[PA085] スクールカウンセラーは校種の違いをどのように実感しているか
教師との協働関係に焦点を当てて
キーワード:スクールカウンセラー, 協働, 校種の違い
問題と目的
これまで公立学校へのスクールカウンセラー(以下,SCと略記)の配置は,中学校を中心に進められてきた。しかし,2008年,文部科学省は小学校への配置も本格化させるとの方針を打ち出しており(文部科学省初等中等教育局, 2008),東京都では,2013年度から,小学校を含む全公立学校へのSC配置が実施されている。
このような流れの中で,今後は一人のSCが中学校だけでなく小学校にも勤務するという事態が,これまで以上に生じると予想される。そこで,本研究では,現場のSCが,小学校と中学校における教師との協働のあり方の違いをどのように意識しているのかについて,探索的に検討することを目的とする。特に,SCが,中学校との違いを踏まえながら,小学校の特徴をどのように実感しているのかについて検討する。
方法
現在もしくは過去に小学校でSCとして勤務した経験があり,かつ中学校でのSC経験もある4名(Table1)を対象に,2009年7月から9月にかけて,1名あたり1~1.5時間程度の半構造化面接を実施し,逐語録化したものをデータとした。
面接では,主に日頃のSC活動や教職員との関係作りについて尋ねたが,本研究ではその中でも,調査協力者が小中の違いについて言及している箇所を分析の対象とした。分析は,KJ法(川喜田, 1967)や,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Strauss & Corbin, 1998)のオープン・コード化を参考に,似た内容の発言を集めてグループ化し,カテゴリを生成する形をとった。
結果
≪学校や教師の特徴の違い≫として6カテゴリ(【担任の権限が大きい】,【担任の力量差が出やすい】,【中学校のように空き時間を使えない】,【教師というより親っぽい】,【玄人じみていない】,【SC活用システムが確立途中】)が,≪関係構築のあり方の違い≫として,2カテゴリ(【一人ひとりの担任との関係構築が進んでいく】,【一人ひとりの担任とチームを組む】)が,それぞれ生成された。
考察
文献研究から小学校独自の協働のあり方を検討した山本・須川・曽山・割澤(2012)によると,小学校では,担任教師にかかる責任・負担の大きさや,担任教師と子どもの結びつきの強さに配慮した関係構築が求められるという。今回【担任の権限が大きい】や【教師というより親っぽい】といったカテゴリが得られたことは,現場のSCがこうした校種の違いを実感として掴んでいることを示唆している。
一方,本研究では,【玄人じみていない】というカテゴリも得られたが,これは必ずしも小学校教師の力量不足を意味しないと思われる。むしろ対象とする子どもの発達段階や,それに応じて求められる担任教師の役割の違いなどによる部分が大きいと考えられる。しかし,SCが小学校に配置された場合には,担任教師と関係を構築する際の留意点として意識する必要があるかもしれない。
今後の課題は,こうした現場のSCが実感している小中の特徴の違いが,実際の教師との協働にどのような影響を与えるのか,教師の視点からのデータも加えながら,多層的に検討することであろう。
これまで公立学校へのスクールカウンセラー(以下,SCと略記)の配置は,中学校を中心に進められてきた。しかし,2008年,文部科学省は小学校への配置も本格化させるとの方針を打ち出しており(文部科学省初等中等教育局, 2008),東京都では,2013年度から,小学校を含む全公立学校へのSC配置が実施されている。
このような流れの中で,今後は一人のSCが中学校だけでなく小学校にも勤務するという事態が,これまで以上に生じると予想される。そこで,本研究では,現場のSCが,小学校と中学校における教師との協働のあり方の違いをどのように意識しているのかについて,探索的に検討することを目的とする。特に,SCが,中学校との違いを踏まえながら,小学校の特徴をどのように実感しているのかについて検討する。
方法
現在もしくは過去に小学校でSCとして勤務した経験があり,かつ中学校でのSC経験もある4名(Table1)を対象に,2009年7月から9月にかけて,1名あたり1~1.5時間程度の半構造化面接を実施し,逐語録化したものをデータとした。
面接では,主に日頃のSC活動や教職員との関係作りについて尋ねたが,本研究ではその中でも,調査協力者が小中の違いについて言及している箇所を分析の対象とした。分析は,KJ法(川喜田, 1967)や,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Strauss & Corbin, 1998)のオープン・コード化を参考に,似た内容の発言を集めてグループ化し,カテゴリを生成する形をとった。
結果
≪学校や教師の特徴の違い≫として6カテゴリ(【担任の権限が大きい】,【担任の力量差が出やすい】,【中学校のように空き時間を使えない】,【教師というより親っぽい】,【玄人じみていない】,【SC活用システムが確立途中】)が,≪関係構築のあり方の違い≫として,2カテゴリ(【一人ひとりの担任との関係構築が進んでいく】,【一人ひとりの担任とチームを組む】)が,それぞれ生成された。
考察
文献研究から小学校独自の協働のあり方を検討した山本・須川・曽山・割澤(2012)によると,小学校では,担任教師にかかる責任・負担の大きさや,担任教師と子どもの結びつきの強さに配慮した関係構築が求められるという。今回【担任の権限が大きい】や【教師というより親っぽい】といったカテゴリが得られたことは,現場のSCがこうした校種の違いを実感として掴んでいることを示唆している。
一方,本研究では,【玄人じみていない】というカテゴリも得られたが,これは必ずしも小学校教師の力量不足を意味しないと思われる。むしろ対象とする子どもの発達段階や,それに応じて求められる担任教師の役割の違いなどによる部分が大きいと考えられる。しかし,SCが小学校に配置された場合には,担任教師と関係を構築する際の留意点として意識する必要があるかもしれない。
今後の課題は,こうした現場のSCが実感している小中の特徴の違いが,実際の教師との協働にどのような影響を与えるのか,教師の視点からのデータも加えながら,多層的に検討することであろう。