[PA010] 教師の指導文化尺度作成の試み
信頼性・妥当性の検討
キーワード:尺度作成, 教師, 指導文化
問題と目的
大阪府の教員の年齢構成は20代,50代が多く35歳から45歳までが極端に少ないダンベル型をしており(大阪府教育委員会,2010),今後熟練者が減少し新規採用が増加することが予想される。さらに「公よりも私を重視する」プライバタイゼーションの浸透(油布,1999)と,年齢構成の偏りによって,現在学校現場での協働性が十分機能していないことが示唆されている(堀,2012;吉田,2012)。こうしたことから,学校や熟練者が今まで蓄積してきた指導に関する実践や経験,つまり教師の指導文化を今後次世代の教員へ継承してゆくための方略を検討する必要があると考える。しかし教師の指導文化を測定し,その状況を検討するための尺度が殆どないのが現状である。そこで本研究では,教師文化によって継承されると考えられる暗黙知をふくみ,かつ比較的広く共有されていると考えられる指導文化を測定する尺度を作成し,因子論的妥当性・内的整合性・構成概念妥当性を検討することを目的とする。
方 法
<予備調査>
【被調査者】大阪府内で教職員経験10年以上の教職員22名(平均年齢=46.9歳,平均教職経験年数=22.9年)に,尺度原項目作成のため,調査を実施し回答を得た。
【手続き】教師の指導文化の操作的定義に基づき作成した9項目について自由記述式で調査を行った。得られた回答内容を,中学校教員歴17年の指導主事と,小中学校のスクールカウンセラー歴13年の臨床心理士とで,KJ法により分類し計50項目の尺度原項目を選定した。
<本調査>
【被調査者】大阪府内3市の教職員264名(小学校10校・131名,中学校9校・133名,平均年齢=41.5歳,平均教職経験年数=16.8年)に調査を実施し回答を得た。
【手続き】「あなたが所属する学校における子どもへの指導,教師間・教師保護者間の関係性について、最もあてはまると思う数字に○をつけてください」と教示し,計50項目の教師の指導文化尺度原項目に関して,「あてはまらない:1」~「あてはまる:4」の4件法で回答を求めた。また,平行調査として教師における協働性尺度(牧ら,2010),職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度(下光ら,1998)を併せて実施した。
結 果
主因子法プロマックス回転による因子分析を行い,因子負荷が.40以下であった計22項目を除外した結果,解釈可能な3因子が抽出された(Table 1)。因子1は「教師として必要な基本的態度・姿勢」,因子2は「横の関わりを重視した学級経営」,因子3は「子どもの主体性を引き出す授業実践と指導」と命名した。なお合計得点のα係数は.96,因子1が.90,因子2が.90,因子3が.91であり,十分な内的整合性が確認された。また尺度の構成概念妥当性を検討するため,作成した教師の指導文化尺度総合得点と,教師における協働性尺度,職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度総合得点との間で,ピアソンの積率相関係数を求めた。その結果,教師における協働性尺度と有意な中程度の正の相関(r=.47,p<.01)が,職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度とは有意な弱い負の相関(r=-.32,p<.01)が認められ,構成概念妥当性が検証された。
Table1 教師の指導文化尺度因子分析結果
考 察
本研究において,「教師として必要な基本的態度・姿勢」が第1因子として抽出された。このことは,管理職を含めた他の教師との協働的な関係を基盤とし,子ども一人一人に対して細やかなまなざしを向けることが教師の指導文化の根幹である可能性を示唆していると考えられる。
大阪府の教員の年齢構成は20代,50代が多く35歳から45歳までが極端に少ないダンベル型をしており(大阪府教育委員会,2010),今後熟練者が減少し新規採用が増加することが予想される。さらに「公よりも私を重視する」プライバタイゼーションの浸透(油布,1999)と,年齢構成の偏りによって,現在学校現場での協働性が十分機能していないことが示唆されている(堀,2012;吉田,2012)。こうしたことから,学校や熟練者が今まで蓄積してきた指導に関する実践や経験,つまり教師の指導文化を今後次世代の教員へ継承してゆくための方略を検討する必要があると考える。しかし教師の指導文化を測定し,その状況を検討するための尺度が殆どないのが現状である。そこで本研究では,教師文化によって継承されると考えられる暗黙知をふくみ,かつ比較的広く共有されていると考えられる指導文化を測定する尺度を作成し,因子論的妥当性・内的整合性・構成概念妥当性を検討することを目的とする。
方 法
<予備調査>
【被調査者】大阪府内で教職員経験10年以上の教職員22名(平均年齢=46.9歳,平均教職経験年数=22.9年)に,尺度原項目作成のため,調査を実施し回答を得た。
【手続き】教師の指導文化の操作的定義に基づき作成した9項目について自由記述式で調査を行った。得られた回答内容を,中学校教員歴17年の指導主事と,小中学校のスクールカウンセラー歴13年の臨床心理士とで,KJ法により分類し計50項目の尺度原項目を選定した。
<本調査>
【被調査者】大阪府内3市の教職員264名(小学校10校・131名,中学校9校・133名,平均年齢=41.5歳,平均教職経験年数=16.8年)に調査を実施し回答を得た。
【手続き】「あなたが所属する学校における子どもへの指導,教師間・教師保護者間の関係性について、最もあてはまると思う数字に○をつけてください」と教示し,計50項目の教師の指導文化尺度原項目に関して,「あてはまらない:1」~「あてはまる:4」の4件法で回答を求めた。また,平行調査として教師における協働性尺度(牧ら,2010),職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度(下光ら,1998)を併せて実施した。
結 果
主因子法プロマックス回転による因子分析を行い,因子負荷が.40以下であった計22項目を除外した結果,解釈可能な3因子が抽出された(Table 1)。因子1は「教師として必要な基本的態度・姿勢」,因子2は「横の関わりを重視した学級経営」,因子3は「子どもの主体性を引き出す授業実践と指導」と命名した。なお合計得点のα係数は.96,因子1が.90,因子2が.90,因子3が.91であり,十分な内的整合性が確認された。また尺度の構成概念妥当性を検討するため,作成した教師の指導文化尺度総合得点と,教師における協働性尺度,職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度総合得点との間で,ピアソンの積率相関係数を求めた。その結果,教師における協働性尺度と有意な中程度の正の相関(r=.47,p<.01)が,職業ストレス簡易調査票におけるストレス反応尺度とは有意な弱い負の相関(r=-.32,p<.01)が認められ,構成概念妥当性が検証された。
Table1 教師の指導文化尺度因子分析結果
考 察
本研究において,「教師として必要な基本的態度・姿勢」が第1因子として抽出された。このことは,管理職を含めた他の教師との協働的な関係を基盤とし,子ども一人一人に対して細やかなまなざしを向けることが教師の指導文化の根幹である可能性を示唆していると考えられる。