[PA018] 非専門家(大学生)による学校支援ボランティアに関する研究(4)
支援を受けている子どもの特徴および子どもの担任教師による活動の評価
Keywords:学校支援ボランティア, 気がかりな子どもの特徴, アセスメント
【問題と目的】
近年,学校現場では,特別な支援を要する子どもへの支援の1つとして,大学生などの非専門家による学校支援ボランティア活動が広がりを見せている(文部科学省, 2007)。著者らの所属する福井大学においても,教職志望の大学生が支援を行う『ライフパートナー(以下LP)事業』を展開している。LP事業は,教育委員会との協力体制のもとで,1994年(平成5年)より学生数40名からスタートし,2011年度では5市の各教育委員会が参加し,学生ボランティア130名,対象児童生徒200名を超える数に成長した(松木ら, 2012)。これまで,LP活動の対象となる児童生徒の特徴や活動場所ごとの活動内容(大西ら, 2013),LP活動が効果的に展開した事例の特徴(廣澤ら, 2012, 2013; 笹原ら, 2012, 2013)について報告されている。本研究では,支援を受けている児童生徒の特徴やLP活動の評価について,児童生徒の保護者および担任教師を対象とした質問紙調査を行った結果を報告する。
【方法】
1. 調査対象者 LP事業を実施している自治体の内,調査に同意の得られたX市において調査を行った。X市へのLP学生派遣数は約100名であり,その内,適応指導教室や家庭への派遣を除いた学校派遣LP学生は70名である。その学生が支援していた子どもの保護者に学校を通じて質問紙を配布した。また,支援を受けている児童生徒の担任教師にも質問紙を配布した。
2. 調査内容 保護者については,日本語版Strengths and Difficulties Questionnaire (SDQ) 親評定フォーム(野田ら, 2012),LP活動開始後の子どもの変化についての認知,LP活動に対する感想・要望について回答を求めた。教師については,学生の活動態度,LP活動の良い点・要望について回答を求めた。
【結果と考察】
1. 保護者への質問紙調査
16名の保護者から回答が得られた。SDQへの回答が得られたのは15名であり,この15名のデータを分析対象とした。その結果,困難性総合指標において標準サンプル(野田ら, 2013)における臨床水準を示した者は15名中5名(約33.3%),境界水準を示した者が15名中6名(40.0%)存在したことから,LPからの支援を受けている児童生徒の半数近くは臨床的介入が必要と考えられる水準の問題を抱えていることが明らかになった。特に,情緒不安定性と友人関係における問題を抱える者が多かった。LP活動後の子どもの変化については,「学校に行くのを楽しみにしている」「表情が明るくなった」等の意見もあったが,保護者の立場からはあまり明確な変化を捉えることはできなかった。
2. 教師への質問紙調査
69名の教師から回答が得られた。活動について良かった点については,「個別に丁寧に対応してくれて助かった」,「子どもが楽しそうな顔が見られるようになった」,「他の子どもとつなぐ役割を果たしていた」等の意見が多く,教師もLPの有効性を実感している様子であった。要望については,「学生の態度や服装の問題」や「支援内容が不十分」「LP事業の制度面での問題」等を指摘するものが2割程度あった一方で,「LP学生への感謝」や「学生と話す時間が取れない事への謝罪」もあり,LPを派遣している大学と学校との連携の問題も明らかになった。
近年,学校現場では,特別な支援を要する子どもへの支援の1つとして,大学生などの非専門家による学校支援ボランティア活動が広がりを見せている(文部科学省, 2007)。著者らの所属する福井大学においても,教職志望の大学生が支援を行う『ライフパートナー(以下LP)事業』を展開している。LP事業は,教育委員会との協力体制のもとで,1994年(平成5年)より学生数40名からスタートし,2011年度では5市の各教育委員会が参加し,学生ボランティア130名,対象児童生徒200名を超える数に成長した(松木ら, 2012)。これまで,LP活動の対象となる児童生徒の特徴や活動場所ごとの活動内容(大西ら, 2013),LP活動が効果的に展開した事例の特徴(廣澤ら, 2012, 2013; 笹原ら, 2012, 2013)について報告されている。本研究では,支援を受けている児童生徒の特徴やLP活動の評価について,児童生徒の保護者および担任教師を対象とした質問紙調査を行った結果を報告する。
【方法】
1. 調査対象者 LP事業を実施している自治体の内,調査に同意の得られたX市において調査を行った。X市へのLP学生派遣数は約100名であり,その内,適応指導教室や家庭への派遣を除いた学校派遣LP学生は70名である。その学生が支援していた子どもの保護者に学校を通じて質問紙を配布した。また,支援を受けている児童生徒の担任教師にも質問紙を配布した。
2. 調査内容 保護者については,日本語版Strengths and Difficulties Questionnaire (SDQ) 親評定フォーム(野田ら, 2012),LP活動開始後の子どもの変化についての認知,LP活動に対する感想・要望について回答を求めた。教師については,学生の活動態度,LP活動の良い点・要望について回答を求めた。
【結果と考察】
1. 保護者への質問紙調査
16名の保護者から回答が得られた。SDQへの回答が得られたのは15名であり,この15名のデータを分析対象とした。その結果,困難性総合指標において標準サンプル(野田ら, 2013)における臨床水準を示した者は15名中5名(約33.3%),境界水準を示した者が15名中6名(40.0%)存在したことから,LPからの支援を受けている児童生徒の半数近くは臨床的介入が必要と考えられる水準の問題を抱えていることが明らかになった。特に,情緒不安定性と友人関係における問題を抱える者が多かった。LP活動後の子どもの変化については,「学校に行くのを楽しみにしている」「表情が明るくなった」等の意見もあったが,保護者の立場からはあまり明確な変化を捉えることはできなかった。
2. 教師への質問紙調査
69名の教師から回答が得られた。活動について良かった点については,「個別に丁寧に対応してくれて助かった」,「子どもが楽しそうな顔が見られるようになった」,「他の子どもとつなぐ役割を果たしていた」等の意見が多く,教師もLPの有効性を実感している様子であった。要望については,「学生の態度や服装の問題」や「支援内容が不十分」「LP事業の制度面での問題」等を指摘するものが2割程度あった一方で,「LP学生への感謝」や「学生と話す時間が取れない事への謝罪」もあり,LPを派遣している大学と学校との連携の問題も明らかになった。