日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA006] モラルジレンマ授業の勧め(5)

モラルジレンマ授業が自尊感情の発達に及ぼす効果:中学生の「道徳授業」を通して

平岡清志1, 竹田レイ子2, 藤田裕一3 (1.姫路獨協大学, 2.神戸市教育委員会, 3.神戸大学)

キーワード:モラルジレンマ, 道徳授業

児童・生徒や学生の「自発性」や「自立性」,「自尊感情」の育成は,今日の教育において必須の課題であり,不可欠である。しかし,その育成には,どんな授業が効果的なのか?
本研究では,自発性や自立性,自尊感情を育てていく一つの方法として中学校の道徳授業の中で,「モラルジレンマ授業」を実施し検証した。 モラルジレンマ授業とは,コールバーグの提案であるが,それは認知的不均衡を喚起し,自ら発言するように動機づけられることを意図している。
幼児期・児童期から「自発性」や「自立性」,「自尊感情」の育成が不可欠であるが,この種の判断基準の育成には,幼児期からの環境,特に学校環境での指導のあり方が重要な要素となる。幼児期,児童期,中学生,高校生,それぞれが適切な題材の元でモラルジレンマ授業を行えば,これらの育成が可能だと思われる。そこで本研究では,平岡など(2010,2011,2013)の研究例を踏まえて,今回は中学生を対象にして「モラルジレンマ授業が
自尊感情をあげることができるのか否か」を,中学生 4 クラスを対象にして検証した。
[方 法]
1.調査対象:姫路市内にある中学2年生 4 クラス
2.調査時期:平成 25 年7月
3.モラルジレンマ教材要旨:「地震」
主人公の成田さんは,救急隊員であった。家庭では 3 歳の子どもと出産間近の妻とともに,公私共に充実した日々をすごしていた。ある日の午後,町へ出かけていたとき,大きな地震が起こった。消防署に電話するもつながらず,自宅の妻に電話をしてもつながらない。電車は不通,車は渋滞,市街の電光掲示板のニュースで,北野市・南野市は大地震のためにビルは倒壊し,壊滅状態にあるという。職務に徹して災害現場に行くべきか,安否の確認が取れない自分の家族が気になる自宅に向かうべきか?
4.質問紙:(1)「道徳」授業に対する授業前・後の評価,①従来の道徳授業と比べて楽しかったか,②次の授業が待ち遠しかったか,③この種の道徳授業は「役に立つ」と思ったか
【自尊感情】:(2)小学生版学校生活充実検査(荒木,2003)に含まれる自尊感情尺度(29 項目,4 因子構造-自己肯定感,自己価値観,幸福感,責任感から成る)を使用。回答は,①全く思わない,~④強く思う,までの 4 段階の評定尺度法で行った。
5.手続き:まず物語を理解し,その後,教師は中立の立場に立って司会進行していく。生徒は,「成田さんは消防署に向かうべき」か,「家族の元へ向かうべき」かを自主判断し,教師の司会の元で,生徒相互で議論をし合う。教師は,最後まで中立を保ち,生徒が発言しやすい環境を保ち,最後まで自分の意見を出さないようにする(オープン・エンド)。
※尚指導教師は,担任ではなく,実験者二人が行った。
[結果および考察]
モラルジレンマ授業に対する生徒の評価は、図1-1に示す。授業前と授業後の評価、①「授業は楽しかった」②「次回が待ち遠しい」③「役に立つ」は図1-2に示す。