The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA054] 共同画制作過程における幼児同士の相互交渉

同年齢ペアと異年齢ペアの比較

若松多恵 (神戸大学大学院)

Keywords:異年齢, 道順描画, 相互交渉

【問題】
幼児の描画過程における発達的変化を促すものとして,描画技術の向上や,空間認知能力の発達が挙げられる。さらに別府(1990)から,他者に視点を提示され,言葉で自らの描画を振り返る事で,言語での説明が足場がけとなって描画要素が充実する事が明らかになっている。日常生活の中で子どもが関わる他者は大人だけではなく,子ども同士の関係もある。同じ年齢の子ども同士の関わりもあればきょうだいのように異年齢の子ども同士の関わりもある。そこでなじみのある道順の描画課題を題材として,個人で描画し(個人描画段階)大人から視点を提示され説明して修正する状況(説明段階)と,子どもどうしで描画する状況(共同制作段階)で描画に違いが見られるのかどうか検討することが本研究の目的である。
【方法】
参加児: 年中児21名(男児11名,女児10名), 年長児21名(男児9名,女児12名)。
参加児を年長児ペア,異年齢ペア,年中児ペアの3つの群に割り当てた。ペアの内訳は, 年長児ペア(平均年齢6;4), 異年齢ペア(年長児平均年齢6;2, 年中児平均年齢5;2), 年中児ペア(平均年齢5;3)
課題および手続き:実験は3段階で構成された
・個人描画段階
実験者と参加児が向かい合わせに着席し, A4白紙に鉛筆で,保育園から散歩や行事の際利用する図書館までの行き方を描くように教示した。参加児から質問を受けたときには教示を繰り返した。また,「わからない」と言ったときには「正解はないから思うように描いたらいいよ」と答えた。
・説明段階
自分の描いた絵について説明するように教示した。何か思い出したことがあるときには,赤鉛筆で描き込むように教示した。
・共同制作段階
A3の紙をたてに2枚,横に2枚貼り合わせた紙と鉛筆,シール(実験者があらかじめ描いた保育園,図書館,目印, 描画要素と関係のない絵)を参加児ペアの前に提示した。それぞれのシールが何を指すのかについて,参加児と実験者で確認した後,二人で仲良くシールを使って,保育園から図書館までの行き方を描くように教示した。
【結果と考察】
個人描画段階より説明段階のほうが目印の数,曲がり角の数ともに有意に多くなった
(目印:F(1,38)=13.20,p<.01;曲角:F(1,38)=4.22,p<.05))。
共同制作段階では,目印を実験者が用意した事もあり,年長児ペア,年中児ペアでは個人で描画したときより多くの目印や曲角が見られた。しかし異年齢ペアでは目印の数,曲角の数ともに増加しなかった。

共同制作過程において,活動の展開の仕方に違いが見られた(表1)。共同画制作過程において年長児ペアは最初に「一緒に」道順描画を描き上げるために目印のシールを分配する一方で,異年齢ペアは「仲良く」道順描画を描くために描画過程を通してシールの分配を行なっていた。共同制作過程における役割分担の方法の違いによって,描画要素の充実に違いが出ると考えられる。共同画製作過程のプランの共有や役割分担の違いについてさらなる検討を重ねることが今後の課題である