日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB013] 児童の学校適応感について

自尊感情・自己効力感との関連に着目して

富岡比呂子 (創価大学)

キーワード:学校適応感, 自尊感情, 自己効力感

研究目的
本研究の目的は,小学生の学校適応感を自尊感情および自己効力感との関連から検討することである。活動への参与や自己開示,学習態度などの質問項目を用いて,学校適応感を検討し,学年や性別による差や下位尺度間の相関を見ることで,適応感に影響を与える構成概念について分析する。
研究方法
2013年9月に小学2~6年生計341名(男子168名,女子173名)に以下の尺度を実施した。
①自尊感情尺度(星野,1970;山本・松井・山成,1982)より3問 ②児童用一般性セルフ・エフィカシー尺度(福井ら,2009)より5問 ③自己概念尺度
( Marsh, 1988)より「スポーツ」「友人との関係」「国語」「算数」の項目計14問 ④教師(「教師との関係」「教師の指導」についての項目計7問) ⑤学校適応感(「適応感」,「活動への参与」「学習態度・志向性」,「自己開示」,「規則遵守・公平さ」を問う質問計21問) 回答形式は「非常にそう思う」「そう思う」「あまり思わない」「まったく思わない」の4択式であった。
結果と考察
性別と年齢の主効果と交互作用をみるために,性別と年代の2×5の2要因分散分析をおこなった。性別の主効果については,自己概念尺度の「スポーツ」(F(1,340)=8.47, p<.01)と「算数」(F(1,340)=30.42, p<.001)は,男子が女子よりも有意に高かった。「国語」(F(1,340)=5.77 p<.05)「友人との関係」(F(1,340)=11.08, p<.001)「適応感」(F(1,340)=14.86, p<.001)においては,女子が高かった。学年の主効果については,「友人の関係」をのぞくすべての 下位尺度において,学年による有意な差が見られた。TukeyのHSD法による多重比較をおこなうと,2年と3年が,4,5,6年生よりも高い値を示した。これによって,自己概念,自尊感情,および学校適応感が学年が上がると共に低下する傾向にあることが示された。特に,「国語」「算数」など主要科目の学業的自己概念は5,6年になると低くなる傾向にあった。
下位尺度間の関連をみると,「自尊感情」が「自己効力感」(r=.61) ,「授業態度・志向性」(r=.50),「自己開示」(r=.53)と有意な正の相関を示し,「自己効力感」も「スポーツ」(r=.50)「活動への参与」(r=.54)「授業態度・志向性」(r=.59)「自己開示」(r=.58)などと正の相関を示すなど,自分自身を肯定的に受け止める自尊感情や,自己効力感が学校適応感と関連していることを示した。加えて,「友人との関係」は「適応感」(r=.57)「活動への参与(r=.53)「自己開示」(r=.56)と有意な正の相関があり,同じく「教師との関係」も「活動への参与」(r=.52)「自己開示(r=.51)」と相関が見られたことから,教室内での友人や教師との人間関係が良好な児童は,クラスでの活動にも積極的に参加し,自分を開示できる傾向にあることが示唆された。学業的自己概念については「スポーツ」と「自己開示」(r=.53)の間に正の相関が見られ,運動能力を高く自己評価する児童は,自己開示の傾向が高いことが示された。「活動への参与」は「適応感」(r=.57)「自己開示」(r=.53)と正の相関を示し,学校適応感を持っていることで,クラスでの活動に積極的に参加し,自己開示ができる可能性が示唆された。当日は適応感に影響を与える要因について重回帰分析を用いた結果についてもふれる。
参考文献
福井至・ 飯島政範・ 小山繭子・ 中山ひとみ ・ 小松智賀・小田美穂子 ・嶋田洋徳・坂野雄二(2009).GSESC-R 児童用一般性セルフ・エフィカシー尺度 こころネット株式会社.
星野命(1970). 感情の心理と教育(二)児童心理 , 24, 1445-1477.
Marsh, H.W.(1988) . Self-Description Questionnaire: A theoretical and empirical basis for the measurement of multiple dimensions of preadolescent self-concept: A test manual and a research monograph, New York: Psychological Corporation,.
山本真理子・松井豊・山成由紀子(1982). 認知された自己の諸側面 教育心理学研究, 30, 64-68