[PA039] 教員養成学部生の課題価値プロフィールと学習成果の関連
教職必修科目受講者の教職志望度に注目して
Keywords:課題価値, 未来展望, 授業評価
問題と目的
課題価値プロフィール(以下Profile)は複数の価値が同時に追求される様相を描き出すことで学習動機づけの状態を全体的に捉える(伊田, 2006)。課題価値には介入可能性があり(三島・斎藤・森, 2009; 田中, 2009),授業評価への応用が試みられている(大谷, 2013)。課題価値と学習行動との関連は,学習者の未来の目標と課題内容との関係性により異なっており(伊田, 2002),Profileとして捉えても同様のことが予想されるため検討する。
方 法
分析対象
近畿地方の教員養成学部において2012年度後期~2013年度前期に教職必修科目『学習過程の心理学』を受講した大学生。分析対象は成績情報使用の同意署名を得た180名(同意率75%)。男性75名,女性105名,平均年齢19.01歳(SD=.13)。
調査内容(紙幅の都合から結果の一部もここに記す)
以下(1)~(3)は授業最終回の質問紙調査,(4)は翌週の定期試験による。(1)課題価値 伊田(2001)の30項目5下位尺度,7件法,α=.84~.89,M=4.88(SD=.86)~5.47(SD=.86)。(2)教職志望度 進路決定者と未決定者を判別する設問(若松, 2001)を用いた。(3)受講後の意欲 「今後も機会があれば,この分野の学習をしたいと思いますか」1項目,7件法,M=5.40(SD=1.25)。(4)試験成績 全くの同一問題は使用できないため,セメスター毎に標準化した得点を用いた。
結 果
課題価値プロフィール
Ward法により平行ユークリッド距離を用いて階層的クラスタ分析を行い4クラスタを採用。分散分析および多重比較の結果を元に,第1クラスタから順に「低価値型」,「自己探求型」,「利用価値型」,「統合型」と解釈した(Figure 1)。
教職志望度による群分け
決定者の内,教員・保育士を挙げた者を「教職積極群」(n=92, 51%),他の職を挙げた者(n=8)と未決定者(n=80)を併せて「教職消極群」(n=88, 49%)とした。なお教職想定者は92%であった。
複数セメスターの標本の合併
Profile別および教職志望度別の人数比にセメスター間での有意差はなかったため合併した。
受講後の意欲の予測
Profile(4)×教職志望度(2)の2要因分散分析を行った結果,Profileの主効果のみ有意であり(F(3,172)=24.49, p<.001),Bonferroni法による多重比較の結果,統合型>***利用価値型>†低価値型,および統合型>*自己探求型>**低価値型の順に受講後の意欲が高かった(Figure 2)。
試験成績の予測
Profile(4)×教職志望度(2)の2要因分散分析を行った結果,交互作用のみ有意傾向を示し(F(3,172)=2.39, p<.10),単純主効果の検定の結果,統合型における教職志望度の単純主効果が有意(F(1,172)=4.57, p<.05)であり,教職消極群が教職積極群よりも試験成績が高かった(Figure 3)。
討 論
試験成績に対するProfile×教職志望度の交互作用は,先行研究での課題価値下位尺度と同様に,Profileも学習者の未来展望との関係で捉えるべきものであることを示した。受講後意欲に関しては脱文脈的に望ましい型の存在可能性を示唆したが,今回は教職消極群も殆どが教職想定者で占められていたことに注意したい。(OHTANI, Munehiro)
課題価値プロフィール(以下Profile)は複数の価値が同時に追求される様相を描き出すことで学習動機づけの状態を全体的に捉える(伊田, 2006)。課題価値には介入可能性があり(三島・斎藤・森, 2009; 田中, 2009),授業評価への応用が試みられている(大谷, 2013)。課題価値と学習行動との関連は,学習者の未来の目標と課題内容との関係性により異なっており(伊田, 2002),Profileとして捉えても同様のことが予想されるため検討する。
方 法
分析対象
近畿地方の教員養成学部において2012年度後期~2013年度前期に教職必修科目『学習過程の心理学』を受講した大学生。分析対象は成績情報使用の同意署名を得た180名(同意率75%)。男性75名,女性105名,平均年齢19.01歳(SD=.13)。
調査内容(紙幅の都合から結果の一部もここに記す)
以下(1)~(3)は授業最終回の質問紙調査,(4)は翌週の定期試験による。(1)課題価値 伊田(2001)の30項目5下位尺度,7件法,α=.84~.89,M=4.88(SD=.86)~5.47(SD=.86)。(2)教職志望度 進路決定者と未決定者を判別する設問(若松, 2001)を用いた。(3)受講後の意欲 「今後も機会があれば,この分野の学習をしたいと思いますか」1項目,7件法,M=5.40(SD=1.25)。(4)試験成績 全くの同一問題は使用できないため,セメスター毎に標準化した得点を用いた。
結 果
課題価値プロフィール
Ward法により平行ユークリッド距離を用いて階層的クラスタ分析を行い4クラスタを採用。分散分析および多重比較の結果を元に,第1クラスタから順に「低価値型」,「自己探求型」,「利用価値型」,「統合型」と解釈した(Figure 1)。
教職志望度による群分け
決定者の内,教員・保育士を挙げた者を「教職積極群」(n=92, 51%),他の職を挙げた者(n=8)と未決定者(n=80)を併せて「教職消極群」(n=88, 49%)とした。なお教職想定者は92%であった。
複数セメスターの標本の合併
Profile別および教職志望度別の人数比にセメスター間での有意差はなかったため合併した。
受講後の意欲の予測
Profile(4)×教職志望度(2)の2要因分散分析を行った結果,Profileの主効果のみ有意であり(F(3,172)=24.49, p<.001),Bonferroni法による多重比較の結果,統合型>***利用価値型>†低価値型,および統合型>*自己探求型>**低価値型の順に受講後の意欲が高かった(Figure 2)。
試験成績の予測
Profile(4)×教職志望度(2)の2要因分散分析を行った結果,交互作用のみ有意傾向を示し(F(3,172)=2.39, p<.10),単純主効果の検定の結果,統合型における教職志望度の単純主効果が有意(F(1,172)=4.57, p<.05)であり,教職消極群が教職積極群よりも試験成績が高かった(Figure 3)。
討 論
試験成績に対するProfile×教職志望度の交互作用は,先行研究での課題価値下位尺度と同様に,Profileも学習者の未来展望との関係で捉えるべきものであることを示した。受講後意欲に関しては脱文脈的に望ましい型の存在可能性を示唆したが,今回は教職消極群も殆どが教職想定者で占められていたことに注意したい。(OHTANI, Munehiro)