The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PB018] 工科系大学生の物理に対する学習意欲

入学に伴う物理に対する興味の変化とその規定因の探索的分析

市川洋子1, 轟木義一1 (千葉工業大学)

Keywords:物理, 意欲, 大学生

【目的】 本研究の目的は,工科系大学入学前後の,学生の物理に対する興味(好感度)の変化の把握,その変化を規定する要因の探索的検討を目的とした。なお,興味の指標は物理に対する好みの程度(以下,好感度と表記する)を用いた。
【方法】 対象:工科系大学で教養物理,物理学基礎,物理学実験を受講した主に1,2年生274名。大学入学前と現在の物理に対する好感度について5段階評定を求めた(それぞれ,非常に好きを5,非常に嫌いを1と設定した)。また,好感度が変容した場合にはそのきっかけについても記述を求めた。大学入学前と現在の物理に対する得意度についても同様に5段階評定(非常に得意を5,非常に不得意を1とした)と変容のきっかけについての記述を求めた。
【結果考察】①工科系大学生が抱いていた,大学入学前の物理に対する好感度:入学前の好感度の平均値は2。7(SD=1。2)であり,工科系大学生といっても,入学前の時点では物理に対する好感度は必ずしも高くはない。②入学後の好感度変容:大学入学後,教養の物理や物理学基礎,物理学実験と物理関連科目を履修してきた学生の物理に対する好感度の平均値は3。0(SD=1。1)であり,大学入学前と比較すれば有意に上昇していた(t=3。4, df=272,p<。01)。③大学入学前より物理を好きになったきっかけ:「内容理解」がきっかけとなる割合が一番高い。ただし,好感度を上昇させるには「実用性」「楽しさ」「実験」といったきっかけも無視できない。物理に対する好感度が上昇した学生100名を好感度上昇群,低下した学生64名を好感度低下群とし,それらの学生たちによって記述されていた変化のきっかけを8つのカテゴリーに分類した(実験・実用性・内容理解・取組・制度環境・楽しさ・教員友人・記述なし)。次に,群別に各カテゴリーに言及していた学生の人数の割合を検討した。その結果,好感度上昇群と低下群ともに,好感度変容のきっかけとしては「内容理解」を挙げる者の割合が一番高かった。ただし,低下群ではその割合が76。6%を占めていたものの,上昇群では「内容理解」はきっかけ全体の45。0%しか占めておらず,「実用性」(27。0%),「楽しさ」(11。0%),「実験」(9。0%)もかなりの割合を占めていた。物理に対する好感度の低下を防ぐだけなら内容理解だけに焦点を当てて指導すればよいと思われるが,好感度を上昇させるためには,「内容理解」だけでなく,「実用性」,「楽しさ」,「実験」といったことをきっかけとする学生もかなりの割合で存在しているため,そういった要因も無視できないことが示唆された。④物理が得意になると好きになるのか:物理に対する得意度と好感度との関連を検討した結果,大学入学に伴い得意度が上昇すると好感度も上昇していた(r=。74, p<。01)。どちらが原因か結果かといったことは本分析から明らかにはできないが,学生たちの変容のきっかけの記述内容は「問題が解けるようになったから(わかるようになったから)物理が好きになった」と書かれている場合が多く,その逆は非常に少なかった。そのことからも,学生の意識としては,「上手こそ物の好きなれ」であることが伺われた。⑤得意になること以外に物理を好きになる要因:少数ではあるが,得意度が上昇しても好感度が低下した学生,または得意度が低下しても好感度が上昇した学生に着目。得意度が上昇しても好感度が低下した学生ら(4名)は得意度の上昇のきっかけとして,期末試験等で点数がとれたことを理由として挙げていた。しかし,そこに至るまでのプロセスにおいて,「点数はとれても新しいことを学べたという充実感がない」または「辛さしか残らなかった」といったことがあり,好感度については低下したと記述していた。まとめると,得意になれば物理に対する好感度も上昇するといっても,得意になるという結果までのプロセスが充実していなければ好感度上昇にはつながらない可能性があることが示唆された。 次に,得意度が低下しても好感度が上昇した学生ら(6人)についてまとめると,大学入学前よりも得意ではなくなってしまったとしても,「実験や実用性,楽しさを感じられたから」,「前よりはわかってきたから」というのがその理由であった。6人の学生は得意度が低下したといっても全員1ポイントの低下であり,多少の得意度の低下であれば,実験の体験や実用性の認識が得られることで,または,得意という意識に至らなくても「わかってきた」という感覚が得られれば好感度上昇につながる可能性があることが示唆された。