[PB055] 不登校・不適応経験のある高校生の学校適応支援ニーズの把握に関する研究
ASIST学校適応スキルプロフィール・自記式シートの開発
Keywords:不登校, 特別な支援ニーズ, ASIST学校適応スキルプロフィール
問題と目的
小・中学校における不登校児童生徒数は約11万3千人にのぼるなど,学校不適応問題が頻繁に取り上げられている。そのような問題に対しては,指導を受けた児童生徒に自分の課題として受け止めさせ,問題がどこにあり,今後どのように行動すべきかを主体的に考え,行動につなげるようにする(文部科学省,2010)必要がある。そのためには自分の認識や感じ方を客観的に評価し,フィードバックすることが重要である。そのため,自分を振り返るツール(客観視),今の自分において学校生活全般を通して様々な領域から適応・不適応を自身で評価させることなどが重要である。比較的査定を行いやすい保護者や教師が評価する他者記入尺度であるASIST学校適応スキルプロフィール(橋本他,2014)が標準化されているものの,本人が評価する方がより正確なニーズをくみ取ることができると考えられる。そこで本研究では,不登校経験者が多く在籍する高校の生徒を対象に,本人が感じている特別な支援ニーズの実態を把握すると共に,自記式の特別な支援ニーズ尺度作成のための知見を得ることを目的とする。
方法
調査対象 東京都内にある不登校経験者や中途退学などをした生徒を積極的に受け入れる高等学校1校に在籍する高1生徒117名から協力を得られた。その中で欠損値のない108名(男子43名,女子65名)を分析対象とした。
調査時期 2013年10月に,ホームルーム内で一斉に実施した。
質問紙の構成 ASISTのうち,B尺度[特別な支援ニーズの把握]について,項目の意味内容が変わらないよう留意しながら高校生に理解可能な表現に変更して使用した。B尺度は10領域(学習[5],意欲[5],身体性・運動[4],集中力[5],こだわり[4],感覚の過敏さ[6],話し言葉[4],ひとりの世界・興味関心の偏り[6],多動性・衝動性[5],心気的な訴え・不調[6])計50項目からなり,得点が高いほど特別な支援ニーズが高いことを表す。
結果と考察
表1は各領域の平均得点および他者評定尺度であるASISTにおける要支援レベル(中長期的・全般的な支援が必要)(平均値+2SD)・要配慮レベル(短期的・一部の支援や配慮が必要)(平均値+1SD)のカットオフ値およびそのカットオフ値を本研究で適用した場合の適合割合である。本調査では,生徒本人が自身について回答している一方,ASISTにおけるカットオフ値は保護者や教師などの他者による評価であり,評価者が異なることに留意する必要があるが,本研究ではすべての領域において平均得点が要配慮レベルのカットオフ値を上回った。さらに,意欲領域,身体性・運動領域,こだわり領域,感覚の過敏さ領域,話し言葉領域,心気的な訴え・不調領域においては要支援レベルのカットオフ値も上回った。各領域の支援ニーズが高い値を示したことについて次の2つの可能性が考えられる。第一に,高校生は自己をある程度客体視できるようになり,自己と他者との差異が意識されやすいため(堀井,2002),過剰な評価をした可能性。2つめに,松井他(2012)が,不登校経験の影響が自信のなさや消極的な選択をせざるを得ないという形で現れる,また不登校が終了した後もそれまで抱えていた課題が解消されないまま,あるいはその課題が問題として顕在化しにくい環境の中で生活を送っている場合があると指摘したように,不登校を経験した生徒特有の支援ニーズの高さであることが挙げられる。これらの可能性を検証するために,今後は本人および保護者・教師による評価の一致率の検討や不登校経験のない生徒との比較を行う必要がある。
小・中学校における不登校児童生徒数は約11万3千人にのぼるなど,学校不適応問題が頻繁に取り上げられている。そのような問題に対しては,指導を受けた児童生徒に自分の課題として受け止めさせ,問題がどこにあり,今後どのように行動すべきかを主体的に考え,行動につなげるようにする(文部科学省,2010)必要がある。そのためには自分の認識や感じ方を客観的に評価し,フィードバックすることが重要である。そのため,自分を振り返るツール(客観視),今の自分において学校生活全般を通して様々な領域から適応・不適応を自身で評価させることなどが重要である。比較的査定を行いやすい保護者や教師が評価する他者記入尺度であるASIST学校適応スキルプロフィール(橋本他,2014)が標準化されているものの,本人が評価する方がより正確なニーズをくみ取ることができると考えられる。そこで本研究では,不登校経験者が多く在籍する高校の生徒を対象に,本人が感じている特別な支援ニーズの実態を把握すると共に,自記式の特別な支援ニーズ尺度作成のための知見を得ることを目的とする。
方法
調査対象 東京都内にある不登校経験者や中途退学などをした生徒を積極的に受け入れる高等学校1校に在籍する高1生徒117名から協力を得られた。その中で欠損値のない108名(男子43名,女子65名)を分析対象とした。
調査時期 2013年10月に,ホームルーム内で一斉に実施した。
質問紙の構成 ASISTのうち,B尺度[特別な支援ニーズの把握]について,項目の意味内容が変わらないよう留意しながら高校生に理解可能な表現に変更して使用した。B尺度は10領域(学習[5],意欲[5],身体性・運動[4],集中力[5],こだわり[4],感覚の過敏さ[6],話し言葉[4],ひとりの世界・興味関心の偏り[6],多動性・衝動性[5],心気的な訴え・不調[6])計50項目からなり,得点が高いほど特別な支援ニーズが高いことを表す。
結果と考察
表1は各領域の平均得点および他者評定尺度であるASISTにおける要支援レベル(中長期的・全般的な支援が必要)(平均値+2SD)・要配慮レベル(短期的・一部の支援や配慮が必要)(平均値+1SD)のカットオフ値およびそのカットオフ値を本研究で適用した場合の適合割合である。本調査では,生徒本人が自身について回答している一方,ASISTにおけるカットオフ値は保護者や教師などの他者による評価であり,評価者が異なることに留意する必要があるが,本研究ではすべての領域において平均得点が要配慮レベルのカットオフ値を上回った。さらに,意欲領域,身体性・運動領域,こだわり領域,感覚の過敏さ領域,話し言葉領域,心気的な訴え・不調領域においては要支援レベルのカットオフ値も上回った。各領域の支援ニーズが高い値を示したことについて次の2つの可能性が考えられる。第一に,高校生は自己をある程度客体視できるようになり,自己と他者との差異が意識されやすいため(堀井,2002),過剰な評価をした可能性。2つめに,松井他(2012)が,不登校経験の影響が自信のなさや消極的な選択をせざるを得ないという形で現れる,また不登校が終了した後もそれまで抱えていた課題が解消されないまま,あるいはその課題が問題として顕在化しにくい環境の中で生活を送っている場合があると指摘したように,不登校を経験した生徒特有の支援ニーズの高さであることが挙げられる。これらの可能性を検証するために,今後は本人および保護者・教師による評価の一致率の検討や不登校経験のない生徒との比較を行う必要がある。