,目の前にいる子ども達に関わり,将来を担う子ども達を育む場所である。「校長のリーダーシップのもと」とよく言われるように,チームとしての対応を行う場合も,まずは管理職自身が子どもの立場に立って問題を提起する姿勢が大切である。その理由としては,特に「初期対応」において,教職員に関わりや指導に対する「温度差」があることも多く,共通の問題意識や方向性をもつことが少なからず容易ではない場合があるからである。様々な意見があることは多面的な理解に重要なことであるが,できるだけ早期の対応や指導が求められる場合には,管理職がその必要性や緊急性に重きを置いた動きを進め,一定の方向にチームを動かす決断・始動が課題になるといえるだろう。
チームには,学校内の関係する教職員という場合もあれば,学校外の関係機関を含む場合の両方が考えられるが,いずれにおいてもどのような立場のメンバーがいるのかをお互いが知り,さらには相互に学び合うような姿勢をつくれることが同僚性を高め,チームの一体感を向上させると考えられる。
大規模校としての特性を考えると,小学校では,学級担任だけで対処していた子どもの問題も,チーム対応をすることにより,情報が共有され,専科,新学習システム,兵庫型教科担任制など複数の職員が関わるシステムへと展開してきている。また,各校に配置されている,スクールカウンセラー(SC)との連携により,より専門的な面から子どもや保護者のサポートが可能になる事例もある。SCが形成する関係性と,教師が形成する関係性を維持し,さらにはSCと教師の関係性を保ちつつ,子ども達の幸せ・自立を目標に取り組むようなシステムの構築が必要不可欠である。

チームとして一丸で取り組む小規模校の実践
塚田良子
児童数約160名,教職員16名の小規模校の校長を経験した。各学年1学級と特別支援学級の7学級編成である。教職員の仕事量は総じて多く,校務分掌の担当,学年便り,各教科のプリント,教材の準備等を一人でやらなくてはいけない。デメリットを挙げれば,負担の多さから気持ちは重くなりやすい。しかし,メリットとしては,教職員が一丸となって取り組めることが大きい。教職員の出張が重なる時は,管理職をはじめ,担任を持たない教員がフル出場となる。自習時間を作らないようにし,給食・清掃も見守る。全ての教職員が,子どもたちの名前を覚えており,放課後も職員室で情報交換を行っていた。そこでは,子ども間のトラブルや頑張り等,気が付いたことを自由に話し合える場が形成されていた。
問題行動が発生した場合は,直ちに全教職員を招集して現状を報告した。生指担当が中心になって情報を収集する際には,少人数体制であるが複数で話を聴くようにした。情報が整理できたら,管理職・生指担当・関係教諭が方針について話し合い,取組みを進めた。関係教諭は,事後の報告書を作成することを常としたが,こうした記録は,今後の取り組みの前例となり,子どもの成長を確認でき重要である。
小規模校故に,自ずとチーム的な体制となりやすいが,そこにコミットしにくい教職員がいる場合が,一番の課題である。管理職として大切にした点は,小さなことも見逃さないように,教職員の話を聴くことであり,何事も一人で抱え込むことのないように注意を払いつづけ,教職員の状態をできるだけ把握することが重要である。