[PA068] 保育における4歳児の育ち(3)
子どもの視点から捉える幼稚園2年保育4歳児の1年間
キーワード:4歳児, 幼稚園, 友だち
【 目 的 】
保育の質の向上が求められる今,保育記録が注目されている(秋田他,2013;岸井,2013;河邉,2013など)。そこで共通して問われるのが「その子の視点」(大宮,2011)に立った「子どもにとっての経験の意味」(秋田,2013)である。子ども・子育て新制度の下,平成27年度より認定こども園が拡充されていく。生活経験の異なる子どもの個々の育ちの現状を捉えることは喫近の課題である。
本研究では「その子にとっての意味」(大宮,2011)を捉えながら,育ちの過程を描き出すことを目的とし,本発表では,幼稚園2年保育4歳児の1年間の育ちの姿を「友だちとのかかわり」に焦点を当てて描き出していく。
【 方 法 】
1.研究協力者 N県内の2年保育の公立M幼稚園4歳児1クラス17名(男9名,女8名。ただし3学期に女児1名が転出)と担任保育者。
2.時期と手続き 2013年4月~2014年3月に週1回程度,計35回,9:30前後から降園まで観察を行った。対象児を決め,一連の友だちとのかかわりの様子を追った。フィールドノートへの文字記録とともに,写真・ビデオ撮影を行い,保育終了後,担任保育者と意見交流した。
3.分 析 (1)4歳児1年間の育ち 観察結果から,4歳児に共通して見られた発達の姿を月ごとにまとめた。(2)1人ひとりの子どもの育ち 個別に追った育ちの事例を子どもごとに示した。
【 結 果 と 考 察 】
1.4歳児1年間の育ち 1年間の友だちとのかかわりの育ちの過程をFigure1にまとめた。1学期に育まれた「クラスの友だち」意識を基盤に,2学期は「遊び」を介したつながりから,特定の気の合う友だちができ,「人」によって子どもたちがつながった。さらに3学期になると,自分らしさを発揮しながら友だちとつながり,個と個の関係も深まる様子が見られた(事例1参照)。
●2月:個と個のつながりが深まる
【事例1】(2/17)何度もコマ回しに挑戦していたあやのが「きのこまわし(コマを逆さまに回す技),できた!」とうれしそうな声をあげた。その声を聞き,「あやのちゃん,きのこまわしできた? よかったな!」とさやかが駆け寄ってきた。2人は手を取り合って「よかったな!」と喜び合った。
研究協力園では2月半ばに「生活発表会」があり,4歳児クラスも保育者を中心に劇遊びに取り組んだ。題材は保育者が提案したが,何をどのように演じていくかは,子どもたちと一緒に決めていった。このように子どもたちはクラスで共通の目的に向かって取り組む活動を体験し,3月には保育者がいなくても子どもたちだけでクラス全体で1つになる遊びを始めた(事例2)。
●3月:子どもたちだけでクラスで1つになる
【事例2】(3/10)クラス全体での活動の時に,保育者が職員室に用があり保育室から出る。すかさずのりこが「しゃべらんと,動かんとこ」と提案する。みんな椅子に座ったまま,口を閉じ,動かないようにしている。「あ,はじめくん,てつじくんしゃべった。逮捕」とのりこ。「えっー」と2人は非難の声を上げるが,他の子どもたちは声を出さず,動かないように頑張っている。
2.1人ひとりの子どもの育ち
●1月:自分らしさを発揮しながら友だちとつながる
【事例3】まゆは,真面目で慎重な性格で,自分の気持ちを抑えて,しなければならないことをする子どもである。しかし,すると決めたことは粘り強く、やり遂げる芯の強さもある。2学期11月には我を忘れて闘いごっこに興じるなど,自分の意外な一面に驚くが,3学期には大きな声で自信をもって挨拶ができるようになる。なかよしの女児以外の男児とこま回しに熱中する姿も見られ,自分の殻から少しずつ出て,クラスの友だちとのかかわりも広がった。
3.まとめ 4歳児の1年間,子どもたちは「個と個のつながり」を深めながら「クラスのつながり」も築いていった。保育者を中心に「クラスみんなで一緒が楽しい」経験を積み重ね,3学期の終わりには自分たちだけで,クラスで1つになることを楽しんでいた。
保育の質の向上が求められる今,保育記録が注目されている(秋田他,2013;岸井,2013;河邉,2013など)。そこで共通して問われるのが「その子の視点」(大宮,2011)に立った「子どもにとっての経験の意味」(秋田,2013)である。子ども・子育て新制度の下,平成27年度より認定こども園が拡充されていく。生活経験の異なる子どもの個々の育ちの現状を捉えることは喫近の課題である。
本研究では「その子にとっての意味」(大宮,2011)を捉えながら,育ちの過程を描き出すことを目的とし,本発表では,幼稚園2年保育4歳児の1年間の育ちの姿を「友だちとのかかわり」に焦点を当てて描き出していく。
【 方 法 】
1.研究協力者 N県内の2年保育の公立M幼稚園4歳児1クラス17名(男9名,女8名。ただし3学期に女児1名が転出)と担任保育者。
2.時期と手続き 2013年4月~2014年3月に週1回程度,計35回,9:30前後から降園まで観察を行った。対象児を決め,一連の友だちとのかかわりの様子を追った。フィールドノートへの文字記録とともに,写真・ビデオ撮影を行い,保育終了後,担任保育者と意見交流した。
3.分 析 (1)4歳児1年間の育ち 観察結果から,4歳児に共通して見られた発達の姿を月ごとにまとめた。(2)1人ひとりの子どもの育ち 個別に追った育ちの事例を子どもごとに示した。
【 結 果 と 考 察 】
1.4歳児1年間の育ち 1年間の友だちとのかかわりの育ちの過程をFigure1にまとめた。1学期に育まれた「クラスの友だち」意識を基盤に,2学期は「遊び」を介したつながりから,特定の気の合う友だちができ,「人」によって子どもたちがつながった。さらに3学期になると,自分らしさを発揮しながら友だちとつながり,個と個の関係も深まる様子が見られた(事例1参照)。
●2月:個と個のつながりが深まる
【事例1】(2/17)何度もコマ回しに挑戦していたあやのが「きのこまわし(コマを逆さまに回す技),できた!」とうれしそうな声をあげた。その声を聞き,「あやのちゃん,きのこまわしできた? よかったな!」とさやかが駆け寄ってきた。2人は手を取り合って「よかったな!」と喜び合った。
研究協力園では2月半ばに「生活発表会」があり,4歳児クラスも保育者を中心に劇遊びに取り組んだ。題材は保育者が提案したが,何をどのように演じていくかは,子どもたちと一緒に決めていった。このように子どもたちはクラスで共通の目的に向かって取り組む活動を体験し,3月には保育者がいなくても子どもたちだけでクラス全体で1つになる遊びを始めた(事例2)。
●3月:子どもたちだけでクラスで1つになる
【事例2】(3/10)クラス全体での活動の時に,保育者が職員室に用があり保育室から出る。すかさずのりこが「しゃべらんと,動かんとこ」と提案する。みんな椅子に座ったまま,口を閉じ,動かないようにしている。「あ,はじめくん,てつじくんしゃべった。逮捕」とのりこ。「えっー」と2人は非難の声を上げるが,他の子どもたちは声を出さず,動かないように頑張っている。
2.1人ひとりの子どもの育ち
●1月:自分らしさを発揮しながら友だちとつながる
【事例3】まゆは,真面目で慎重な性格で,自分の気持ちを抑えて,しなければならないことをする子どもである。しかし,すると決めたことは粘り強く、やり遂げる芯の強さもある。2学期11月には我を忘れて闘いごっこに興じるなど,自分の意外な一面に驚くが,3学期には大きな声で自信をもって挨拶ができるようになる。なかよしの女児以外の男児とこま回しに熱中する姿も見られ,自分の殻から少しずつ出て,クラスの友だちとのかかわりも広がった。
3.まとめ 4歳児の1年間,子どもたちは「個と個のつながり」を深めながら「クラスのつながり」も築いていった。保育者を中心に「クラスみんなで一緒が楽しい」経験を積み重ね,3学期の終わりには自分たちだけで,クラスで1つになることを楽しんでいた。