[PC008] eラーニング上の学習者同士の繋がる仕組みによって学習を回避してしまう者の特徴
キーワード:eラーニング, 繋がる仕組み, 学習量
問題と目的
継続の難しい一問一答式のeラーニングシステムに対し,オンライン人数表示機能などから構成される学習者同士の繋がる仕組みをとり入れることが,学習量の減少を抑制することが明らかになっている(澤山・寺澤,2014a)。一方,学習開始から1~2週間程度は,繋がる仕組みを稼働させる「繋がり学習条件」は,稼働させない「単独学習条件」よりも学習量が少ない傾向にあることも示唆され始めている(澤山・寺澤,2014b)。
本研究では,この実験データについて,特に繋がり学習条件の学習回避が目立った前半学習量を指標とした検討を探索的に行う。具体的には,実験開始前に予備調査で問うた,eラーニングに対する動機づけ等を測る項目への回答結果を独立変数とし,前半学習量の違いを検討する。
方 法
本稿では,紙面の都合上,特に実際の学習量を予測し得ると考えられる,以下の項目の回答結果を独立変数とした検討についてのみ報告を行う。
「今回提供されるeラーニングを使って,実際にどのくらい学習できそうですか。」
回答は,以下の3択で求めた。
・高頻度:「ヒマさえあれば,1日のうちに何度も」
・中頻度:「1日に1~数回」
・低頻度:「数日に1回以下」
以下,実験の概要を示す。
参加者 単独学習条件:41名,繋がり学習条件:42名。教員養成系大学で募集した。
学習期間
[前半]:2013年11月28日~12月11日
[後半]:2013年12月12日~12月25日
システム
[学習コンテンツ]:教員採用試験対策の問題
[学習方法]:学習画面において,問題文を読み,「答え表示」ボタンを押すことで,解答が表示された。その際,自己理解度の評定が要求された。
手続き できるだけ毎日ログインすることが要求され,学習量は参加者の自由とされた。
結果と考察
初週に1度もログインのない者は分析対象から除外した。Yamamura(1999)を参考に,学習量に対数変換を施した後,2水準の学習条件及び3水準の事前自己予想の学習頻度を独立変数とする分散分析を行った。その結果,交互作用が有意となった(F(2,61)=3.35, p<.05)。下位検定の結果,高頻度予想の学習者について,学習条件の単純効果が認められた(F(1,61)=9.96, p<.01)。すなわち,「ヒマさえあれば,1日のうちに何度も学習できそう」と予想した学習者は,単独学習条件では実際の学習量も予想通り多いが,繋がり学習条件では予想に反して少なくなってしまうことが明らかとなった(図1参照)。この結果から,事前の学習意欲が極端に高い学習者にとっては,本研究で検討された繋がる仕組みは,前半での学習量に対して妨害要因として働いている可能性等が示唆された。
引用文献
澤山郁夫・寺澤孝文(2014a).一問一答式eラーニングにおける学習者同士の繋がる仕組みが学習者の学習量推移に与える効果 日本教育工学会論文誌,38(1).
澤山郁夫・寺澤孝文(2014b).Web上での学習者間相互交流の仕組みがeラーニングに対する動機づけに与える効果(III) 日本社会心理学会第55回大会(発表予定).
Yamamura, K. (1999). Transformation using (x + 0.5) to stabilize the variance of populations. Researches on Population Ecology 41: 229-234.
付記
本研究は,科学研究費補助金による助成を受けた(基盤研究A,課題番号:22240079,研究代表者:寺澤孝文)。
継続の難しい一問一答式のeラーニングシステムに対し,オンライン人数表示機能などから構成される学習者同士の繋がる仕組みをとり入れることが,学習量の減少を抑制することが明らかになっている(澤山・寺澤,2014a)。一方,学習開始から1~2週間程度は,繋がる仕組みを稼働させる「繋がり学習条件」は,稼働させない「単独学習条件」よりも学習量が少ない傾向にあることも示唆され始めている(澤山・寺澤,2014b)。
本研究では,この実験データについて,特に繋がり学習条件の学習回避が目立った前半学習量を指標とした検討を探索的に行う。具体的には,実験開始前に予備調査で問うた,eラーニングに対する動機づけ等を測る項目への回答結果を独立変数とし,前半学習量の違いを検討する。
方 法
本稿では,紙面の都合上,特に実際の学習量を予測し得ると考えられる,以下の項目の回答結果を独立変数とした検討についてのみ報告を行う。
「今回提供されるeラーニングを使って,実際にどのくらい学習できそうですか。」
回答は,以下の3択で求めた。
・高頻度:「ヒマさえあれば,1日のうちに何度も」
・中頻度:「1日に1~数回」
・低頻度:「数日に1回以下」
以下,実験の概要を示す。
参加者 単独学習条件:41名,繋がり学習条件:42名。教員養成系大学で募集した。
学習期間
[前半]:2013年11月28日~12月11日
[後半]:2013年12月12日~12月25日
システム
[学習コンテンツ]:教員採用試験対策の問題
[学習方法]:学習画面において,問題文を読み,「答え表示」ボタンを押すことで,解答が表示された。その際,自己理解度の評定が要求された。
手続き できるだけ毎日ログインすることが要求され,学習量は参加者の自由とされた。
結果と考察
初週に1度もログインのない者は分析対象から除外した。Yamamura(1999)を参考に,学習量に対数変換を施した後,2水準の学習条件及び3水準の事前自己予想の学習頻度を独立変数とする分散分析を行った。その結果,交互作用が有意となった(F(2,61)=3.35, p<.05)。下位検定の結果,高頻度予想の学習者について,学習条件の単純効果が認められた(F(1,61)=9.96, p<.01)。すなわち,「ヒマさえあれば,1日のうちに何度も学習できそう」と予想した学習者は,単独学習条件では実際の学習量も予想通り多いが,繋がり学習条件では予想に反して少なくなってしまうことが明らかとなった(図1参照)。この結果から,事前の学習意欲が極端に高い学習者にとっては,本研究で検討された繋がる仕組みは,前半での学習量に対して妨害要因として働いている可能性等が示唆された。
引用文献
澤山郁夫・寺澤孝文(2014a).一問一答式eラーニングにおける学習者同士の繋がる仕組みが学習者の学習量推移に与える効果 日本教育工学会論文誌,38(1).
澤山郁夫・寺澤孝文(2014b).Web上での学習者間相互交流の仕組みがeラーニングに対する動機づけに与える効果(III) 日本社会心理学会第55回大会(発表予定).
Yamamura, K. (1999). Transformation using (x + 0.5) to stabilize the variance of populations. Researches on Population Ecology 41: 229-234.
付記
本研究は,科学研究費補助金による助成を受けた(基盤研究A,課題番号:22240079,研究代表者:寺澤孝文)。