The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(501)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PB074] 劇遊びにおける物語づくり

物語を共有していく事例より

藤塚岳子 (東海学園大学)

Keywords:劇遊び, 物語づくり, 5歳児

問題と目的
5歳児が自発的な遊びの中で、仲間と物語を作り、物語を理解し共有し演じていく行動の意味を明らかにしていく。秋田(1997)、内田(1996)の先攻研究にあるように幼児の因果関係の理解と因果的作話が密接な関係があることを提示している。今回5歳児(後半)が上記の関係をどのような手段・方法で作話し物語を共有していくかを事例分析することで検討してみる。
方法
対象:三重県桑名市T幼稚園(男児12人、女児14人)
方法:筆者が担任していた(昭和63年)の事例分析
分析視点:①自他の行動モニター(子どもが記憶した物語に再構成と他者に対する点検②役割理解の調整③虚構性の理解(自分自身の行動が虚構上のものと意識している)古谷(1987)を参考に分析する。
結果と考察
5歳児後半 <1月12日>
お面を作り遊んでいたが「何が何かさっぱりわからん。前みたいにお話作っていけばええ」とK友が画用紙に書いていく。4人の子どもが会話しながら作話していく。
1の画面
朝になった。天気だった。お散歩に行った。遊んで帰ってきた。①赤ちゃんがいなかった。皆で探しに行った。皆で探しにいった。②それでもいなかった。臭いを嗅いで探した。でもいなかった。
2の画面
「森の中に入っていったかな」と③お母さんが言った。お父さんが森の中を探ったら④赤ちゃんを探した。そしたら、木に登っていた。お父さんが助けた。足を怪我して折っていた。⑤お父さんがおんぶして連れていった。お家に急いで帰っていった。⑥「お母さーん」と言った。お家に急いで帰った。お母さんが塗ってあげた。「立つときは呼びなさい」とお母さんが言った。⑦犬病院へ行って治してもらった。
3の画面
薬をもらって帰っていった。1週間で治った。⑧ついでに遊園地に行った。犬用ジェットコースターで遊んだ。怖いって赤ちゃんが泣いた。お父さんに抱っこしてもらった。「夕方だから帰ろ」「お父さん何か買って」「僕ポップコーンがいい」お父さんが「いいよ」と言ってくれた。「子どもはポテトフライがいい」「びっくりまんチョコ」「新幹線のおもちゃがほしい」お父さんはファミコンを買った。
4に続く
次に4人の仲間で作話していくプロセスを表していく。
M子「夜寝てからでしょ。誰と寝る?」U也「2人ずつで寝る?お母さんは?」K友「お母さんは子どもとお父さんと」M子「赤ちゃんは?お父さんは子どもとも寝るよ」
A子「ねえ。名前決めようよ」と提案すると、「ぽち・じろ・たま」と順に言う。その間に①の部分を書いていく。U也「仲間の臭いが嗅げるよ」(犬は臭いを嗅ぐことが出来るのにおかしいという意味を②と書いたK友に伝えている。U也「臭いでわかるよ」(犬を客観的に捉え、因果関係を理解している)
A子「1番お母さんが悲しいよね。生んだんだもの」「お母さんが言ったのね。1番心配してるから」(迷子になった状況をお母さんの立場になり意識。虚構であることの理解と現実的捉え)
M子「違う赤ちゃんだったのね」と④で自分の赤ちゃん役を重ね合わせ別の役を想定させる。
M子「でも、怪我していたの。」K友「前足折れていた」
U也「歩けないよ」M子「お父さんがおんぶしていったの。抱っこでもいい」と⑤の場面が作話されていく。
⑥の場面でK友は「誰が言うの?(セリフを想定して誰が言うのか先を考えている)
A子「骨が折れると犬病院へいくよ。1日で治る?」と聞くとM子「嘘だから。3本足で行けば?」との会話に。U也は「だっておしっこするとき犬って3本で立っているもの」。A子とM子「あっそうか」「おしっこするときそうね。面白い」「薬ね」「1週間で治るよ」と⑦の状況は現実の生活から共有していく。U也が「もう終わり?」と聞く。K友は「まだまだ」とお話作りを続けていくことを伝える。U也が「ついでに遊園地に行った」と言うとM子が「病院のついでになんておかしいよ」と言うので消すことにする。(⑧ついでに文字を鉛筆で棒線をひく。客観的なストーリ作りである)。ここで「このへんで続きにしておこうよ。時間がなくなるといけないから」と言う。その後積木で場面を構成していく。
*<演じる場面の事例は発表時に持参>
以上から分析視点よりまとめる。
①自他の行動モニターは、K友が作話していくが、仲間で会話を交わしながら物語を確認しながら構成することで共有していく。因果関係の理解が可能であることが分かる。
②作話段階での虚構関係は、役割認識と実際に演じる現実関係による調整は、仲間とその都度具体的に解決していく。
③散歩に行く行為や赤ちゃんがいなくなる虚構場面で、演じる舞台空間で第3者に現実的にどう表現するか、また共同で意見を出し合い実現しようとする。
*引用文献:古谷喜美代「幼児の劇遊びにおける意識的調整の発達的研究、教育心理学研究第35巻 第4号