[PB005] 学校危機に遭遇した教師の体験に関する実証的研究(5)
校長の自殺に遭遇した支援加配の教師の語りから
キーワード:学校危機, 回復過程, 複線径路・等至性モデル
問題と目的
突然の災害,事件・事故に遭遇し危機に陥った学校へより効果的な支援を行うには,自らも大きな影響を受けながら危機対応の中心とならざるを得ない教師の体験を明らかにすることが求められる。われわれは学校危機に遭遇した教師へのインタビュー調査の分析を行い,異なった事案に遭遇した立場の異なる教師の体験に検討を加えてきた(丸山ら, 2013ほか)。本研究は,校長の自殺を経験した支援加配の教師の事例を分析し,学校危機に対するより効果的な支援のあり方を検討する基礎資料を得ることを目的とする。
方法
【インタビュー参加者】校長の自殺を経験したA県B市のC小学校教諭 (支援加配)。インタビュー参加については所定の書式で同意を得た。インタビュー日時はX+5年1月7日16:55~17:45。
【事例の概要】C小学校の校長の自殺。本事例は,臨床心理士(以下CP)チームによる緊急支援が延べ14日行われた。
【データ収集方法】同意が得られた対象者に対し半構造化面接が実施された。項目は丸山ら(2013)を参照。実施に際しては名古屋大学教育発達科学研究科倫理委員会の承認(PR11-31)を得た。
【分析方法】①インタビューデータをもとに逐語録を作成し,②KJ法の手順を用いてラベルを抽出した後,③各項目をTEMの方法に従い分析した。EFP(Equifinality Point:等至点)として「一年後の日常性の回復」を設定し,そこに至る過程を記述,検討した。
結果と考察
本事例は,小学校で生じたいじめ事案の対応を巡るトラブルで校長が追い詰められ自殺したことで学校全体が大きな衝撃を受けた事例である。この事例では,校長の自殺に対して当該教師は後悔と自責感を抱き混乱しながらも,一方では「平素と同じように児童を見守らなければ」という強い思いで対応していた。このように,教師の自殺事例では,教師自身,強い自責や後悔といった気持ちを整理できないまま,児童を支えるという役割を担わなければならないのが特徴的である。
教師は混乱しながらも児童に冷静に対応しようとしていたが,子供が事件によってどのような影響を受けているか分からないこともあり,対応の難しさを感じていた。この時,CPチームから児童の状態についての説明を受けたことで,教師は児童の状況を理解した上で子供たちに対応することができた。校長の自殺といった事例では,教職員も混乱し,児童にどのように関わればよいか分からない中で行動しなければならないと考えられる。そのため,CPによるコンサルテーションが特に有効であったと考えられる。また,語りにもあるように,このような事例では,児童,保護者へのカウンセリングだけでなく,動揺している教職員へのカウンセリングも重要であると思われる。
突然の災害,事件・事故に遭遇し危機に陥った学校へより効果的な支援を行うには,自らも大きな影響を受けながら危機対応の中心とならざるを得ない教師の体験を明らかにすることが求められる。われわれは学校危機に遭遇した教師へのインタビュー調査の分析を行い,異なった事案に遭遇した立場の異なる教師の体験に検討を加えてきた(丸山ら, 2013ほか)。本研究は,校長の自殺を経験した支援加配の教師の事例を分析し,学校危機に対するより効果的な支援のあり方を検討する基礎資料を得ることを目的とする。
方法
【インタビュー参加者】校長の自殺を経験したA県B市のC小学校教諭 (支援加配)。インタビュー参加については所定の書式で同意を得た。インタビュー日時はX+5年1月7日16:55~17:45。
【事例の概要】C小学校の校長の自殺。本事例は,臨床心理士(以下CP)チームによる緊急支援が延べ14日行われた。
【データ収集方法】同意が得られた対象者に対し半構造化面接が実施された。項目は丸山ら(2013)を参照。実施に際しては名古屋大学教育発達科学研究科倫理委員会の承認(PR11-31)を得た。
【分析方法】①インタビューデータをもとに逐語録を作成し,②KJ法の手順を用いてラベルを抽出した後,③各項目をTEMの方法に従い分析した。EFP(Equifinality Point:等至点)として「一年後の日常性の回復」を設定し,そこに至る過程を記述,検討した。
結果と考察
本事例は,小学校で生じたいじめ事案の対応を巡るトラブルで校長が追い詰められ自殺したことで学校全体が大きな衝撃を受けた事例である。この事例では,校長の自殺に対して当該教師は後悔と自責感を抱き混乱しながらも,一方では「平素と同じように児童を見守らなければ」という強い思いで対応していた。このように,教師の自殺事例では,教師自身,強い自責や後悔といった気持ちを整理できないまま,児童を支えるという役割を担わなければならないのが特徴的である。
教師は混乱しながらも児童に冷静に対応しようとしていたが,子供が事件によってどのような影響を受けているか分からないこともあり,対応の難しさを感じていた。この時,CPチームから児童の状態についての説明を受けたことで,教師は児童の状況を理解した上で子供たちに対応することができた。校長の自殺といった事例では,教職員も混乱し,児童にどのように関わればよいか分からない中で行動しなければならないと考えられる。そのため,CPによるコンサルテーションが特に有効であったと考えられる。また,語りにもあるように,このような事例では,児童,保護者へのカウンセリングだけでなく,動揺している教職員へのカウンセリングも重要であると思われる。