[PB090] 小学校1年生のリテラシーに及ぼす家庭の文字環境の影響(2)
児童期の文字環境の検討
キーワード:リテラシー, 小学校1年生, 文字環境
目 的
多くの幼児は,小学校入学前にさまざまな教育を通じて文字環境にアクセスしており,多くの幼児には小学校入学前の段階において読み書きへの「学びの芽生え」が生じていると推測される。そこで,本研究では,幼児期の家庭における読み聞かせの差異が現在の児童の読書習慣や生活習慣にどのような影響を及ぼすのか検討する。さらに,現在の児童の読書習慣や生活習慣が小学校入学後のリテラシーにいかなる影響を及ぼすのかについて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:福島県と広島県内の小学校15校の1年生児童とその保護者を対象とし,保護者と児童のデータがそろっている597組を本研究の分析に用いた。児童の性別は,男児292名,女児305名,保護者の年齢は25歳~60歳であった。
調査時期:2014年1月~3月
調査手続き:①児童用読み書き検査:保護者用アンケートとともに調査協力校に郵送し,担任がクラスごとに実施した。検査は,大阪医科大学奥村研究グループが作成した包括的領域読み能力検査(CARD)の短縮版を使用した。検査の内容は,「言葉さがし」「聞き取り」「音しらべ」「文の読み①」である。
②家庭の文字環境についての調査:調査内容は,幼児期の文字環境や生活環境,児童期の文字環境や生活環境,保護者自身の読書行動であった。
結果と考察
(1)幼児期の読み聞かせと現在の読み聞かせや児童の読書・生活習慣との関連
幼児期の読み聞かせと現在の読み聞かせや児童の読書習慣および生活習慣との関連をみるために,Pearsonの相関係数を算出した。その結果,幼児期の読み聞かせの程度は,現在の読み聞かせと正の相関があり,児童の読書習慣との間にも正の相
関があった。また,子どもの生活習慣については,テレビ視聴やテレビゲームでの遊びとの間に負の相関がみられた。これらのことから,幼児期の読み聞かせが小学校入学後の読書習慣によい影響を与える可能性が示唆された。
(2)現在の児童の読書・生活習慣と児童のリテラシーとの関連
現在の児童の読書習慣および生活習慣と児童のリテラシーとの関連を検討するために,リテラシーの下位検査である「言葉さがし」「聞き取り」「音しらべ」「文の読み①」のそれぞれの得点について平均以上をH群,平均未満をL群とし,H・L群によって現在の児童期の読書習慣や生活習慣に違いがみられるかをt検定によって分析した(Table 1)。その結果,「聞き取り」では,現在の読書頻度および読書時間はH群がL群よりも有意に高く,反対に,テレビ視聴やテレビゲームはH群がL群よりも有意に低かった。「音しらべ」では,現在の読書頻度および読書時間がH群がL群よりも有意に高かった。「文の読み①」では,現在の読書頻度および読書時間,テレビ視聴頻度はH群がL群よりも有意に高かった。これらの結果から,音を聞き取り文字を認識する力や音声と文字情報を一致させる力を調べる「聞き取り」検査の得点が高い子どもは,低い子どもに比べて,小学校入学後に読書をする頻度や時間が長いことが明らかになった。さらに,幼児期の読み聞かせと現在の子どもの読書習慣との間に正の相関があることから,幼児期の読み聞かせは現在の子どもの読書習慣に影響を与え,そのことが児童期のリテラシー(聞き取り,音しらべ,文の読み)に影響を与える可能性があることが示唆された。
本研究は,科学研究費補助金基盤研究(C)「小学校1年生の読み書き能力に関する幼児教育環境の検討(25350942)代表:白川佳子」の助成を受けたものである。
多くの幼児は,小学校入学前にさまざまな教育を通じて文字環境にアクセスしており,多くの幼児には小学校入学前の段階において読み書きへの「学びの芽生え」が生じていると推測される。そこで,本研究では,幼児期の家庭における読み聞かせの差異が現在の児童の読書習慣や生活習慣にどのような影響を及ぼすのか検討する。さらに,現在の児童の読書習慣や生活習慣が小学校入学後のリテラシーにいかなる影響を及ぼすのかについて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:福島県と広島県内の小学校15校の1年生児童とその保護者を対象とし,保護者と児童のデータがそろっている597組を本研究の分析に用いた。児童の性別は,男児292名,女児305名,保護者の年齢は25歳~60歳であった。
調査時期:2014年1月~3月
調査手続き:①児童用読み書き検査:保護者用アンケートとともに調査協力校に郵送し,担任がクラスごとに実施した。検査は,大阪医科大学奥村研究グループが作成した包括的領域読み能力検査(CARD)の短縮版を使用した。検査の内容は,「言葉さがし」「聞き取り」「音しらべ」「文の読み①」である。
②家庭の文字環境についての調査:調査内容は,幼児期の文字環境や生活環境,児童期の文字環境や生活環境,保護者自身の読書行動であった。
結果と考察
(1)幼児期の読み聞かせと現在の読み聞かせや児童の読書・生活習慣との関連
幼児期の読み聞かせと現在の読み聞かせや児童の読書習慣および生活習慣との関連をみるために,Pearsonの相関係数を算出した。その結果,幼児期の読み聞かせの程度は,現在の読み聞かせと正の相関があり,児童の読書習慣との間にも正の相
関があった。また,子どもの生活習慣については,テレビ視聴やテレビゲームでの遊びとの間に負の相関がみられた。これらのことから,幼児期の読み聞かせが小学校入学後の読書習慣によい影響を与える可能性が示唆された。
(2)現在の児童の読書・生活習慣と児童のリテラシーとの関連
現在の児童の読書習慣および生活習慣と児童のリテラシーとの関連を検討するために,リテラシーの下位検査である「言葉さがし」「聞き取り」「音しらべ」「文の読み①」のそれぞれの得点について平均以上をH群,平均未満をL群とし,H・L群によって現在の児童期の読書習慣や生活習慣に違いがみられるかをt検定によって分析した(Table 1)。その結果,「聞き取り」では,現在の読書頻度および読書時間はH群がL群よりも有意に高く,反対に,テレビ視聴やテレビゲームはH群がL群よりも有意に低かった。「音しらべ」では,現在の読書頻度および読書時間がH群がL群よりも有意に高かった。「文の読み①」では,現在の読書頻度および読書時間,テレビ視聴頻度はH群がL群よりも有意に高かった。これらの結果から,音を聞き取り文字を認識する力や音声と文字情報を一致させる力を調べる「聞き取り」検査の得点が高い子どもは,低い子どもに比べて,小学校入学後に読書をする頻度や時間が長いことが明らかになった。さらに,幼児期の読み聞かせと現在の子どもの読書習慣との間に正の相関があることから,幼児期の読み聞かせは現在の子どもの読書習慣に影響を与え,そのことが児童期のリテラシー(聞き取り,音しらべ,文の読み)に影響を与える可能性があることが示唆された。
本研究は,科学研究費補助金基盤研究(C)「小学校1年生の読み書き能力に関する幼児教育環境の検討(25350942)代表:白川佳子」の助成を受けたものである。