日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA062] 乳幼児期のけんかやいざこざへの対応に関する意識調査

乳幼児期の子どもを持つ保護者へのアンケート調査を通して

竹中美香 (東大阪大学短期大学部)

キーワード:けんかやいざこざ, 乳幼児期, 保護者意識

Ⅰ.問題と目的
けんかやいざこざなどのぶつかり合いの経験は、子どもの自我発達に大きく寄与すると考えるが、その経験の多少は、子どもを取り巻く大人の発達観に大きく左右されるといえよう。中でも保護者の価値観は、その子どものけんかやいざこざへの在り方や対応の仕方に影響を与えると考える。保護者は、子どものけんかやいざこざをどのように捉えているのだろうか。 また、その対応に困難さを感じてはいないだろうか。
本研究では乳幼児期の子どもを持つ保護者を対象として、けんかやいざこざの捉え方や対応に関する意識を調査した。
Ⅱ.方法
1.調査時期 2014年2月~3月
2.調査対象者 大阪府下の保育所又は幼稚園に子どもを通わせている保護者391名(回答率35.4%)

3.調査内容と方法 子どもの発達におけるけんかの重要性、保育者に介入してほしいタイミング、けんか対応の難しさなどについて、5件法や自由記述により回答を求めた。
Ⅲ.結果
1.けんかの経験は重要か 8割以上の保護者が子どもの発達にとってけんかやいざこざの経験は重要だと思う(「どちらかといえば重要」を含む。以下同様)と答えていた。
2.けんか対応への要望 園内でのけんか対応への要望について、「子ども達の力で解決するのを見守ってほしい」が7割以上と最も多かった(図1)
図1.けんか対応への要望
3.けんかを止めるタイミング 子どものけんかやいざこざが起こったとき、どのタイミングで保育者に止めてほしいかについて、9項目から選択回答を得た。「一方が相手をたたいたり蹴ったりし始めた時」に止めてほしいという回答が半数近くを占めた(図2)。

図2.けんかを止めるタイミング
4.けんか対応への困難さ 6割以上の保護者が、子どものけんかやいざこざの対応に困難さを感じると答えた。理由として、わが子への対応だけでなく、相手の子どもや相手の親への対応の難しさを感じる等の記述が多く見られた。その他世間の目を気にする、けんかを見ると自分自身がイライラしてしまう等、自分の感情の整理の難しさを挙げているものも見られた。
5.相手の保護者対応への困難さ 子どもがけんかをした際、5割ほどが相手の保護者対応に困難さを感じると答えた。また、そのうちの5割以上が、子どもにけんかさせない様に気を付けることがあると答えていた。理由として、相手の保護者の価値観が分からない、相手の保護者から実際に理不尽な対応をされたからなどの記述が見られた。
Ⅳ.考察 ほとんどの保護者が、子どものけんかやいざこざの重要性を認識し、子ども達の力でけんかを解決出来るよう見守りたいと思いつつも、対応には難しさを感じていることが明らかとなった。相手の保護者の事を考えて、けんかをさせない様に気を付けることもあり、保護者自身がのびのびと子育てをする事が出来ない現状が垣間見えた。子どもの発達における重要な経験が、大人の都合によって損なわれている可能性を示すものであり、けんかやいざこざの経験が子どもの発達に与える意義を見直す時期に来ていると考える