日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA044] 大学生における創造観とアイデア生成の関連性

山口洋介1, 三宮真智子1 (大阪大学大学院)

キーワード:創造的思考, 創造観, 拡散的思考

目 的
本研究の目的は,創造観(創造的思考に関する信念)とアイデア生成との関連について検討することである。そのために,まず「創造的思考において何が必要か」という観点から信念を尋ねた。その後に,アイデア生成課題への回答を求めた。
方 法
参加者:大学生120名(うち2名は無回答が含まれていたため除外)を対象とした。所属は,社会科学系・人文学系が中心であった。
質問項目:「創造的なアイデアを生み出すためには,何が必要だと思いますか? 正解や間違いはありませんので,紙に自由に書き出してください」という問いに対して,3分間で筆答を求めた。
アイデア生成課題:「いつもと同じようにカレーを作ったはずなのに,おいしくありません。なぜでしょうか?」という問題に対して,5分間で筆答を求めた。
コーディング:質問項目に対する回答を分類・集計するために,KH Coder ver. 2(樋口,2014)を使用した。たとえば,「直観」というカテゴリについてのコーディングルールは以下のようであった。
結 果
創造観に関する質問に対して,1名当たり平均して5.65個(SD=2.09)の回答が得られた。コーディングの結果,たとえば,次(ページ右上部)に挙げるようなカテゴリが見出された。
アイデア生成課題における平均回答数は9.29個(SD=3.56)であった。「M±1/2SD」を基準として,アイデア生成量に関して,低群(1~7個)・中群(8~11個)・高群(12個~)の3群を設定した。群別にそれぞれの信念の回答者数を集計し,χ2検定を行った。その結果の一部を,Table 1に示す。
「考えをメモに書き出す」(p < .01)と「他者との話し合い」(p < .05)という二つの信念に関して,群間で有意な偏りが見られた。残差分析の結果,「考えをメモに書き出す」は高群,「他者との話し合い」は高群・中群の回答者が有意に多かった。また,「色々な観点から考える」「質を留保する」(p < .10)という二つの信念についても,高群の回答者が多い傾向が見られた。その一方で,有意ではなかったものの,「時間的な余裕」や「体調」など,高群に比べて低群や中群の回答者が多い信念の存在も示唆された。
考 察
本研究では,アイデア生成の指標として,アイデアの量,すなわち,拡散的思考に着目した。拡散的思考の重要性は,これまで多くの研究によって指摘されている(e.g., Guilford,1950)。創造観と拡散的思考との間の関連性が実証的に示唆された本研究の結果は,創造観に対する介入の意義を提起するものであると考えられた。
付記:本研究は,科学研究費基盤研究(C)(研究代表者:三宮真智子,No. 26350278)の補助を受けました。