日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB003] いじめの被害者と傍観者の被援助志向性

学級での適応および学校生活に対する意欲との関連

田村修一 (創価大学)

キーワード:いじめ, 被援助志向性, 傍観者

【問題と目的】
現在、学校現場における「いじめ」の問題は深刻である。「いじめ」の解決策の一つとして、他者への「サポート希求」は有効なコーピング方略の一つであろう。そこで本研究では、小学生における「いじめ」の被害者および傍観者の「被援助志向性」について検討する。具体的には、いじめの被害者あるいは傍観者になった場合の「被援助志向性」(「友人」「担任教師」「養護教諭」「カウンセラー(以下SC)」「父母」に援助を求める態度)を測定し、「学級での適応」および「学校生活に対する意欲」とどのような関連が見られるかを検討した。
【方法】
調査対象:首都圏公立A小学校の4~6年生(男子80名、女子60名、合計140名)
調査時期: 2013年12月
測定具
1)いじめの被害者・傍観者の「被援助志向性」尺度
本研究で新たに作成した。もし、自分がいじめの被害者あるいは傍観者になった場合、その解決のために友人・担任教師・養護教諭・SC・父母に相談するかどうかについて、「4:必ずする」~「1:絶対しない」の4件法で回答を求めた。
2)Hyper-QU(小学校4~6年用)河村茂雄著
「学級での適応」については、「いごこちの良いクラスにするためのアンケート」の「被侵害」「承認」の各得点を測定した。また、「学校生活に対する意欲」については、「やる気のあるクラスをつくるためのアンケート」の「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」の各得点を測定した。
【結果】
1 いじめの被害者・傍観者になった場合の「被援助志向性」得点の男女別・学年別比較
<男子>学年別の「被援助志向性」得点の平均値を比較するために分散分析を行った。その結果、傍観者の場合のみ、対養護教諭(4年>5年)、対SC(4年>5年)、対父母(4年>6年)について、いずれも4年生の平均値が他学年に比べて有意に高かった。
<女子>学年別の「被援助志向性」得点の平均値を比較するために分散分析を行った。その結果、被害者の場合は、対SC(4年>6年)について4年生の平均値が他学年に比べ有意に高く、傍観者の場合も、対SC(4年>6年)について4年生の平均値が他学年に比べ有意に高かった。
2 「被援助志向性」得点を目的変数に、「承認」「被侵害」「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」の各得点を説明変数にした重回帰分析
<男子>傍観者の場合、対父母への「被援助志向性」に「学習意欲」(.367**)が影響を与えていた。
<女子>被害者の場合、対友人への「被援助志向性」に「友達関係」(.412**)が、対担任教師への「被援助志向性」に「承認」(.346**)が影響を与えていた。傍観者の場合、対友人への「被援助志向性」に「友達関係」(.418**)が、対担任教師への「被援助志向性」に「承認」(.397**)が、対養護教諭への「被援助志向性」に「友達関係」(.352**)が影響を与えていた。
3 4種類の「学級集団タイプ」別の児童の「被援助志向性」得点の比較(1要因分散分析)
1)はじめに、各学級についてプロット図から「満足型」「管理型」「なれ合い型」「荒れ始め型」の4種類の学級集団タイプに分類した。
2)続いて、4タイプの学級集団別の児童の「被援助志向性」得点の平均値を比較するため、分散分析を行った。さらに有意差が見られた項目についてTukey(HSD法)の多重比較を行った。その結果、被害者の場合、対担任教師への「被援助志向性」得点に有意差が見られた(満足型2.87>なれ合い型2.77・管理型2.54>荒れ始め型2.27)。また、傍観者の場合、対SCへの「被援助志向性」得点に有意差が見られた(なれ合い型2.75>荒れ始め型2.21・管理型2.11>満足型2.04)。
【考察】
これらの結果に基づいて、「いじめ」の被害者および傍観者の「被援助志向性」や「サポート希求行動」を促進する具体的な方法について議論した。