The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC001] 私たちは,どのように折り紙を折っているのか?(8)

立体的変形プロセスの分析

丸山真名美 (至学館大学)

Keywords:折り紙, 変形イメージ, 動作イメージ

問題と目的
私たちは,多くの場合,「折り図」を見たり,直接教えてもらったりすることで作品の折り方を身につける。しかし,折り紙知識や経験が増し,熟達するにつれて、出来上がりの作品をみて、一枚の折り紙から作品を作りあげることができるようになる。この時、完成形に到達するためには,どのように折り紙を変形させれば良いか,立体的な変形イメージを形成することが必要となる。
本研究では,どのように変形させるのかという情報がない場面において,折り紙をどのように変形させているのかというプロセスの検討を目的とする。

方法
実験協力者:女性1名,21歳。大学4年生(保育士・幼稚園教諭・小学校教諭養成課程に在籍)。
折り紙に関しては,いろいろな折り方を知っており,「折り図」をみて難易度の高い作品を作成することができる。折り紙経験・知識ともに豊富であると考えられる。
課題:変形プロセスを検討するために,「奴さん変形課題」を行った。この課題は,通常の奴さんの顔は,腕・足・胴と同じ色だが,その状態から顔だけを白い奴さんに変形させるものである(図1)。課題終了後に、どのように考えながら折ったかについて説明を求めた。あわせて,認知的な能力も把握するために,空間認知能力を測定する「京大NX15の折り紙パンチ」とイメージ能力を測定するために,[VVQI」を実施した。
手続き:「VVQI」「折り紙パンチ」「奴さん変形課題」の順に行った。
「奴さん変形課題」については,折り紙を操作する手元をデジタルビデオカメラにて撮影した。

結果と考察
まず,「京大NX15の折り紙パンチ」の成績は,12問中7問正解であった。「VVQI」は,16点から80点の得点範囲であり,点数が低いほどイメージ能力が優れていることを示す。実験協力者の得点は,41点であった。
「奴さん変形課題」は,2段階にプロセスを区分できる。この課題では,通常の奴さんを折ることから開始し完成したら,顔の白い奴さんを見本として提示し,協力者が折った奴さんを見本と同じようにするように教示した。まずは,見本に触らず見るだけの段階であり,次に触っても良い段階の2段階に変形過程を分けて結果を示す。
<見本を見るだけの段階>
所要時間:8分48秒。
白い部分が表面になるように,奴さんの基本的な折り方をするが,うまくいかず元の奴さんに折りなおすことを繰り返した。その後,顔だけを白くすることができたが,腕の部分を作ることができなかった。
<見本を触わって考える段階>
所要時間:2分12秒
見本の白い顔の部分の裏面をみて、少し考える。その部分を少し崩し,どのように折られているか確認し,顔を白くしつつも腕がきちんと形になるように折った。
<課題終了後の説明>
顔が白いから,どこかをひっくり返すことはすぐにわかった。顔のところを白くすることはできたが,腕の部分を折ることができなかった。見本を少し崩してみたら,腕は折り紙を折り込むことでできることがわかった。見本と同じにするにはどのように折ればいいか見通しを持つことができた。
以上から,「ひっくり返す」ことはすぐに理解されたが、腕がどのような構造になっているかイメージすることが困難であったことがわかる。また,見本を崩しどのように折られているか分かったら,腕を作る構造が理解され,どこがどのようになるのかイメージできることが示された。したがって,立体の構造を心的に形成し、変形イメージを形成することが重要な要因となることが示唆される。


本研究は、科学研究費基盤研究C(H24~H26年度、研究代表者:丸山真名美、課題番号24530840の助成を受けて行われたものです