[PB082] 将来の特性を規定する要因に関する大学生の認識
付与された情報の影響についての検討
キーワード:特性理解, 推論, 大学生
問題・目的
人間の特性の起源や将来の変容可能性に関する子どもの理解について,幼児や小学校低学年では特性の起源として1つの要因を重視する傾向があること(向井・丸野, 2004; 布施, 2011,2013),幼児は望ましくない特性は変えられるという楽観主義を持っており,小学生になると努力依存の楽観主義へ変化していくこと(中島・稲垣, 2007)などが明らかにされてきた。同様に,小学校高学年ごろから将来の特性を規定する要因として,本人の意思や努力が重視されるようになることが確認されている(布施, 2008 他)。また,布施(2014)では,大学生が将来の特性を規定する要因をどのように捉えているかを検討した。その結果,身体的特性や心理的特性という特性の違いによって,異なる要因が重視されることが明らかとなった。また,他の特性について与えられた情報が当該特性の推測に影響する可能性も示された。そこで本研究では,将来の特性を予測する際に,現在の環境や身近な人についてポジティブな情報を与えた場合とネガティブな情報を与えた場合に,情報の方向性が異なる影響を及ぼすのかについて検討する。
方法
調査対象者 都内の私立大学の学生238名(男性130名,女性108名,平均年齢19.97歳)。参加者を3グループに分け,それぞれ異なる課題を提示した。
調査内容 現在持っているネガティブな特性を変えたいと思っている子どもが,大人になった時その特性を思うように変えられるかどうかを尋ねた。また,その理由についての記述を求めた。取り上げた特性は,身体的特性,心理的特性,社会的特性である。その際,①現在の特性のみを紹介する(情報なし)課題,②現在の特性と現在のポジティブな環境に関する情報を付与した課題,③現在の特性と同様環境もネガティブである情報を付与した課題の3種類の課題を用意した。
手続き 大学の授業時間の一部を用い,質問紙による一斉調査を行った。実施時期:2014年1月。
結果・考察
「将来希望するように特性を変えられるか」の質問に対する回答の理由づけについて,①内的要因(現在の特性),②外的要因(親や環境の影響など),③両方(内的要因と外的要因要の両方に言及),④意志・努力(本人の努力や思いによって変えられるという理由づけ),⑤変化可能性(発達や成長の過程で変わっていくという理由づけ)の5カテゴリに分類した。個人的経験に基づく理由づけなどのように,上記いずれにも当てはまらないものは「その他」とした。取り上げた特性のうち,身体的特性の「運動能力」と「身長」に関する将来の推論の理由づけをFigure 1に示す。
理由づけのカテゴリの出現率に差異がみられるのかを検討した結果,身体的特性(運動能力)では,情報なし群では,他の群に比べて内的要因と意志・努力が多いこと,ポジティブな情報を与えた群では,他の群よりも両方が多く,意志・努力が少ない子とが得られた(χ2(8)= 75.018, p<.01)。一方,身体的特性(身長)では,両方の要因に言及した調査対象者はいずれに群でもおらず,意志・努力に対する言及も情報なし群のみに少数見られただけであった。情報なし群は,他の群に比べて意志・努力や変化可能性の理由づけが多く,情報を与えられた群はいずれも外的要因による理由づけが多いことが示された(χ2(6)= 47.640, p<.01)。同じ身体的特性であっても重視される要因が異なり,付加情報の影響も異なる可能性が示唆された。
※本研究はJSPS 科研費【課題番号23730629】の助成を受けた。
人間の特性の起源や将来の変容可能性に関する子どもの理解について,幼児や小学校低学年では特性の起源として1つの要因を重視する傾向があること(向井・丸野, 2004; 布施, 2011,2013),幼児は望ましくない特性は変えられるという楽観主義を持っており,小学生になると努力依存の楽観主義へ変化していくこと(中島・稲垣, 2007)などが明らかにされてきた。同様に,小学校高学年ごろから将来の特性を規定する要因として,本人の意思や努力が重視されるようになることが確認されている(布施, 2008 他)。また,布施(2014)では,大学生が将来の特性を規定する要因をどのように捉えているかを検討した。その結果,身体的特性や心理的特性という特性の違いによって,異なる要因が重視されることが明らかとなった。また,他の特性について与えられた情報が当該特性の推測に影響する可能性も示された。そこで本研究では,将来の特性を予測する際に,現在の環境や身近な人についてポジティブな情報を与えた場合とネガティブな情報を与えた場合に,情報の方向性が異なる影響を及ぼすのかについて検討する。
方法
調査対象者 都内の私立大学の学生238名(男性130名,女性108名,平均年齢19.97歳)。参加者を3グループに分け,それぞれ異なる課題を提示した。
調査内容 現在持っているネガティブな特性を変えたいと思っている子どもが,大人になった時その特性を思うように変えられるかどうかを尋ねた。また,その理由についての記述を求めた。取り上げた特性は,身体的特性,心理的特性,社会的特性である。その際,①現在の特性のみを紹介する(情報なし)課題,②現在の特性と現在のポジティブな環境に関する情報を付与した課題,③現在の特性と同様環境もネガティブである情報を付与した課題の3種類の課題を用意した。
手続き 大学の授業時間の一部を用い,質問紙による一斉調査を行った。実施時期:2014年1月。
結果・考察
「将来希望するように特性を変えられるか」の質問に対する回答の理由づけについて,①内的要因(現在の特性),②外的要因(親や環境の影響など),③両方(内的要因と外的要因要の両方に言及),④意志・努力(本人の努力や思いによって変えられるという理由づけ),⑤変化可能性(発達や成長の過程で変わっていくという理由づけ)の5カテゴリに分類した。個人的経験に基づく理由づけなどのように,上記いずれにも当てはまらないものは「その他」とした。取り上げた特性のうち,身体的特性の「運動能力」と「身長」に関する将来の推論の理由づけをFigure 1に示す。
理由づけのカテゴリの出現率に差異がみられるのかを検討した結果,身体的特性(運動能力)では,情報なし群では,他の群に比べて内的要因と意志・努力が多いこと,ポジティブな情報を与えた群では,他の群よりも両方が多く,意志・努力が少ない子とが得られた(χ2(8)= 75.018, p<.01)。一方,身体的特性(身長)では,両方の要因に言及した調査対象者はいずれに群でもおらず,意志・努力に対する言及も情報なし群のみに少数見られただけであった。情報なし群は,他の群に比べて意志・努力や変化可能性の理由づけが多く,情報を与えられた群はいずれも外的要因による理由づけが多いことが示された(χ2(6)= 47.640, p<.01)。同じ身体的特性であっても重視される要因が異なり,付加情報の影響も異なる可能性が示唆された。
※本研究はJSPS 科研費【課題番号23730629】の助成を受けた。