[PA015] 心理的支援活動を通した大学院生の気づき(1)
生徒理解,支援方法の変化に着目して
キーワード:心理的支援活動, 高等学校, 大学院生
問題と目的
近年,学校教育における児童生徒のニーズの多様化を背景に,スクールカウンセラーといった専門家だけでなく,心理学や教育学専攻の大学生や大学院生が学生ボランティアなど様ざまな役割で学校に入り,学習支援や心理的支援活動などの実践が行われている(杉本, 2013)。
筆者らも,様々な困難を抱える生徒が多く通う高校において学生ピアサポーター(以下,学生PS)として数年間,心理的支援活動に携わった。本活動は2名体制で行われ,1日約6時間の活動を3ペアで週3回行った。また,活動時に教育相談担当教師からスーパービジョン(以下,SV)を受け,さらに,月1回程度,約3時間のカンファレンスが開かれ指導教員らからSVを受けた。学校心理学(石隈, 1999)の枠組では学生PSは,大学院生が担い,SVを受けながら活動していることから「準援助専門家」となる。また,学生相互のサポートが学生の成長を支えると指摘されるが(黒沢・日高・張替・田島, 2008),2名体制のため相互のサポートが可能となっていたと考えられる。
筆者らは本活動経験を通し,生徒理解,支援方法についての変化を感じてきた。しかし,こうした活動を通した学生の変化や心理的成長について研究が不足しており(黒沢ら, 2008),活動に参加した学生の変化の契機,また,変化・成長の内実は明らかにされていない。また,こうした活動が学校と学生にとって互恵的な活動である必要があると指摘されること(杉本, 2013)からも,この点を明らかにすることの重要性が窺える。
そこで本研究は,心理的支援活動を通した学生PSの変化をとらえるために,生徒理解,支援方法に着目して検討することを目的とした。
方法
対象:A県内の高校で学生PSとして活動した教育学専攻の大学院生女性3名(B,C,D)。活動期間:半年~2年間。面接時期:2014年2月から3月。内容:黒沢ら(2008),杉本(2013)を参考に「活動参加の目的と活動を行った感想」,「活動を通じて学んだこと」,「活動を通じた変化・成長」とした。手続き:個別に約1時間の半構造化面接を実施した。面接内容は対象者の許可を得て録音した。分析:内容の中から「生徒理解及び支援方法の変化」に焦点をあて,学生の変化を抽出する。
結果・考察
B「生徒の行動には,行動するだけの背景があることに気づいた。」「試行錯誤を重ねる中で生徒や学校全体の様子をつかむことができた。」「受容的関わりだけでなく,生徒が気づきを得られるよう,時には厳しく接することが必要だと気づいた。」「2名体制だったので各生徒の特徴に応じて連携して対応できた。」「支援方法への不安を抱くこともあったが,SVを受け,自信を持って活動できた。」
C「行動の背景にある気持ちを理解して関わるようになった。」「生徒の特徴に合わせた対応ができるようになった。」「感情を表情や行動など非言語的方法で表現する生徒が多くいたため,非言語的側面に注目するようになった。」「養育環境の不安定さを背景にもつ生徒が多く,話を聴いてくれる存在になることが重要だと気づいた。」「カンファレンスで情報交換をすることにより生徒を多角的に見ることができた。」
D「自分の経験を踏まえた助言をしようと必死になっていたが,指導教員からSVを受け,共感を示す関わりが重要だと知り,そのような関わりができるようになったのは成長だと思う。」「基本的な態度は変えないが,生徒の特徴に合わせて話題を変えながら対応するようになった。」「勉強への動機づけの低い生徒に,将来の希望,得意なこと等を共に考えることにより登校する目的意識を持たせる関わりができるようになった。」
以上の語りから,活動を通して生徒の実態を知り行動の背景へも注目して生徒を理解するようになるという変化や,支援が困難となる経験を通した支援方法の変化が共通に語られている。また,生徒の特徴を把握した上で支援方法を試行錯誤しながら選択しており,その過程を通して支援方法のレパートリーの増加が語られた。さらに,生徒理解が進むにつれ,生徒の特徴に合わせ,他学生PSとの連携によってより適切な支援方法をとることができるよう工夫がなされていた。
さらに,指導教員及び教育相談担当の教師からのSVにより学生の変化・成長が支えられていたことが共通に語られており,それによる生徒支援の充実が窺え,専門家による支援体制が学生の成長及び生徒支援を保障することが示唆された。
近年,学校教育における児童生徒のニーズの多様化を背景に,スクールカウンセラーといった専門家だけでなく,心理学や教育学専攻の大学生や大学院生が学生ボランティアなど様ざまな役割で学校に入り,学習支援や心理的支援活動などの実践が行われている(杉本, 2013)。
筆者らも,様々な困難を抱える生徒が多く通う高校において学生ピアサポーター(以下,学生PS)として数年間,心理的支援活動に携わった。本活動は2名体制で行われ,1日約6時間の活動を3ペアで週3回行った。また,活動時に教育相談担当教師からスーパービジョン(以下,SV)を受け,さらに,月1回程度,約3時間のカンファレンスが開かれ指導教員らからSVを受けた。学校心理学(石隈, 1999)の枠組では学生PSは,大学院生が担い,SVを受けながら活動していることから「準援助専門家」となる。また,学生相互のサポートが学生の成長を支えると指摘されるが(黒沢・日高・張替・田島, 2008),2名体制のため相互のサポートが可能となっていたと考えられる。
筆者らは本活動経験を通し,生徒理解,支援方法についての変化を感じてきた。しかし,こうした活動を通した学生の変化や心理的成長について研究が不足しており(黒沢ら, 2008),活動に参加した学生の変化の契機,また,変化・成長の内実は明らかにされていない。また,こうした活動が学校と学生にとって互恵的な活動である必要があると指摘されること(杉本, 2013)からも,この点を明らかにすることの重要性が窺える。
そこで本研究は,心理的支援活動を通した学生PSの変化をとらえるために,生徒理解,支援方法に着目して検討することを目的とした。
方法
対象:A県内の高校で学生PSとして活動した教育学専攻の大学院生女性3名(B,C,D)。活動期間:半年~2年間。面接時期:2014年2月から3月。内容:黒沢ら(2008),杉本(2013)を参考に「活動参加の目的と活動を行った感想」,「活動を通じて学んだこと」,「活動を通じた変化・成長」とした。手続き:個別に約1時間の半構造化面接を実施した。面接内容は対象者の許可を得て録音した。分析:内容の中から「生徒理解及び支援方法の変化」に焦点をあて,学生の変化を抽出する。
結果・考察
B「生徒の行動には,行動するだけの背景があることに気づいた。」「試行錯誤を重ねる中で生徒や学校全体の様子をつかむことができた。」「受容的関わりだけでなく,生徒が気づきを得られるよう,時には厳しく接することが必要だと気づいた。」「2名体制だったので各生徒の特徴に応じて連携して対応できた。」「支援方法への不安を抱くこともあったが,SVを受け,自信を持って活動できた。」
C「行動の背景にある気持ちを理解して関わるようになった。」「生徒の特徴に合わせた対応ができるようになった。」「感情を表情や行動など非言語的方法で表現する生徒が多くいたため,非言語的側面に注目するようになった。」「養育環境の不安定さを背景にもつ生徒が多く,話を聴いてくれる存在になることが重要だと気づいた。」「カンファレンスで情報交換をすることにより生徒を多角的に見ることができた。」
D「自分の経験を踏まえた助言をしようと必死になっていたが,指導教員からSVを受け,共感を示す関わりが重要だと知り,そのような関わりができるようになったのは成長だと思う。」「基本的な態度は変えないが,生徒の特徴に合わせて話題を変えながら対応するようになった。」「勉強への動機づけの低い生徒に,将来の希望,得意なこと等を共に考えることにより登校する目的意識を持たせる関わりができるようになった。」
以上の語りから,活動を通して生徒の実態を知り行動の背景へも注目して生徒を理解するようになるという変化や,支援が困難となる経験を通した支援方法の変化が共通に語られている。また,生徒の特徴を把握した上で支援方法を試行錯誤しながら選択しており,その過程を通して支援方法のレパートリーの増加が語られた。さらに,生徒理解が進むにつれ,生徒の特徴に合わせ,他学生PSとの連携によってより適切な支援方法をとることができるよう工夫がなされていた。
さらに,指導教員及び教育相談担当の教師からのSVにより学生の変化・成長が支えられていたことが共通に語られており,それによる生徒支援の充実が窺え,専門家による支援体制が学生の成長及び生徒支援を保障することが示唆された。