日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA021] 不登校経験者が再登校を通して直面した葛藤と克服のプロセス

全日制単位制高校3年生へのインタビューから

神崎真実 (立命館大学)

キーワード:不登校, 単位制高校, インタビュー

1.問題と目的
中学校における不登校者は,その多くが卒業後に控えた高校という新しい環境に強い期待を抱き,進学をしている。ところが,不登校経験者で進学先を無事に卒業した者は,進学した者のうち58%しかおらず(森田,2003),高校における不登校者も約5万5000人にのぼる。不登校者が再登校する際には,日常的に登校している児童生徒とは比べものにならないほどの負担を感じる(松坂,2013)との報告もあり,不登校者の高校進学は,決して全てを解決する万能薬ではないことが見てとれる。
では,不登校を経験したのち高校へ進学した青年たちは,新たな環境でどのような葛藤を抱き,いかに克服していくのか。本研究では,不登校経験者が高校で再登校し卒業に至るまでに感じた,葛藤と克服の過程を記述することを目的とした。
2.方法
(1)実施時期 2013年9月~11月
(2)協力者 全日制単位制高校に通う3年生(高校3年間での登校状況が異なる者)6名
(3)インタビューの詳細
インタビュー前の参与観察で,生徒の多くが対人関係に悩みを抱えて教員や観察者に相談を寄せる場面が頻繁に見られたことから,生徒の対人関係における葛藤と克服に焦点化した。その上で,様々な他者(家族,教師,友人等)と自己との関係性について振り返る,2時間弱の非構造化面接を行った。次に,葛藤の中を生きることを支えた資源と葛藤を克服した転機について問う質問項目を用いて,約1時間半半構造化面接を行った。
3.分析1
協力者は不登校前から学校内の関係性(教師と友人)を巡る葛藤を抱いていたことから,自己と学校内の他者に焦点化し,アタッチメントスタイルの4類型(安定型・とらわれ型・回避型・恐れ型)のうちどの型を辿ってきたのかを整理した。類型が変化したタイミングで時期区分を行った結果,(a)葛藤を抱えたまま安定型以外の型で登校を維持する期間:半年~8年,(b)不登校の期間(「なんでなんやろう,辛かったわ」等,自己や他者への意味づけが語られない):1~3年,(c)不登校前と同類型で葛藤を抱えたまま登校を維持する期間:1~2年,(d)自分で何かへ挑戦し意味づけの型が変化し現在に至るまでの期間:半年~1年に大別された。
4.分析2
次に,各時期において葛藤を生きることを支えた資源と,型が変容するきっかけとなった出来事や資源について1人ずつ整理していった。すると,(a)ゲームや部活動等の学校以外の資源又は「頑張る」という自らの意志を支えとしていたが,(a→b)支えとしていた資源をはく奪される,又は「もう無理だ」と意志の限界が訪れ,(b)不登校になる。不登校初期は親に無理やり登校を促されたり,発達障害の診断を受けたりして新たな葛藤が生じるが,(b→c)徐々に親や先生が理解してくれるようになる等で,再登校を試みる。(c)再登校後も,「大人は信用できない」等の葛藤が継続するが,「絶対に卒業すると決めたから」など自らの決意を支えに登校を維持する。(c→d)登校を維持していくなかで,学校行事等を通して友人あるいは教師が支えとして機能するようになり,(d)今まで出来なかったこと(学園祭のリーダー,留学,友人に「あかんことはあかん」と伝える)に挑戦する。以上のような葛藤と克服の過程が見出された。結果をもとに,自らの意志を資源化することと,挑戦を行うための文脈について考察した。