[PA083] 高校生のインターネット利用実態とメンタルヘルス
キーワード:インターネット, メンタルヘルス, 高校生
近年の急速なインターネット端末の普及や料金の低廉化によって,長時間インターネットを利用できる環境が整備され,人々の生活に大きな変化を及ぼしている。インターネットは,膨大な情報に容易にアクセスすることや,不特定多数の人々との迅速な情報交換を可能にすることなどのメリットがある一方で,その過剰利用は人々の心身の健康や日常生活に悪影響を及ぼしかねないというデメリットも指摘されている。
最近の研究では,過度のインターネットの利用は,アルコールや薬物,ギャンブル依存と同様の依存症に陥る危険性を高めること,また抑うつ状態や孤独感,疲労感や不眠傾向など心身の健康状態を悪化させること,および家族関係や仕事や学業上の不調など日常生活上の機能低下をもたらすことが報告されている。
しかしながら,わが国においては,インターネットの過剰利用が若者の心身の健康状態や日常生活にどのような影響を及ぼしているかを調査した研究は極めて少ない。そこで本調査研究では,(1)高校生のインターネット利用実態を調べるとともに,(2)それが心身の健康状態や日常生活にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とする。
方 法
調査対象者:首都圏の高校1~3年生638名を対象に調査を実施し,有効回答の得られた565名を分析対象とした。
調査内容
インターネット利用行動尺度:日常生活の中でのインターネットの利用行動の頻度について調べる質問20項目により尺度を作成。
インターネットアディクションテスト:Young(1998)によって作成され,長田・上野(2005)によって日本語化された尺度。
ストレス症状尺度: PSI(パブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー)の高校生版(坂野・岡安・嶋田,2007)。
高校生活適応感尺度:浅川ら(2002)
Epworth Sleepiness Scale(ESS):福原ら(2006)による日中の活動時の眠気の程度を調べる尺度。
結果と考察
インターネットの利用実態
80%を超える生徒が毎日利用していると回答しており,ほとんど利用しないという生徒は極めて少ない。1日あたりのインターネット利用時間で最も多いのは2~3時間で,1~2時間がそれに次いでいる。また5時間以上と回答した生徒も20%近くおり,1日にかなりの時間をインターネット利用に費やしている状況がうかがえる。
インターネットを最もよく利用する目的をひとつ挙げるよう求めたところ,LINE等を含むメール交換が最も高く(49.2%),次いでウエブページの検索(21.1%),ブログや掲示板等のSNS(14.9%)と続いている。なお,ウエブページの検索は男子の方が多く,メール交換やSNSは女子の方が多い。
インターネットの利用頻度および依存度と健康指標との関係(図1)
インターネット依存度はすべてのストレス症状と正の相関があり,また高校生活適応感とは負の相関があることから,インターネットに依存的状態にあることはストレス症状や高校生活適応感を悪化させるように機能していると考えられる。一方で,インターネット利用頻度は,友人関係適応感および眠気と正の相関があったが,他の健康指標とはほとんど関連性が認められなかった。このことは,インターネットの利用頻度が高いとしても必ずしも健康状態を悪化させることは言えず,睡眠不足による眠気をもたらしている可能性はあるものの,良好な友人関係の維持を促進するよう機能している可能性を示唆するものである。
最近の研究では,過度のインターネットの利用は,アルコールや薬物,ギャンブル依存と同様の依存症に陥る危険性を高めること,また抑うつ状態や孤独感,疲労感や不眠傾向など心身の健康状態を悪化させること,および家族関係や仕事や学業上の不調など日常生活上の機能低下をもたらすことが報告されている。
しかしながら,わが国においては,インターネットの過剰利用が若者の心身の健康状態や日常生活にどのような影響を及ぼしているかを調査した研究は極めて少ない。そこで本調査研究では,(1)高校生のインターネット利用実態を調べるとともに,(2)それが心身の健康状態や日常生活にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とする。
方 法
調査対象者:首都圏の高校1~3年生638名を対象に調査を実施し,有効回答の得られた565名を分析対象とした。
調査内容
インターネット利用行動尺度:日常生活の中でのインターネットの利用行動の頻度について調べる質問20項目により尺度を作成。
インターネットアディクションテスト:Young(1998)によって作成され,長田・上野(2005)によって日本語化された尺度。
ストレス症状尺度: PSI(パブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー)の高校生版(坂野・岡安・嶋田,2007)。
高校生活適応感尺度:浅川ら(2002)
Epworth Sleepiness Scale(ESS):福原ら(2006)による日中の活動時の眠気の程度を調べる尺度。
結果と考察
インターネットの利用実態
80%を超える生徒が毎日利用していると回答しており,ほとんど利用しないという生徒は極めて少ない。1日あたりのインターネット利用時間で最も多いのは2~3時間で,1~2時間がそれに次いでいる。また5時間以上と回答した生徒も20%近くおり,1日にかなりの時間をインターネット利用に費やしている状況がうかがえる。
インターネットを最もよく利用する目的をひとつ挙げるよう求めたところ,LINE等を含むメール交換が最も高く(49.2%),次いでウエブページの検索(21.1%),ブログや掲示板等のSNS(14.9%)と続いている。なお,ウエブページの検索は男子の方が多く,メール交換やSNSは女子の方が多い。
インターネットの利用頻度および依存度と健康指標との関係(図1)
インターネット依存度はすべてのストレス症状と正の相関があり,また高校生活適応感とは負の相関があることから,インターネットに依存的状態にあることはストレス症状や高校生活適応感を悪化させるように機能していると考えられる。一方で,インターネット利用頻度は,友人関係適応感および眠気と正の相関があったが,他の健康指標とはほとんど関連性が認められなかった。このことは,インターネットの利用頻度が高いとしても必ずしも健康状態を悪化させることは言えず,睡眠不足による眠気をもたらしている可能性はあるものの,良好な友人関係の維持を促進するよう機能している可能性を示唆するものである。