The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(501)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PA073] 小学生におけるワーキングメモリ訓練教材の効果の検証

触覚版ジャンケンメモリ

藤本浩一1, 山本利和2, 竹内伸宜3, 林照子4 (1.神戸松蔭女子学院大学, 2.大阪教育大学, 3.頌栄短期大学, 4.甲南女子大学)

Keywords:ワーキングメモリ, 触覚, 二重課題

前頭前皮質を中心とした実行機能やワーキングメモリの不足が,注意集中や学業成績に悪影響を及ぼすことが知られている。そこでワーキングメモリを鍛える簡便な方法として,認知訓練教材「触覚版ジャンケンメモリ(TJM)」を3年間の科研研究によって作成した。ある県の補習塾で導入したところ顕著な効果があったので報告する。
<日時・場所>2014年2月Z氏自宅兼塾
<対象>
塾に通う小学3年~6年までの男女児数名。なお,そのうち5名は事前事後テストのデータが揃っている。塾の女性講師にも聞きとり調査した。
<教材を用いた訓練の方法>
教材:グー・チョキ・パーに対応する図柄(●Ⅴ□)のいずれかが,カプセルペーパーと呼ばれる特殊紙に熱処理が出来る立体コピー機で凹凸印刷されたものを,トランプに貼り付けた30枚。
遊び方:トランプカード束を手札として左手に持ち,裏を向けたまま手指の感触を使って実施する。まずは1枚以上置いてそれを山札とする。次に手札を(裏を向けたまま)めくったカードが最初の山札カードに対してジャンケンで勝ちならその上に置き,あいこか負けなら別のところに捨て札として置く。これを繰り返して最後の1枚まで使いきればゲーム終了とする。なお、一番上の捨て札はゲーム途中で有効に再利用できる。
分間休憩を利用して各自のペースで行った(20回は5カ月程度,40回は9カ月程度)。
<事前テストおよび事後テスト>
「数の逆唱」と「語音整列」の2種類のワーキングメモリ課題を実施した。後者はWISC4の問題から作成し,かなと数字を口頭で述べ,まず数字を小さい順に言って仮名を五十音順に言う課題で,「か-5-1」なら「1-5-か」が正解である。
<結果>
事前事後テスト別に2課題について桁ごとの正答数を合計し(表1),対応あるtテストを行ったところ,数の逆唱では差がある傾向があり(p=0.08),語音整列では0.5%で有意差があった。
子どもたちの様子を尋ねると,暗算が速くなった,文章題が出来るようになった,自信がついた,集中力が出来たねと小学校の教師にほめられたなど学習面や生活面に転移が認められた。休憩後すぐに次の勉強に取り掛かれるそうで,勉強は視聴覚刺激から概念化する経路をたどるが,休憩時に取り入れたTJMは触覚刺激から概念化する経路を使うので,脳全体のバランスがとれて,いわば脳が更新されると思われる。強制せず子ども自ら楽しんだ。被験者数は少ないものの,本教材によってワーキングメモリが鍛えられ,その結果学業成績の向上という形で転移したといえよう。