日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB056] 児童期の食認識が大学生の共食に対する認識に及ぼす影響

櫻井登世子 (日本女子大学)

キーワード:児童期, 食認識, 共食

【問題と目的】
内閣府は、平成21年11月から12月にかけて、全国の20歳以上の者に対して、食に関する実態や意識について面接調査を行った。その結果、家族と一緒の食事を大切にする意識が高い者ほど人生に対して肯定的な捉え方をすることが示された。また、児童期に食習慣が身に付いていた者ほど大人になったときに食育への関心度が高いことが示唆された。本研究では、児童期の食認識が大学生の共食に対する認識に及ぼす影響を検討し、食の心理的役割について考察する。

【方 法】
調査協力者:神奈川県内の大学に通う大学生150名(男子73名、女子77名)。
質問紙:食に対する認識を調べるために、内閣府が作成した食に関する意識調査を使用した。児童期の食認識に関して回想法により「家では、食事が楽しく心地良かった」という質問項目に、<当てはまる、どちらかといえば当てはまる、どちらともいえない、どちらかといえば当てはまらない、当てはまらない>の5件法で回答を求めた。また、大学生の共食に対する認識は6項目について<とてもそう思う、そう思う、どちらともいえない、あまりそう思わない、全くそう思わない>の5件法で回答を求めた。
手続き:授業中に質問紙を配布し、学生の同意のもと集団で実施した。

【結果と考察】
児童期の食認識と大学生の共食に対する認識について2要因の分散分析を行ったところ、主効果と交互作用に有意差が見られた。交互作用に関して単純主効果の検定を行った結果、児童期に食事が楽しく心地良かったと感じていた者は、そう感じていなかった者より大学生になった現在、「家族と食事をするために自分のスケジュールを調整しようと思う」「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「家族と一緒に食事をすることは重要である」と思っていることが明らかになった。本研究の結果は、児童期の食認識が大学生の共食に対する認識に影響を及ぼすことを示している。櫻井(2013)は、大学生の共食に対する認識が共感性に影響を及ぼすことを明らかにしており、「家族と一緒に食事をすることは楽しい」と思う者は共感性が高かった。本研究の結果は、児童期に食事に対する良い認識を持つことが、人に対する共感性を育んでいくことと関係があるのではないかということを示唆している。今後食の認識について幼児期に焦点を当て「食」をアドホックカテゴリーという観点から検討することも必要なのではないか。