日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA017] 総合的な学習と関連づけた心理教育プログラムの教育効果

中学校でのSEL-8Sプログラムの活用

山田洋平1, 升野邦江2, 小泉令三3 (1.梅光学院大学, 2.新宮町立新宮中学校, 3.福岡教育大学)

キーワード:心理教育プログラム, 中学生, 総合的な学習の時間

目 的
本研究の目的は,中学生を対象にSEL-8Sプログラムを総合的な学習と関連づけて実施し,生徒の社会的能力に与える教育効果を検討することである。
方 法
調査対象 福岡県内の公立中学校3校。その内,実験群1校1~3学年生徒744名(20学級),統制群2校1~3学年生徒862名(26学級)。調査時期 事前調査を2012年5月に,事後調査を同年12月に実施。調査内容 中学生版「社会性と情動」尺度(SES-Sとする)(山田・小泉,2013),8因子各3項目計24項目,4件法。実施内容 2012年5月~12月,各学年10時間のSEL-8Sプログラムの授業を実施。各授業は,SEL-8Sプログラム(小泉・山田,2011a,b)の中から選択し,学級の実態に合わせて修正を行った。特に,総合的な学習や学校行事との関連を図り,その前後にSEL-8Sプログラムを実施した。例えば,1学年の総合的な学習では,市内班別自主学習と海岸清掃(地域貢献活動)への参加が行われた。市内班別活動においては,様々なグループ活動や話し合い,および地域の方々との交流が行われるため,SEL-8Sプログラムの「聞く?聴く?」を取り上げ,話を正しく聞くポイントを学習した。加えて,地域貢献活動に該当するSEL-8Sプログラムの「ミニボラ」を事前実施した。
結果と考察
取組実施前のSES-Sの8能力全体の平均値を算出し,得点に応じて生徒を低・中・高群の3群に分類した。次に,SES-Sの8能力ごとに,取組実施後の得点から取組実施前の得点を引いた変化量得点を算出し,実施×能力群の2要因分散分析を行った。その結果をTableに示す。
自己への気づき,自己のコントロール,対人関係,人生の重要事態に対処する能力においては,実験群が統制群よりも得点が高かった。特に,自己のコントロール,対人関係では,低・中群において実施群が統制群よりも得点が高かった。
以上の結果から,SEL-8Sプログラムを総合的な学習と関連づけて実施することによって,特に社会的能力が低い,あるいは中程度の生徒の対人関係能力や自己のコントロールの能力に効果が示された。

主要引用文献
山田洋平・小泉令三 (2013). 中学生版「社会性と情動(SEL)」尺度の開発―信頼性と妥当性の検討― 日本学校心理学会第15回三重大会プログラム&発抄録集,69.

【付記】本研究は,(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター研究開発成果実装支援プログラム「学校等における犯罪の加害・被害防止のための対人関係能力育成プログラム実装」(研究代表者:小泉令三)の助成を受けた。