[PB095] 感情音声の理解と表出の発達過程に関する研究
キーワード:感情, 音声, 発達
1.問題と目的
音声は,言語情報のみならず,発話者の意図や感情などの情報も伝達している。このような情報の伝達には,声の高さや強弱,イントネーションなど超分節的特徴(プロソディ)が関与する。音声による感情や意図の伝達は,円滑なコミュニケーションにおいて重要な要素の一つである。
音声により他者の感情や意図を理解し,自身の感情や意図を表出することは,幼児期から段階的に発達し,また理解面と表出面は相互に関与すると考えられる。
そこで本研究では,無意味語を用いて,音声による感情理解課題,感情表出課題,感情摸倣課題を実施して,定型発達児における感情音声の理解と表出の発達過程を検討する。本発表では,感情理解課題および感情表出課題の結果について,報告する。
2.方法
対象: 5歳児3名,7歳児4名
感情:喜び,怒り,悲しみ,驚き,平静の5感情を対象とした。材料として、5感情を表した表情図と刺激音声を作成した。刺激音声は,成人女性が各感情を込めて無意味語(まなまな/manamana/)を発話した音声を録音し,20刺激(5感情×4刺激)作成した。
手続き:実験は個別に実施した。対象児には,ヘッドセットマイクを装着し,レコーダーにより音声を録音した。課題前に,表情絵を提示して5感情を理解していることを確認したのち無意味語の発声練習を行い,表出課題,模倣課題,理解課題の順に実施した。
表出課題:表情図を示しながら感情を込めて「まなまな」と発話するよう教示した。各感情1度ずつ発話した後,感情表出ゲームを行った。感情表出ゲームは,実験者が対象児の表情が見えない状態で音声を聴取し,どの感情による発話であったか推測するものであった。対象児に,表情絵カードを5枚提示し,その中から1枚選択し,感情を込めて無意味語を発話するように求めた。これを全ての感情行った。
模倣課題:刺激音声をランダムに提示し,音声提示後に模倣するよう教示した。全20試行実施した。
理解課題:刺激音声をランダムに提示し,音声提示後にどの感情が込められた音声であったか、表情図の指さしにより回答を求めた。全40試行実施した。
結果の処理方法:感情表出課題において収録した音声は,聴覚評価により,話者の意図した感情と聴覚印象が一致した場合1点として得点化した。感情理解課題では,刺激音声の感情と対象児が選択した感情が一致した場合1点として得点化した。
3.結果
3歳児1名において,表出課題の実施が困難であったため中断し,摸倣課題,理解課題のみ実施した。その他の対象は、全ての課題を終了した。感情表出課題において,聴覚印象と発話者の意図が一致した音声の割合は,5歳児(20サンプル)が25%,7歳児(40サンプル)が45%であった。感情理解課題において,怒りおよび悲しみ音声は全ての対象児が正答し,感情によって差が見られた(Fig.1)。
4.考察
音声による感情理解については,感情によっては5歳時期において既に理解可能であると考えられる。また、感情表出は理解課題に比べ個人差が大きく、7歳児でも未成熟であることが推察された。また,感情理解課題,感情表出課題ともに,感情による差が見られた。
今回は対象が少ないため,今後対象者を増やし引き続き検討を行う必要がある。
音声は,言語情報のみならず,発話者の意図や感情などの情報も伝達している。このような情報の伝達には,声の高さや強弱,イントネーションなど超分節的特徴(プロソディ)が関与する。音声による感情や意図の伝達は,円滑なコミュニケーションにおいて重要な要素の一つである。
音声により他者の感情や意図を理解し,自身の感情や意図を表出することは,幼児期から段階的に発達し,また理解面と表出面は相互に関与すると考えられる。
そこで本研究では,無意味語を用いて,音声による感情理解課題,感情表出課題,感情摸倣課題を実施して,定型発達児における感情音声の理解と表出の発達過程を検討する。本発表では,感情理解課題および感情表出課題の結果について,報告する。
2.方法
対象: 5歳児3名,7歳児4名
感情:喜び,怒り,悲しみ,驚き,平静の5感情を対象とした。材料として、5感情を表した表情図と刺激音声を作成した。刺激音声は,成人女性が各感情を込めて無意味語(まなまな/manamana/)を発話した音声を録音し,20刺激(5感情×4刺激)作成した。
手続き:実験は個別に実施した。対象児には,ヘッドセットマイクを装着し,レコーダーにより音声を録音した。課題前に,表情絵を提示して5感情を理解していることを確認したのち無意味語の発声練習を行い,表出課題,模倣課題,理解課題の順に実施した。
表出課題:表情図を示しながら感情を込めて「まなまな」と発話するよう教示した。各感情1度ずつ発話した後,感情表出ゲームを行った。感情表出ゲームは,実験者が対象児の表情が見えない状態で音声を聴取し,どの感情による発話であったか推測するものであった。対象児に,表情絵カードを5枚提示し,その中から1枚選択し,感情を込めて無意味語を発話するように求めた。これを全ての感情行った。
模倣課題:刺激音声をランダムに提示し,音声提示後に模倣するよう教示した。全20試行実施した。
理解課題:刺激音声をランダムに提示し,音声提示後にどの感情が込められた音声であったか、表情図の指さしにより回答を求めた。全40試行実施した。
結果の処理方法:感情表出課題において収録した音声は,聴覚評価により,話者の意図した感情と聴覚印象が一致した場合1点として得点化した。感情理解課題では,刺激音声の感情と対象児が選択した感情が一致した場合1点として得点化した。
3.結果
3歳児1名において,表出課題の実施が困難であったため中断し,摸倣課題,理解課題のみ実施した。その他の対象は、全ての課題を終了した。感情表出課題において,聴覚印象と発話者の意図が一致した音声の割合は,5歳児(20サンプル)が25%,7歳児(40サンプル)が45%であった。感情理解課題において,怒りおよび悲しみ音声は全ての対象児が正答し,感情によって差が見られた(Fig.1)。
4.考察
音声による感情理解については,感情によっては5歳時期において既に理解可能であると考えられる。また、感情表出は理解課題に比べ個人差が大きく、7歳児でも未成熟であることが推察された。また,感情理解課題,感情表出課題ともに,感情による差が見られた。
今回は対象が少ないため,今後対象者を増やし引き続き検討を行う必要がある。