[PB061] いじめ観が罪悪感の予期と共感性を媒介にしていじめ加害行動に及ぼす影響
Keywords:いじめ, 罪悪感の予期, 共感性
本研究では，いじめ観が罪悪感の予期と共感性を媒介にしていじめ加害行動に及ぼす影響を検討することを目的にする。いじめを考える上で考慮しなければいけないのは，子どもが所属する学級集団の問題である。いじめ加害者の行動に，周囲の児童・生徒が影響を及ぼすことが明らかにされており（Gini, 2006），子どもが所属している学級集団の質が，いじめの側面に有形無形の影響を与えることが考えられる。本研究では，いじめ観が罪悪感の予期ならびに共感性を媒介にしていじめ加害行動に影響を及ぼすプロセスにおいて，学級集団の質によって違いが見られるのかどうかを探索的に検討することにした。
【方法】
調査対象者と手続き 公立小学校２校22クラス690名を調査対象とした。６月とその１ヶ月後の７月に実施した。
質問紙 (1) 加害経験と罪悪感：加害経験は，岡安・高山（2000）の３項目（“友だちと一緒になって，誰かを，仲間外れにしたり，無視したり，陰で悪口を言った”“友だちと一緒になって，誰かに，嫌がらせやいたずらをした（落書きをしたり，物をかくしたりした，など）”“友だちと一緒になって，誰かに，わざとぶつかたり，遊ぶふりをしてたたいたり，蹴ったりした”）を用いた。各質問に対して，この１ヶ月間の経験頻度を４段階で尋ねた。罪悪感は，大西他（2009）を参考にし，それぞれのいじめ加害経験の項目を尋ねた後に，もし，上記のことを自分がしたとしたら，悪いことをしたという気持ちがするかどうかを４段階で尋ねた。(2) 被害経験と共感性：被害経験は，岡安・高山（2000）の３項目（“誰かから，仲間外れにされたり，無視されたり，陰で悪口を言われた”“誰かから，嫌がらせやいたずらをされた（落書きをされたり，物をかくされた，など）”“誰かから，わざとぶつかられたり，遊ぶふりをしてたたかれたり，けられたりした”）を用いた。各質問に対して，この１ヶ月間の経験頻度を加害経験と同様の４段階で尋ねた。共感性は，それぞれのいじめ被害経験の項目を尋ねた後に，もし誰かから，上のことをされたら，嫌な気持ちがするかどうかを４段階で尋ねた。(3) いじめ観尺度：四辻・瀧野（2011）の大学生の“いじめ”に対する考え方の質問項目を修正したものを使用した。8項目，５段階で回答を求めた。(4) 学級集団の質の測定：図書文化社の「たのしい学校生活を送るためのアンケート（Q-U）」の“いごこちのよいクラスにするためのアンケート”を使用した。承認尺度6項目，被侵害尺度6項目の計12項目から構成される。４段階で回答を求めた。
【結果と考察】
「いじめ観尺度」の因子分析 因子分析（最尤法→プロマックス回転）の結果に基づき，“いじめ許容（α＝.82）”と“いじめ否定（α＝.70）”の２つの下位尺度を設定した。
学級集団の分類 承認尺度得点と被侵害尺度得点によって“学級生活満足群”に分類された児童のクラスにおける出現率の平均（55.94％）に基づいて， “学級満足度が高いクラス”と“学級満足度が低いクラス”に二分した。
因果モデルにおけるプロセスの検討 いじめ観が罪悪感の予期および共感性を媒介していじめ加害行動に影響を及ぼすという因果モデルを，最尤法による測定方程式モデルの推定によって群別に検討した。
学級満足度が高いクラス，低いクラスいずれにおいても，いじめ許容が罪悪感の予期（順に，β＝－.16, p＜.05；β＝－.34, p＜.01）および共感性（順に，β＝－.14, p＜.05；β＝－.20, p＜.01）に負の影響を及ぼしていた。また，学級満足度が低いクラスにおいては，いじめ否定が罪悪感の予期（β＝.18, p＜.01）および共感性（β＝.22, p＜.01）に正の影響を及ぼしていた。
罪悪感の予期および共感性がその後のいじめ加害行動に及ぼす影響については，学級満足度が高いクラスでは，共感性が“いやがらせやいたずら”に負の影響（β＝－.19, p＜.05）を及ぼしていた。学級満足度が低いクラスにおいては，罪悪感の予期が“仲間はずれ・無視・悪口”“いやがらせやいたずら”“たたかれたりけられたり”にそれぞれ負の影響を及ぼしていた（順に，β＝－.14, p＜.05；β＝－.17, p＜.01；β＝－.16, p＜.01）。
【方法】
調査対象者と手続き 公立小学校２校22クラス690名を調査対象とした。６月とその１ヶ月後の７月に実施した。
質問紙 (1) 加害経験と罪悪感：加害経験は，岡安・高山（2000）の３項目（“友だちと一緒になって，誰かを，仲間外れにしたり，無視したり，陰で悪口を言った”“友だちと一緒になって，誰かに，嫌がらせやいたずらをした（落書きをしたり，物をかくしたりした，など）”“友だちと一緒になって，誰かに，わざとぶつかたり，遊ぶふりをしてたたいたり，蹴ったりした”）を用いた。各質問に対して，この１ヶ月間の経験頻度を４段階で尋ねた。罪悪感は，大西他（2009）を参考にし，それぞれのいじめ加害経験の項目を尋ねた後に，もし，上記のことを自分がしたとしたら，悪いことをしたという気持ちがするかどうかを４段階で尋ねた。(2) 被害経験と共感性：被害経験は，岡安・高山（2000）の３項目（“誰かから，仲間外れにされたり，無視されたり，陰で悪口を言われた”“誰かから，嫌がらせやいたずらをされた（落書きをされたり，物をかくされた，など）”“誰かから，わざとぶつかられたり，遊ぶふりをしてたたかれたり，けられたりした”）を用いた。各質問に対して，この１ヶ月間の経験頻度を加害経験と同様の４段階で尋ねた。共感性は，それぞれのいじめ被害経験の項目を尋ねた後に，もし誰かから，上のことをされたら，嫌な気持ちがするかどうかを４段階で尋ねた。(3) いじめ観尺度：四辻・瀧野（2011）の大学生の“いじめ”に対する考え方の質問項目を修正したものを使用した。8項目，５段階で回答を求めた。(4) 学級集団の質の測定：図書文化社の「たのしい学校生活を送るためのアンケート（Q-U）」の“いごこちのよいクラスにするためのアンケート”を使用した。承認尺度6項目，被侵害尺度6項目の計12項目から構成される。４段階で回答を求めた。
【結果と考察】
「いじめ観尺度」の因子分析 因子分析（最尤法→プロマックス回転）の結果に基づき，“いじめ許容（α＝.82）”と“いじめ否定（α＝.70）”の２つの下位尺度を設定した。
学級集団の分類 承認尺度得点と被侵害尺度得点によって“学級生活満足群”に分類された児童のクラスにおける出現率の平均（55.94％）に基づいて， “学級満足度が高いクラス”と“学級満足度が低いクラス”に二分した。
因果モデルにおけるプロセスの検討 いじめ観が罪悪感の予期および共感性を媒介していじめ加害行動に影響を及ぼすという因果モデルを，最尤法による測定方程式モデルの推定によって群別に検討した。
学級満足度が高いクラス，低いクラスいずれにおいても，いじめ許容が罪悪感の予期（順に，β＝－.16, p＜.05；β＝－.34, p＜.01）および共感性（順に，β＝－.14, p＜.05；β＝－.20, p＜.01）に負の影響を及ぼしていた。また，学級満足度が低いクラスにおいては，いじめ否定が罪悪感の予期（β＝.18, p＜.01）および共感性（β＝.22, p＜.01）に正の影響を及ぼしていた。
罪悪感の予期および共感性がその後のいじめ加害行動に及ぼす影響については，学級満足度が高いクラスでは，共感性が“いやがらせやいたずら”に負の影響（β＝－.19, p＜.05）を及ぼしていた。学級満足度が低いクラスにおいては，罪悪感の予期が“仲間はずれ・無視・悪口”“いやがらせやいたずら”“たたかれたりけられたり”にそれぞれ負の影響を及ぼしていた（順に，β＝－.14, p＜.05；β＝－.17, p＜.01；β＝－.16, p＜.01）。