[PA074] 小学生における数の推定の発達
キーワード:数概念, 線形表象, 心的数直線
目的
数の表象に関して,これまでの研究により,幼児期から児童期にかけて,対数的な表象(心的数直線)から線形の表象に移行していくことが指摘されている。また線形の表象の獲得にともなって,数の推定に関して,より正確な推定が可能となってくるとされている。本研究では,日本の小学生において,学年ごとの線形の表象(心的数直線)の獲得の程度や推定の精度の高さを検討する。
方法
参加者 A大学附属小学校の2年生,4年生および6年生が研究に参加した。各学年の参加人数は,2年生33名(男児17名,女児16名),2年生33名(男児17名,女児16名),4年生35名(男児17名,女児18名)であった。
刺激と課題 数直線課題: A4サイズの用紙(横置き)の中央に,長さ25cmの数直線を配置し,中央上部に推定を行う数値を提示した。この数直線には目盛りはなく,左端と右端にのみ数字が印字されていた。左端には0が,右端には課題により100か1000の数字が印字してあった。課題は,0から100の範囲の数を対象に行うNP100課題と,0から1000までの数を対象に行うNP1000課題の2つであった(NP:Number-to-Position)。両課題で使用する数字は,Siegler(2003)で使用された数字を使用した。NP100課題では「2,3,4,6,18,25,42,67,71,86」であり,NP1000課題では「2,4,6,18,25,71,86,230,390,780,810」であった。 算数課題:教研式NRT(図書文化社)を使用した。各学年の問題をそれぞれの学年ごとの集団で実施した。
手続き 数直線課題は個別に実施した。初めに数直線のみの用紙を呈示し,課題の説明を行った。対象の数字が数直線上のどの位置か推定してもらった。また課題内の対象数字の実施順はランダムにし,2つの課題と性別に関してカンターバランスを行った。
数直線課題は,当該学年の10月末から12月上旬に実施し,教研式NRTは当該学年の3月であった。
結果
学年ごとの線形表象の形成 学年ごとに各推定値の中央値にもとづいて,線形および対数の近似直線(曲線)を求めた。さらにそれぞれの当てはまりの程度を検討した。この結果,NP100課題では,2学年,4年生および6年生で線形の心的数直線を獲得していた(それぞれ線形の近似直線R2=.995,R2=.999,R2=.998)。NP1000課題では2年生を除く,4年生および6年生で線形の心的数直線を獲得していた(それぞれR2=.996,R2=.998)。2年生では,線形(R2=.876)に対し対数(R2=.928)であった。
学年ごとの線形表象の形成割合 各対象児童について,線形か対数か,どちらの近似線の当てはまりがよいか検討した。その結果,NP1000課題では,2年生で線形45.45%に対して対数54.55%であり,4年生では線形90.91%に対して対数9.09%であり,6年生では線形97.14%に対して対数2.86%であった(図1参照:参考のため,大学院生のデータも示してある)。
推定の精度 各対象児童の推定値が,どの程度正確かを検討したところ,NP100課題,NP1000課題のどちらでも,学年が上がるにつれ,推定精度が向上していた。
数の表象に関して,これまでの研究により,幼児期から児童期にかけて,対数的な表象(心的数直線)から線形の表象に移行していくことが指摘されている。また線形の表象の獲得にともなって,数の推定に関して,より正確な推定が可能となってくるとされている。本研究では,日本の小学生において,学年ごとの線形の表象(心的数直線)の獲得の程度や推定の精度の高さを検討する。
方法
参加者 A大学附属小学校の2年生,4年生および6年生が研究に参加した。各学年の参加人数は,2年生33名(男児17名,女児16名),2年生33名(男児17名,女児16名),4年生35名(男児17名,女児18名)であった。
刺激と課題 数直線課題: A4サイズの用紙(横置き)の中央に,長さ25cmの数直線を配置し,中央上部に推定を行う数値を提示した。この数直線には目盛りはなく,左端と右端にのみ数字が印字されていた。左端には0が,右端には課題により100か1000の数字が印字してあった。課題は,0から100の範囲の数を対象に行うNP100課題と,0から1000までの数を対象に行うNP1000課題の2つであった(NP:Number-to-Position)。両課題で使用する数字は,Siegler(2003)で使用された数字を使用した。NP100課題では「2,3,4,6,18,25,42,67,71,86」であり,NP1000課題では「2,4,6,18,25,71,86,230,390,780,810」であった。 算数課題:教研式NRT(図書文化社)を使用した。各学年の問題をそれぞれの学年ごとの集団で実施した。
手続き 数直線課題は個別に実施した。初めに数直線のみの用紙を呈示し,課題の説明を行った。対象の数字が数直線上のどの位置か推定してもらった。また課題内の対象数字の実施順はランダムにし,2つの課題と性別に関してカンターバランスを行った。
数直線課題は,当該学年の10月末から12月上旬に実施し,教研式NRTは当該学年の3月であった。
結果
学年ごとの線形表象の形成 学年ごとに各推定値の中央値にもとづいて,線形および対数の近似直線(曲線)を求めた。さらにそれぞれの当てはまりの程度を検討した。この結果,NP100課題では,2学年,4年生および6年生で線形の心的数直線を獲得していた(それぞれ線形の近似直線R2=.995,R2=.999,R2=.998)。NP1000課題では2年生を除く,4年生および6年生で線形の心的数直線を獲得していた(それぞれR2=.996,R2=.998)。2年生では,線形(R2=.876)に対し対数(R2=.928)であった。
学年ごとの線形表象の形成割合 各対象児童について,線形か対数か,どちらの近似線の当てはまりがよいか検討した。その結果,NP1000課題では,2年生で線形45.45%に対して対数54.55%であり,4年生では線形90.91%に対して対数9.09%であり,6年生では線形97.14%に対して対数2.86%であった(図1参照:参考のため,大学院生のデータも示してある)。
推定の精度 各対象児童の推定値が,どの程度正確かを検討したところ,NP100課題,NP1000課題のどちらでも,学年が上がるにつれ,推定精度が向上していた。