[PB081] 女子大学生の自立と将来適応感に母親及び父親との心理的距離が与える効果
キーワード:女子大学生の自立, 将来適応感, 母親・父親との心理的距離
成人への移行期にある女子大学生にとって,精神的に「自立」し,将来の自己の姿を適切・肯定的にイメージできること(「将来適応感」)は,重要な発達課題となる。これを進める要因の一つとして,親からの「分離」の重要性が従来指摘されてきた。例えば,母との距離が過剰に近いなどの分離の低さが,娘の自立の遅れや不適応の背景にあると指摘する研究も多い(例えば,渡邊,1997)。しかし近年,愛着や親密さといった「結合」の重要性を指摘する研究も出ている。水本・山根 (2010)は,母との強い結びつきの下,娘は距離の近さを保ちながら自立を高め,現実適応もよいことを見出している。こうした論争の中,分離と結合の両側面の効果を認めて相互作用を想定する統合的モデル論も現れている(平石,2014)。この論に従えば, 女子大学生の自立と将来への適応感には,母への心理的距離が「中程度」にあることが,最も効果的であろうと予測される。また従来青年後期の娘の父との結びつきは弱いとされ,自立や適応との関係はそれほど注目されてこなかった。しかし父についても友達親子現象が指摘される昨今,母と同様な心理的距離の効果も予測されよう。本研究はこれらの予測の検討を質問紙調査により行うが,質的検討の視点から,母や父との日頃についての娘の「イメージ画」(やまだ,1988)の分析も加えた。
方 法
調査対象・調査時期:女子大学生74名。2012年。
調査内容: ①母子密着尺度(藤田, 2003)一部変更30項目,②自立性尺度(菱田ら,2009)27項目,③適応性尺度(大久保,2005)一部変更29項目,④母や父との日頃についてのイメージ画。
結果と考察
1.親との心理的距離と女子大学生の自立
女子大学生の自立得点(Figure 1)について,親との心理的距離(L:近,M:中程度,H:遠)及び親(母,父)の2要因分散分析を行った。距離の主効果のみ有意(F(2,71)=3.63,p <.05)であり,多重比較の結果,親との距離が近いL群は遠いH群より有意に高い自立を示した。L群のイメージ画では,親との親密性を示唆する絵が多く見られた。
2.親との心理的距離と女子大学生の将来適応感
女子大学生の将来適応感得点(Figure 2)について,親との心理的距離(L,M,H)及び親(母,父)の2要因分散分析を行った。距離の主効果のみ有意(F(2,71)=4.63,p<.05)であり,多重比較の結果, L群はH群より有意に高い将来適応感を示した。
以上1と2で父母ともに,心理的距離が「中程度」ではなく「近い」場合に,高い効果性が見出された。この結果は,「結合」による効果を見出した水本ら(2010)に近く, 統合的モデル論に与するものではなかった。 (付記:資料に関しては,安田女子大学文学部卒業生中野あずさ氏の協力を得た)
方 法
調査対象・調査時期:女子大学生74名。2012年。
調査内容: ①母子密着尺度(藤田, 2003)一部変更30項目,②自立性尺度(菱田ら,2009)27項目,③適応性尺度(大久保,2005)一部変更29項目,④母や父との日頃についてのイメージ画。
結果と考察
1.親との心理的距離と女子大学生の自立
女子大学生の自立得点(Figure 1)について,親との心理的距離(L:近,M:中程度,H:遠)及び親(母,父)の2要因分散分析を行った。距離の主効果のみ有意(F(2,71)=3.63,p <.05)であり,多重比較の結果,親との距離が近いL群は遠いH群より有意に高い自立を示した。L群のイメージ画では,親との親密性を示唆する絵が多く見られた。
2.親との心理的距離と女子大学生の将来適応感
女子大学生の将来適応感得点(Figure 2)について,親との心理的距離(L,M,H)及び親(母,父)の2要因分散分析を行った。距離の主効果のみ有意(F(2,71)=4.63,p<.05)であり,多重比較の結果, L群はH群より有意に高い将来適応感を示した。
以上1と2で父母ともに,心理的距離が「中程度」ではなく「近い」場合に,高い効果性が見出された。この結果は,「結合」による効果を見出した水本ら(2010)に近く, 統合的モデル論に与するものではなかった。 (付記:資料に関しては,安田女子大学文学部卒業生中野あずさ氏の協力を得た)