日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA047] 小学校の事後検討会における語りの変化

Round Study の導入

黒田真由美 (京都大学大学院)

キーワード:授業事後検討会, Round Study

【問題】
教師は日々の授業実践や同僚教師から学んでいる。授業事後検討会は、そのような場の一つであり、互いの実践の課題を明確にし、指針や助言を取り込み、実践を洗練させていく場である。個人の学びだけではなく、学校という共同体においても、互いの知識を共有し、認識を確認しあう場という意味を持つ。一方で、学びの場としては十分に機能していないという指摘もある。授業者と力のある教師によって進められ、他のメンバーは受動的な参加者となっている。そのため、集団としての高まりや個の学びへと繋がらないのである。
議論を活発化させ,共同体形成や集団としての高まりを導く方法の一つとして、ワークショップ型研修が挙げられる。そこで、ワークショップ型研修であるRound Study(原田,2014)を導入した事後検討会を取り上げ、そこでみられる教師の議論の展開について検討し、教師の語りの特徴の変化を明らかにする・
【方法】
対象:小学4年生の総合的な学習の時間の事後検討会(2013年6月19日実施)
事前検討会では、研究グループのメンバーが問題意識を共有し、それをふまえた授業が行われた。授業後に、Round Studyを実施した。
Round Studyでは、3人ずつのグループに分かれ、意見交換を行った。検討会は3つの時間帯(以下、R1,R2,R3とする)に分かれており、2度席替えを行った。事前検討会で問題意識を共有したメンバーが「ホスト」となり、席替えごとに議論についての情報を伝達し、話題をまとめた。最初と最後の時間帯は同じメンバーで実施した。
調査:Round StudyでのやりとりをICレコーダーで記録した。記録した発話をSCAT(大谷、2008)によって分析した。
【結果】
R1では、個々の子どもの振る舞い、教師の指導、授業の展開という観点から授業の実態の把握が行われた。グループによって異なる様々な観点から実践の把握が行われた。R2では、それぞれのグループで示された実践把握を共有するとともに、それぞれの教師がもつ対応策が提案された。R3では、他グループで提示された実践把握をグループで共有するとともに、更なる方略の検討や授業の展開についての議論がみられた。
席の移動によって、各グループの話題が整理され、引き継がれていった。R1,R2では、授業実践の現状認識を共有するためのやり取りが中心となっており、R2からR3にかけて、それへの対応策、さらには教師の有るべき姿への語りへと展開した。
【考察】
Round Studyの特徴として席替えが挙げられる。席を移動することによって、教師は、それぞれのグループでの特徴的な語りや自分にとって意味のある語りを取り入れ、新たなメンバーに伝える。一つのグループ内でのやりとりで終わるのではなく、他者の語りを自分のものとし、さらには語り直しが行われるということは重要である。もとの発話に付与されていた話者の思いが失われ、あるいは,新たな発話者の思いが付与され、語りの意味付けが変化していった。「力のある」教師の発言に耳を傾け、その発言が常に影響力を持つのではなく、発話が持つ発話者の権威が失われることによって、個々の発話の価値が新たに付与された。
Round Studyにおいては、共同体の学びの方向性と検討会の議論とを関連づける役割はホストが担うと考えられる。ただ、本研究においては、Round Studyでの議論が個人の学びや共同体としての高まりに繋がったかについては十分に検証されておらず、今後の課題である。