The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(501)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PB073] 教師志望学生の教師効力感と特性的自己効力感との関係

実習経験者と実習未経験者における効力感の比較

増田優子 (京都教育大学大学院)

Keywords:教師効力感, 特性的自己効力感, 教育実習

教師効力感と教師の資質能力の高さと正の関連があることが多くの研究で示されている。春原(2007)は,教育学部生が教育現場に出る際には,自分が実際の教育場面において望ましい教育的行為をとることができるという自信(教師効力感)が必要になることを指摘し,学級経営および対子ども関係に関する効力感を測定する尺度を作成している。
ところで,教師効力感の高い学生は,教育現場のみならず,具体的な個々の課題や状況に依存しない特性的自己効力感(成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田,1995)においての効力感も高いのであろうか。教師効力感の高い学生が特性的自己効力感も高いと仮定するならば,その学生は教師としての行動以外でも,状況に適した望ましい行為をとれる自信を高く持っていると想定できる。さらに,教師効力感は,教育実習の影響を受けると考えられるため,実習経験の有無による比較を行う。
方 法
対象者 関西の教育大学で,教育実習を経験した4回生及び大学院生56名(実習経験あり群,男性28名,女性28名)。教育実習が未経験の1回生から3回生36名(実習経験なし群,男性14名,女性22名)。
質問項目 調査で使用した尺度は,春原(2007)の教師効力感尺度(3因子)と,成田ら(1995)の「特性的自己効力感尺度」(1因子)いずれも4件法で質問した。
結果と考察
分析方法 教師効力感の3つの因子(学級管理・運営,教授・指導,子ども理解・関係形成)それぞれについて,中央値と度数の分布を基準に,高,中,低群に分類した。因子ごとに,高中低(3)×実習経験の有無(2)を独立変数,特性的自己効力感を従属変数とした分析を行った。以下,教師効力感の因子ごとに特性的自己効力感へ及ぼす影響について述べる。
因子1「学級管理・運営の効力感」の効果 実習経験の有無との間に交互作用がみられ,多重比較の結果,実習経験あり群では「学級管理・運営の効力感」の高/中/低の順で特性的自己効力感が高かった。他方,実習経験なし群では,「学級管理・運営の効力感」の高低により特性的自己効力感に有意な差はみられなかった(Figure 1)。
因子2「教授・指導の効力感」の効果 因子1の結果と同じく,実習経験の有無との間に交互作用がみられ,多重比較の結果,実習経験あり群では「教授・指導の効力感」の高/中/低の順で特性的自己効力感が高く,実習経験なし群では有意な差はみられなかった(Figure 2)。
因子3「子ども理解・関係形成の効力感」の効果 主効果が有意であり,特に教師効力感の高/低群で特性的自己効力感の高さが有意であった。実習経験の有無との間の交互作用は有意傾向のみみられた(Figure 3)。
まとめ 以上の結果から,実習経験あり群においては,教師効力感の高低と特性的自己効力感の高さとが関連していると考えられる。他方,実習経験なし群の学生の「学級管理・運営の効力感」「教授・指導の効力感」に対する効力感は,自己効力感とは関係のない仮想的な効力感であると推察される。よって,実習の経験によって, この二つの教師効力感と,特性的自己効力感における共通する認識が一致すると考えられる。しかし,教師効力感のうち,「子ども理解・関係形成の効力感」については,実習経験の有無によらず,いずれもそれらの高さが特性的自己効力感の高さと関連していた。この結果から,教師志望の学生にとって,子ども理解や関係形成における自信は,実習での子どもとの関わりを通して獲得されるというよりも,それまでの実際の経験に基づく効力感であると考えられる。